11話 大きな闇
「帰ったぞ。」
「あ、レックス....おかえりなさって誰ですか!?その女の人!?も、もしかしてレックスの彼じょ──」
「違うよ!?そんなんじゃないからね!」
「じゃ、じゃあ一体誰ですか!?まさかレックスもう手を出して──」
「手も何も出してないから!」
帰ってきて早々メリッサとセイラが言い合ってるが興味はないので無視する。
「そいつはメリッサだ。帰る場所がないらしいから連れて帰ってきた。」
「そ、そうなんですか....よろしくお願いしますメリッサさん。私はセイラといいます。」
「よろしくね。セイラ」
「はい!そ、それであのレックスとはどういう関係で──」
女二人は出会ってすぐに仲が良くなったようだ。そして二人の女子トークも終わり、少し一息ついてメリッサが口を開いた。
「レックス。私実はシスターじゃないの。」
「そうか知ってた。」
「そうなんだって知ってた!?何分かったの!?」
「お前シスターっぽくないじゃん。」
「酷いよ!」
メリッサは涙目になって反論してる。こいつがシスターだったら世の中の大半はシスターになれるな。
「こほん、じ、実は私はね。──人工聖女なの。」
「人工聖女?そういえば聖女って確かセイラのクラスだったよな。」
「はい。確かに聖女です。」
その言葉を聞いてメリッサは驚いた顔をした。
「聖女!?あなた本当の聖女なの!?どうしてこんなところに!」
「聖女っていうクラスがどうにかしたのか?」
「レックスもしかして知らないの?そうか、だから私といても普通だったのか。」
「?、どういうことだ?」
「いい?聖女ってのはある特別なクラス。──世界を繋ぐ者の1つなの。」
「世界を繋ぐ者?」
「そう。まだすべては分かってないんだけど他にも勇者とか剣聖とか魔王とかがそれに値するクラスで、聖女はその中のクラスの1つ。」
「へーすごいんだなセイラ。」
「それほどでもありませんよ。」
「何言ってるの!純粋な聖女ってのはこの国を探してもいるかいないかぐらい稀少な存在なんだよ!」
純粋?そういえばメリッサは自分を人工聖女とかいってたな。
「なぁメリッサ、人工聖女ってのはなんだ?」
「.....人工聖女ってのはね、要は聖女のクラスじゃない人を無理矢理ある実験で聖女にした人の事をゆうの。」
「?、すまないがそれの意味がよくわからん。」
「簡単に説明するとね。ここじゃないもうひとつの世界を調べるために世界を繋ぐ者である聖女の紛い物を作るの。」
「それの何がいけないんだ?」
「本来聖女っていうか世界を繋ぐ者ってのはとても稀少なの。それを紛い物とはいえ無理やりクラスを変えるのは不可能に近い。だけど研究を重ねてある薬が生まれた。」
「ある薬?」
「そう。聖女になれる可能性があったものを聖女にする薬。だけどこれはとても危険なものでね。人の体はこの薬に耐えれなかった。薬を投与された途端に身体が粉々になって砕けてしまうの。」
「ひ、酷い....」
あまりの所業にセイラが口を開いて絶句した。
「でもメリッサは人工聖女になれたんだよな?」
「そう。私がこの薬を投与されて唯一耐えられたたった1人。」
「どうしてそこまでして聖女を作ろうとしたんだ?」
「この世界にはない可能性を探すためにだよ。その為には沢山の世界を繋ぐ者が必要になる。だけど、世界を繋ぐ者はとても稀少な存在。だからその代わりになるものを作ろうとした。」
「どうしてそこまでして、俺らの世界に何か特別なものでも.....」
「俺らの世界?それってどういう─」
メリッサが俺の言った言葉の意味を聞こうとしたその時、
ドン!
俺らの部屋の扉が壊された。
そこにいたのは、
「勝手に逃げるんじゃないNO.1。手間をかけさせるな。ん?あんたらは、」
「!?、どうしてお前がそこにいるんだ?」
「あの時のおばあさん.....」
俺らに情報を提供した老婆がそこにいた。
「これはとんだマグレだね。まさか君達がここにいるとは予想外だ。だけど好都合だな。探す手間が省けた。あ、もうこの姿でいる必要はないか。」
その途端、老婆の身体が変化し背の高い男に変わった。
「いやーあの姿は疲れるなぁ。」
「変化魔法!?いや、魔力の気配はなかったはずだ。今のは一体、」
「あーそういえば教え忘れていたなぁ。まぁどうせ死ぬんだしもういいか。」
「何言って──」
その瞬間眼の前にいた男は消えた。俺は殺気を感じ、すぐさま横に体をどかした。瞬間、俺がいた場所は消えていた。
「!?、一体なんだ!?」
「おー今のを避けるか。ま、どうせ死ぬ時間が短くなるだけだけどね。」
「てめぇ一体何者だ!」
その言葉を聞くと男はにやけてこう答えた。
「僕?僕はね。──世界の終焉のメンバー、その名もエイジだ。」
「世界の終焉?なんだそれは、」
「ふふふ。いいよ冥土土産に教えてあげる。僕達世界の終焉はね、君がもといた世界を壊す為に作られた組織さ。」
「世界を壊すだと?一体どういう意味だ?」
「要らないんだよ。2個も世界は、だから君達の世界を破壊する。そうすればこの世界は完全なものになる。そうしたらあとは僕達がこの世界を征服するだけさ。」
「ちっ!狂った集団が!」
「なんとでも言うがいいさ。すぐに君も理解し、僕達を崇める事になる。」
その瞬間エイジからとてつもない力を感じる。
「気をつけて!そいつは無属性魔法を使う!弱点を探して──」
「静かにしろNO.1」
「きゃ!」
メリッサがエイジによって気絶させられる。
「てめぇ!メリッサを離しやがれ!」
「なら僕を倒して見るといい。倒せるものならね。」
「今すぐてめぇをぶっ倒してやるよ!」
そういって俺は武器を取り出し、エイジに向かう。そしてエイジを斬るがいきなりエイジの体は煙の様に消える。
「どこを斬ってるんだい?僕はここだよ。」
「!?、お前どうやってそこに!」
「はは!実に愉快だ!僕の無属性魔法に勝てると思ってるのかい!」
「無属性魔法だと?なんだそれは?」
「そっかー。君はあっちの世界の人だから知らないのか。いいよ。教えてあげる。」
エイジは語り始める。
「僕達の世界にはね。君の世界にないものがある。君も見たでしょ?言葉も通じる。通貨も同じ。なのに見た事のない魔法だったり、道具がある。この世界はね、君の世界よりもずっと進んでいるんだよ。」
「なんだと.....」
「無属性魔法もそうさ!選ばれた者しか使えない特別な魔法。少しデメリットがあったりするけど、とてつもない力を持っている。それを使えて世界を繋ぐ者である僕は神に愛されているのさ!」
そういうとエイジは自分のステータスを見せつける。そこには魔将というクラスが書かれていた。
「お前も世界を繋ぐ者だと?」
「そうさ!神に選ばれし者なのさ僕は!」
エイジが笑っていると、エイジの胸ポケットにある機械がなり始めた。
「なんだもう時間か。まぁいいや。よかったね。君の寿命はもう少しのびるみたいだ。あ、そっちの聖女も貰っていくよ。」
「!?何をいってるてめぇ、!?、体が動かない。」
体がまるで縛られたみたいに動かない。
「僕の魔法がきいてるみたいだね。」
「魔法...だと?」
「そう。僕の無属性魔法は相手の認識を操るのさ。今、君の体は動けないと認識しているのさ」
「くそ!動け!セイラ!くそ!」
俺が体を動かそうとしてる間に気を失ってるセイラをエイジは持っていく。
「もしこの子を助けたいのならもっと力をつけることだね。」
「くそ、くそ!覚えとけ!必ずおれが、セイラもメリッサも奪い返してやる!」
「そうかい。楽しみに待ってるよ。じゃあね。レックス君?」
「くそぉぉぉ!!」
エイジは二人を連れて闇に消えた。
俺の体が動くようになる。
「覚えとけ、俺が、俺が必ず復讐してやる。」
俺の独り言が静かに響いた。