女心と秋の空
前回のあらすじ
サーシャがランルージ国王と謁見した。
サーシャさんと別れた後にクピスとアインを連れて俺は転移門を使ってルターニュに来ていた。
筋肉クネ男にバレないように、こっそりと馬車を借りてゴルタンに向かう。
ゴルタンへの道中は商隊や衛兵とすれ違う事はあったが、昨日のように山賊に出会う事はなかった。
衛兵が多かったのはルターニュ家が警備を強化したのだろう。
--ゴルタン 夜
陽が沈んだ頃、半日かけてやっと屋敷に着いた。ずっと馬車に揺られていたせいか我が家が懐かしく思える。みんなどうしてるかな?サーシャさんもう着いたかな?俺は気持ちを高ぶらせ玄関を開けた。
「たっだいまー!」
「おっかえりなさーい!リントキュンー!」
「・・・・・・・・・・・あ。すいません間違えました!」
玄関を閉める。
なんだ?なんだ今の?え?筋肉モリモリな民族衣装を着た男がいたぞ!
ここ俺の家だよな!?
「お兄ちゃん。なんで閉めてるの?間違えてないよ?」
「いやいやいや!変なのいたじゃん!」
「ろいぜ。いた」
え?なんで?なんであいついるの!?
俺が混乱していると玄関が自動的に開いた。
そして見てはならない顔が出て来た。
「んもぅ!リントキュンったらぁ。そんなに恥ずかしがらないでいいのよぉ」
「まてまて。なんでお前がいるんだよ!」
「そんなの決まってるじゃないー。お・よ・め。に来たのよぉ」
クネクネクネクネしやがって!
「決まってねーよ!てか他のみんなは?」
「うふっ!ロイちゃんの作ったご飯を食べてるわぁ」
「は?作った?」
「リントキュンもお腹空いてるでしょう?一緒に食べましょ」
ウィンクするな。気持ち悪いから。
「え!?ご飯!?やったー!」
「わーい」
アインとクピス喜びながらリビングに向かって行った。
いやいやいや。何で普通なの?君たちは・・・
リビングに着くとサーシャさんはまだ来ていないようだったが他の皆は食卓を囲んでいた。
テーブルの上には俺がルターニュ家で食べたような様々な種類の豪華な料理が並んでいる。
「あっ!おかふぇりなはい~リントふぁん~!」
と言いながら肉を食べているマリー。
「帰ったのか。ゲホッゲホッ」
と言いながらスープで咽るキキ。
「うむ。この味なら妾も満足じゃ」
と言いながら俺が帰った事はお構いなしで料理の感想を述べるティルダ。
「ういー。ヒック」
もはや出来上がってこちらに気づいていないおっさん。
なんだよ・・・俺はもっとみんなにおかえりー!って言って欲しかったのに・・・。
そりゃそんなに時間は経ってないけども・・・。
「お帰りさない。リント君。はい。これで手を拭いて」
「あ。ありがとう」
ルルの姿が見えないと思ってたら手ぬぐいを持ってきてくれていた。
マジ天使。ルルさんはマジ天使や。
「リント君。お腹空いてるでしょ?一緒に食べよ?」
「お、おうよ」
ルルに促されて席に着くとロイゼが料理を運んできた。
「これはロイちゃん特製リントキュンスペシャルよぅ!」
なんだその安易な名前は・・・でも美味そうだ。
何かのから揚げみたいに見えるが一口食べてみる。
「うまっ!なんだこれ!」
一口食べただけで虜になってしまった。
外はカリッっとして香ばしく、中はピリ辛で肉汁が溢れてくる。
悔しいがルターニュ家で食べたどの料理より美味い。
「でしょぉ?これでお嫁さん決定ねぇい!」
「・・・断る」
「んもぉ。照れ屋さんなんだからぁ」
「断じて違う!てか何でロイゼが普通にいるんだよ?みんな会った事ないだろ?」
今更だがここは聞いておかないとな。警戒心が無さすぎる。
「サラさんが連れてきたんです~」
「・・・あ。そぅ」
あのギルド職員め・・・そう言えばあいつにそそのかされてルターニュに行ったんだった。
ロイゼを綺麗で有名とか言ってたし・・・何処ら辺が綺麗なのか今度会ったら問い詰めてやる!
そんなこんなで食事をしていると
「と言う訳でリントキュン。今日からお世話になりますぅ」
「は?どう言う訳でそうなるんだよ?」
なに?ここに住む気なのかこいつは?
俺が困惑の顔をしているとキキが口を開いた。
「無償でメイドとして働いてくれるそうだぞ?」
「リントさん~こんな良い話ないですよ~?料理すっごい美味しいですし~」
マリーの話ではロイゼは家事全般をやってくれるそうだ。その上で暇な時に風景画や人物画を描いて店で売ってお金にもしてくれるらしい。確かに悪い話じゃないが・・・なんかやだ。
「ルルも賛成。店番とかしてくれると助かるし」
「ワシも賛成じゃ。こんな美味い肴は食べた事ないわい」
ルルに言われると弱いなぁ。でも画と酒とアイテムと武具が売ってる店って・・・もはや何屋か分からんな。どっちにしろロイゼは店番しない方が良いと思うけど・・・。
「まぁ、皆が良いなら良いけどさ。ちゃんとラクゼ卿には言ってるんだろうな?」
「もちろんよぉ!これでお嫁さん決定ねぇい!」
「決定してねぇよ!」
そんな訳でロイゼが住み込みでメイドをする事になった。
ティルダが王女って事は言わなければ分かるはずもないか。
それにしてもオカマがメイドって・・・俺の夢のハーレム生活がどんどん遠くなってる気がする・・・。
夕食を食べ終わると俺は1人屋敷の外でサーシャさんを待っていた。
「リント。少しよいか?」
後ろからティルダの声がする。
「お。ティルダ。どうした?」
振り向くとティルダは少し浮かない顔をしていた。
「さっきの話じゃ。英雄殿が父上に会いに行って妾を勇者に渡さない約束をしてくれたそうじゃな?」
リントは食事中にサーシャからメッセージが来ていたのでその事を皆に話していた。
もちろんティルダが王女だという余計な話はしてない。したとしても問題なさそうだけど。
「みたいだね。良かったな!」
俺はハーデとの約束があるのでどちらにしろ強欲の塔に神智の書を探しに行かないとならない。
しかしティルダは塔を登る理由もここにいる理由も無くなってしまった。
「・・・本当にそう思っておるのか?」
「ん?」
「本当に良かったと思っておるのかと聞いておるのじゃ」
「え?違うの?」
ティルダは悲しそうな顔をして問いかけてきた。
なんでだ?王都に帰れて嬉しいはずなのに。
「・・・もうよい!馬鹿者!」
怒ったティルダは屋敷に戻っていった。
「・・・何で怒ってるんだ?」
「今のが王女?」
ふいに耳元で聞き覚えのある声がした。
「うぉ!ビックリしたぁ!サーシャさんいつの間に!?」
「もうよい!馬鹿者!からよ。・・・貴方は本当に女心が分かってないのね」
サーシャさんがため息混じりにそう言った。
「と・・・言いますと?」
「今までずっと城に籠りっきりだった王女が冒険者として皆とここまでやってきたのよ?それが急に城に帰っても良いよって言われても寂しいに決まってるじゃない」
決まってるのか・・・てかそれって女心なのか?分からん・・・。
「・・・もう城には帰りたくないと?」
「そこまでは言ってないわ。でも、もう少し言い方ってものがあるでしょ?後で謝りに行きなさい」
「・・・はい」
確かにサーシャさんの言う通りちょっと素っ気なかったかな。
後で謝りに行こう。
「それにしても立派な屋敷ね」
「まぁ、もともと奴隷協会の建物になる予定でしたからね」
「皮肉なものね・・・」
「ですね・・・」
気を取り直してサーシャさんを連れて皆が寛いでいるリビングへと向かった。
サーシャさんを以前から知っている人がほとんどだけど、元勇者の仲間と言う事を説明すると皆驚いていた。皆はサーシャさんを只者じゃないとは思っていたけど、まさか英雄とは思っていなかっただろう。
積もる話が終わり皆が寝静まった頃、俺は1人ティルダの部屋の前にいた。
トントン。
「ティルダ。起きてるか?」
「・・・・・」
返事はない。先ほど皆と話している時はリビングにいなかった。
きっと俺に会いたくないから部屋に戻ってたんだろう。
「さっきはその・・・ごめん」
「・・・・・」
やっぱり返事はない。でも微かに部屋の中から音がした。
起きてるのは間違いない。
「ティルダは早く王都に帰りたいものだと思っててあんな事言ったけど、俺はティルダに仲間としてこらからも一緒にいてほしい」
「・・・・・」
返事はない。か・・・。
自分の部屋に戻ろうとすると扉が開く音がした。
「入れ・・・」
振り向くとティルダがいた。
黒いネグリジェを着ているので綺麗な白い肌が露出しており、女性らしいラインがくっきり見える。ベア美を抱いて悲しそうにしているその姿はなんかエロい。
・・・じゃなかった!いかんいかん!これじゃあ夜這いに来たみたいじゃないか。反省反省。
部屋に入るといつの間に買ったのか、家具やベッドが豪華な物に変わっていて何というか派手だった。
キャバ嬢の部屋みたいだな。行った事ないけども・・・。
「ティルダの気持ちも考えずに素っ気ない態度とってごめん!」
「・・・・・・」
両手を合わせて謝る。
「俺はティルダが良ければこのまま一緒にいて欲しいんだ」
「・・・・・・」
下を向いていて表情が見えない・・・気まずいな・・・。
こんな時どうすればいいんですか?世のイケメンさん。俺には分かりません・・・。
「・・・抱け」
「え?」
「妾を仲間と思っておるなら抱けと言っておるのじゃ」
ちょっ!えー!どんな展開!?
★ヴァンガードのひとりごと★
ロイゼ殿の肴は誠に美味じゃった。
ワシも負けとられんわい。早く酒造りせんとのぉ。




