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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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異変

前回のあらすじ

ティルダを襲っていたブラッドリィが突然吹き飛んだ。

俺は何が起こったのか分からなかった。

慌ててティルダに駆け寄る。


「ティルダ!大丈夫か?」

「う、うむ」


ティルダは少し安堵の表情を浮かべた。


「何があった?」

「妾にも分からん。突然目の前の魔物が吹き飛んだのじゃ」


ティルダが指をさした方を見ると木に張り付いているブラッドリィの姿があった。

近づいてよく見てみる。


「・・・凍ってる?」


ブラッドリィは薄っすらと白く変色していて微動だにしない。

まるで生きているかのように腕を振り上げたまま時が止まっている。

自分が凍った事にすら気づかない程に一瞬で凍ったのだろう。


俺がそれを見つめていると遠くにいたサーシャさんがこちらにやってきた。


「ティルダ。おしかったわね。でも貴方はセンスがあるわ」

「もったいなきお言葉です・・・この魔物はサーシャ様が?」

「ええ。本当はお腹を狙ったんだけど・・・まだ調整が必要ね」


サーシャさんは少なくとも俺より1km以上離れた所にいたはずだ。

あんな遠距離からの超高速精密攻撃・・・勇者と一緒に旅すると補正がかかるとか?

いや。そもそも人間なのか?あ。エルフか・・・。


リントはそんな事を考えながらレアブラッドリィ達をドロップ化する。


お!水の魔石!しかも2個!

まさかレアブラッドリィは水の魔石率高いのか?・・・これは検証の必要があるな。

俺はドロップを皆には明かさずギルド証をこっそりとポケットに入れた。



12階以降はクピスに探索をほとんどしてもらい、サーシャさんの手は借りずに3人で15階まで攻略出来た。ブラッドリィは共食いをさせなければなんて事はない。俺的にはレアブラッドリィに進化させて水の魔石が欲しかったけど・・・。




--強欲の塔15階 ボス部屋の広場


部屋の前の広場に着くと他のクランが1組順番待ちをしていた。

野郎だけのむさくるしいパーティーだ。


「レアブラッドリィから逃げた人達かしら?」

「俺もちょっとそう思いました」


遠目に見てるとこちらに気づいた人間の男が話しかけて来た。


「あんたらあの3匹を倒して来たのか?」

「ん?あぁ。はい」

「若いのにやるなぁ・・・俺達も急にあいつらが現れて急いで扉に逃げ込んだんだ。扉の前にかたまってたのは俺達の所為だ。悪かったな」


男はペコリと頭を下げると仲間の元へ帰って行った。


アレを進化させたのはこの人たちじゃなかったのか。

やはり誰かが故意に作ったと考えるのが自然か・・・。


「ふむ。実力はないが礼儀だけはあるようじゃの?」

「そうだな。俺もサーシャさんがいなかったら逃げてたかもしれないからね。お互い様だな」


そんな事を話していると赤かった扉が青くなった。ボス部屋に入れる合図だ。


「じゃあ先に入らせて貰うぜ」


男達は意気揚々とボス部屋に入っていった。

もし男達がボスを倒せばあと1時間はここで待たないといけない。

しかし負けた場合は戦闘が終了して5分ぐらいで扉が青くなる。


「大丈夫かな?」

「心配しても仕方ないわ。彼らは冒険者。死ぬのは覚悟の上よ。そんな事よりまだお昼食べてないからご飯にしましょ」

「わーい」


食いしん坊のクピスは喜んでご飯の準備を始めた。

サーシャさんは少し冷たいな。と思ったがクピスの笑顔を見ると確かにサーシャさんの言う通りだと感じた。他人の心配をしてる場合じゃない。クランの皆を守る事だけを考えれば良い。俺は勇者じゃない。他人を救おうなんて傲慢だ。


そんな事を考えながらご飯の準備をしていたその時だった。


「りんと。とびら」

「ん?・・・げっ!」


赤かった扉はものの数分で青くなっていた。


「うそん・・・」

「あら・・・じゃあご飯は帰ってからにしましょうか」


クピスが残念そうな顔をしたがここは仕方ない。

簡易なキャンプセットをしまって扉の中へ入った。


「行くわよ」


中に入るといつものボス部屋だったが様子がおかしい。

いつもなら光に包まれてボスが出て来るが初めからそれは存在していた。


◎エンペラーブラッドリィ◎

レベル??


通常ブラッドリィであれば1つ目しかないがこのブラッドリィは目が三つあり体が真っ赤だった。

大きさも通常のより3倍ぐらいはありそうでとても強そうだ。


「・・・マジかよ」

★ティルダのひとりごと★

魔物のクセに皇帝の名が付くとは不届き千万じゃ。

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