マーキング
前回のあらすじ
ビラ配りをしていると知らない人に声をかけられたリント。
「あ、貴方は・・・」
黒いローブに身を包み、長い黒髪に青い瞳。唇の右上にあるホクロが何とも妖艶な雰囲気な女性だ。
・・・誰だっけ?こんな綺麗な人だったら普通覚えてるんだけどな。
「・・・誰か分からない?」
「はい・・・すいません。どちら様でしたっけ?」
俺がそう言うとその女性は俺をじっと見つめた。
「・・・分からないならいいわ。また会いましょ」
チュ
「え?」
驚いた。彼女は急に俺の頬にキスをして去って行った。
俺が頬を触りながら茫然としていると
「リントさん~!なにナンパしてるんですか~!」
マリーが頬を膨らませこちらに向かってきた。
「え!?いやいやそんな事してない!なんか急にキスされたんだよ!」
「ほんとですか~?イケメンならまだしも急にリントさんにキスする女の子がいますかね~?」
・・・イケメンなら急にキスされる事あんのか?羨ましい。
てか何気にディスってない?
「そんな事言われてもね・・・本当なんだから」
「・・・まぁいいです~。リントさんはもういいので屋敷に帰って下さい~」
マリーに俺はいらない子に認定されてしまった・・・。
--その日の夜 リビング
塔ギルドから帰ってきたティルダが15階の異常なボスを報告しに言った時の事を話してくれた。
内容はこうだ。
塔ギルド側は最近他にもそのような報告を受けており、低階層に王国の調査隊が塔に派遣されるとの事でクランリーダーがBランク未満のクランはしばらく入場禁止になるようだ。
「マジか・・・せっかくサーシャさんがいるのに塔に行けないなんて」
「あら。リントはまだCランクなの?」
「はい。塔を登る事しか考えてなかったので」
「そう・・・虫になる覚悟が出来たのね」
げ!それすっかり忘れてた・・・。
「お兄ちゃん・・・虫になるの?」
「いや!断じてならん!明日からは俺のランク上げだ!アインも行くか?」
「リント君。明日は店がオープンするから女の子には手伝ってもらう予定なの」
「ルルねぇ!僕は男だよ?」
「フフ。そうね・・・でもお願い出来る?」
「分かったぁ!」
アインは女の子と言われた事は不服そうだったが手伝う事は嬉しいみたいだ。
「サーシャさんも手伝うんですか?」
「ええ。一応私の店という名目だからオープンの日ぐらいお店に出ようかと思ってるの」
って事はおっさんぐらいしか残ってないのか・・・。
「おっさん。明日は2人でクエスト行ってみるか?」
「そうじゃの。ワシももう少しで転職適正レベルじゃからついでにあげとくかのぅ」
まだレベル20にもなってなかったのか・・・。
--次の日
俺は朝早くにおっさんとギルドに行ってCランククエストを受けた。
この前のマーレ湖畔の少し奥にある森林地帯で牛の形をした魔物が出るらしい。
マーレ湖畔に着くと朝食を食べて奥の森林地帯に向かう。
「ふむ。ここら辺に出るようじゃな」
「みたいだな・・・あ!あれじゃないか?」
前方200mぐらい離れた所で茶色の4足歩行の魔物がいた。
大きさは牛と同じぐらいだが大きな角が1本ついている。
◎ケンタノス◎ レベル24
レベル24か・・・。おっさん1人じゃキツイかな。
「よし!俺が注意を引き付けるからおっさんはランスで攻撃ね」
「任せろ!」
ケンタノスの緑を確認すると闇弾を放った。
こちらに気づいてないケンタノスに直撃したが致命傷は与えていない。こちらに振り向くともの凄い速さで突進してきた。それを紙一重で躱す。ケンタノスはそのまま後ろの木にぶつかると木は倒れてしまう。
突進をモロに受けたらひとたまりもなさそうだ。ケンタノスは向きを変えてまた突進してきた。
「泥水」
久しぶりに使った泥水は魔力が増えた為か、今までより範囲が大きく足を滑らせるというか泥にはまるといった感じで強力になっていた。ケンタノスはたまらず足を取られて転倒する。
「おっさん!」
ヴァンガードは倒れたケンタノスに向かってランスを突き刺した。
ヴオォォ!
スキルで力を貯めていたヴァンガードの渾身の一撃でケンタノスは生命活動を停止した。
「どんなもんじゃい!」
ドヤ顔をしているが倒れた魔物を突き刺しただけのおっさん。これじゃあレベルが上がっても戦闘技能は上がらないな。
「おっさん。俺はこいつをアンデット化するからそいつと上手く連携を取って倒してみて」
「ふむ。分かったぞい」
おっさんは俺の意を察してくれたのか快諾してくれた。
おっさんは苦しみながらも俺が生成したアンデットケンタノスと連携して他のケンタノスを倒していた。
これなら大丈夫そうだなと、俺は店が気になったのでクピスとリンクして様子を見てみた。
・・・ん?おー繁盛してる。繫盛してる。店内は冒険者どころかキキが作ったインテリア雑貨等を求める一般客も含め溢れかえっていた。ロイゼの風景画を見ている客までいる。
サーシャさんが店を手伝うと言っていたのでこれでサーシャさんの顔は国に知れ渡る事になる。大丈夫なんだろうか・・・。
俺がそんな事を考えながら店の様子を見ていると、ふいに声をかけられた。
「フフ。まさかこんなに早く街の外に出るなんてね・・・」
その声の主は青い瞳の女性だった。
★アインとキキ★
(ア)店がオープンして忙しいのにお兄ちゃんはいらない子だからクエスト行ったの?
(キ)そ、そんな事はないぞ。たぶん・・・。




