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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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謁見

前回のあらすじ

激おこのサーシャさんがランルージ王国に乗り込みました。

サーシャは守衛長に案内され大きな門をくぐると王都の中に入った。

王都の人口は100万人とも言われる大都市。

人口もさながら建築技術も発展しており3階以下の建物は存在しない。どれを見ても立派な建物だった。


「・・・昔と雰囲気が変わったわね」

「サーシャ様がいらっしゃったのは50年ぐらい前ですか?」

「ええ。あの頃はこんな立派な建物はなかったし、人もこんなに賑わってなかったわ」

「そうですか。戦争の爪痕は凄まじい物だったと聞いております。サーシャ様がいらっしゃった頃はまだ傷が癒えてない時だったのでしょう。しかし先代の王に続き現王は立派に国を再興してくれました。国民は幸せ者です」

「・・・・・」


守衛長はまだ勇者ガイアスの件を知らないのかもしれない。

この事を知らない国民の王への支持率は高そうだ。

サーシャは何か物思いにふけながら城の客間に案内された。


「サーシャ様。こちらでお待ち下さい」

「分かったわ」


アポも取らずに急に訪ねて来たのだ。英雄とは言えいきなり王との謁見は難しいだろう。

その辺りはサーシャも弁えており、大人しく待つことにした。

守衛長はサーシャが王を訪ねて来たとランルージ王国の大臣ザンギに報告した。


「なんだと!?英雄サーシャが?本物なのか?」

「恐らく・・・私も実物を見た事はありせんが英雄の人物画と瓜二つなのです」

「何故このような時に・・・まさか勇者ガイアスの存在に気づいたのか・・・?」


ザンギは急いで王に報告した。


「なに?凍眼の女帝が?・・・・・通せ」

「良いのですか?」

「構わん。余も1度も会うてみたい」


大臣ザンギは王が会いたいと言うとは思わなかった。本当は居留守でも使って欲しかったのだが仕方ない。大臣ザンギは近衛兵を謁見の間に集合させ、従者にサーシャを連れて来るように命じた。


少しだけ待たされたサーシャは従者に案内され謁見の間に入る。

謁見の間はまるでサーシャを警戒しているかのように道の両脇に近衛兵がズラリと並んでいた。


「これはこれは英雄殿。ようこそいらっしゃいました。私、大臣を務めております。ザンギ・ローゼスと申します」

「これはご丁寧にご苦労様・・・・貴方が王様かしら?」


大臣には目もくれず、サーシャは王を見据える。


「お初目にかかります。英雄サーシャ様。キュクレイン・テイルと申します。以後お見知りおきを」


キュレインは席を立ち丁寧にお辞儀をした。


「して・・・どのような要件でいらっしゃったのですか?サーシャ様自ら訪ねてくるとはただ事ではありますまい?」

「ええ。ただ事じゃないわ。単刀直入に聞くけど人間の勇者の召喚に成功したらしいわね?」

「・・・さすがサーシャ様。もうその様な事を。如何にも・・・巫女様が召喚を成し遂げました」

「欠陥品をね」


サーシャが冷たい目線で王を睨むと大臣はハッとした表情を見せる。


「・・・と言いますと?」

「しらばっくれないで!魔王を倒す為なら勇者に奴隷を好きに使って良いと言ったそうじゃない!」

「・・・どこでそれを?」

「そんな事はどうでもいいわ。事実。ランルージ王国の奴隷が激減してるでしょ?全くヴェネに派遣されないもの」


王の顔色が変わる。その様子を見て大臣ザンギは王に耳打ちした。


「陛下。何処でこの情報を仕入れたかは分かりませんが、あの顔は知っているようですぞ」

「・・・・・」


王は黙って頷いた。


「如何にも・・・そう言いました」

「何故こんな事をするの?先代の王はこんな事しなかったわ」

「魔王を倒すのは我々女神の子の務め。しかしながら勇者に頼らねば魔王を倒すのは不可能に近い」

「だからって命を弄ぶ勇者に対して奴隷を好きに使って良い事になんてならないわ。それにこれは4ヶ国協定違反よ。志願奴隷の意志を完全に無視してるもの。私がこの事を他の王に言ったらどうなるかしらね?」


サーシャの発言が終わると同時に近衛兵達は臨戦態勢に入る。

しかし王が手をあげたのでそれをやめた。


「・・・苦渋の決断だったのです」


王の旗色が悪いと判断した大臣ザンギは助け船を出す。


「陛下は奴隷だけ犠牲にすると言った訳ではありません。魔王を倒す為なら王女様も差し出すと言ったのです。どうか陛下のお気持ちも察して下され」

「・・・私も戦争がしたいわけじゃないの。今ここで全ての約束を取り消すなら他言はしないわ」


サーシャの真剣な目つきを見た王が頷く。


「・・・分かりました。しかし魔王はどうするのです?60年前のように勇者が召喚されると魔族の動きが活発になるかもしれません。魔王を倒さぬ限り平和は訪れないのです」

「そうだとしてもこれ以上、奴隷を犠牲にするのは私が許さない。その代わり魔王が攻めてくるような事があれば何でも協力すると誓うわ」

「それは心強い。我々も協定違反を密告されると困ります。これからは勇者頼みではなく何か別の策を練る事にしましょう」

「ええ。そうしてくれると助かるわ」


サーシャは少し表情が和らぐ。


「・・・1度勇者に会ってみたいの。今はゴルタンにいるのね?」

「・・・恐らく」

「恐らく?」


王に変わって大臣ザンギが説明した。


「強欲の塔を勇者に攻略するように言ってるのはご存知ですな?しかし我々は勇者が何処に住んでいるかは把握しておりません。ですが定例報告はするように伝えております」

「次はいつなの?」

「つい先日来たばかりなので次は20日後になるかと。しかしながら今回も遅れて来たので正確には分からないのです」

「そう・・・私の方でも探してみるわ。何か分かったら教えて」

「分かりました。すぐに連絡が取れるようにさせて頂きます」


大臣から連絡用の魔導器を受け取ったサーシャは颯爽と城を出てゴルタンに向かうのだった。



「・・・陛下。あのような約束をしても良かったのですか?」

「仕方あるまい。英雄殿が言うように確かに4ヶ国協定違反だ。今は他の国を敵に回すのは下策としか思えん」

「しかしそれを聞いたら勇者ガイアスが暴れかねませんぞ?レベルが上がって以前とは比べ物になりません。聖騎士でも止められるかどうか・・・」

「心配するな。そもそも奴隷は勇者ガイアスが全て使い果たしたのだからもうおらん。新たに奴隷となった者は隠しておけばよい。それに王女ダフィーネもまだ見つかっておらんのだ。先日の定例報告の時は何とか誤魔化せたが、次は必ず姿を見せろと言ってきておる。そこでだ。その時は凍眼の女帝を利用させて貰おうではないか」

「・・・さすが陛下。そこまでお考えとは」

「勇者など召喚されなければ良かったのかもしれんな・・・」

「・・・心中お察しいたします」



一方その頃・・・


--強欲の塔36階 熱砂の砂漠地帯


「暑い・・・何でこんなに暑いんだ?ここは本当に塔の中なのか?」


言葉を発したのはクラン『クルセイダー』の団長。蛇剣使いのフラン。

彼の冒険者ランクはB。冒険者の中では中堅だが近い将来50階越えも噂されている有望株だ。


「今更何言ってるの?当り前じゃない。確かに暑いけど・・・」


言葉を発したのは副団長のカイア。クランのブレーン的存在だ。

そんな2人は他のクランメンバー4人を率いて36階に到達していた。


「団長!あそこに人が倒れています!」


突如、クランメンバーが叫びながら指差した方を見ると岩陰に白いローブを着た男が倒れていた。


「死んでるのか?」


フランが男に近寄ってみるとまだ息をしていた。


「おい!大丈夫か!?」


フランは男を揺さぶる。


「み、水を・・・」


男は意識を取り戻した。

しかし水を欲しがるなんて不思議な事だった。確かにここは暑い砂漠地帯なので喉はよく渇く。

だがこの世界にはアイテムを大量に収納出来るギルドカードがある。この階にいるなら水を大量に持ってきてないはずがない。水はギルドカードから出して飲めば良いのだから。


「ほれ!水だ!」


男は差し出された水筒を一気に飲み干した。


「ありがとう」

「いったいどうしたんだ?仲間は?ギルドカードは?」

「仲間は死んだよ・・・ギルドカードは無くしたみたいだ」

「・・・それは大変だったな」


ここでカイアはふと疑問を浮かべた。冒険者がギルドカード無くすなんて事はまずあり得ない。どんなに激しい戦闘をしてギルドカードを落としたとしても使用者はギルドカードを魔力で引き寄せる事が出来る。その距離は魔力に依存するが、苦戦を強いられ魔物から逃げたとも考えにくい。なぜなら36階に出て来る魔物は31階と比べて遜色ない。35階を突破したクランならこの階で苦戦を強いられ全滅するはずなんてないのだ。


「みんな!ここいらで休憩するか!」

「うーい」


カイアが考え込んでいるとフランがそう言ったので男を交えて休憩することになった。

皆で岩陰に座り、男を囲んだ。


「なにがあったんだ?」


座って少し落ち着くとフランが聞きにくそうに男に問いかけた。


「・・・仲間に裏切られてしまったんだ」

「え!?裏切られた?」

「そうなんだ。この階を捜索していると急に後ろからズブリとやられてね」


男の背中を見てみると確かにローブが破れていた。

しかし傷跡などはない。回復魔法でも使ったのかとカイアは思う。


「どうして急にそんな事になったの?」

「こっちが聞きたいくらいだよ。全員で僕を殺そうとするんだから」


淡々とそんな事を言う男にカイアは同情していた。

仲間を失って頭がおかしくなったのかもしれないと。


「そう・・・でもよく無事でいられたわね?」

「まぁね。僕は不死身だし。だから全員殺してやったよ」


男は悍ましい程の笑みを浮かべながらそう言った。

カイアはその表情をみて悪寒が走る。


「ハハハッ。不死身か。いいねそれ!」


カイアとは正反対に、まるで幼子みたいな発言をする男をフランは笑い飛ばす。


「ちょっと!フラン!この人は仲間を失って混乱してるのよ。笑うなんてひどいじゃない」

「ごめんごめん。だってさぁ・・・不死身って・・・ククッ」


フランはカイアに諫められたがまた少し笑ってしまう。


「・・・本当はね。水なんていらなかったんだ。死んだフリをして新しい玩具が来るのを待ってたんだ」

「おもちゃ?」

「そうだよ・・・僕の新しい玩具はね・・・・・・お前達。だぁ!」


狂気の男が微笑んだ・・・・・・

★アインとリント★

(ア)いいなぁ~。僕もカッコイイ二つ名が欲しいなぁ~。お兄ちゃん。僕にも何かつけてよ。

(リ)カイザークロス!・・・とか?

(ア)なにそれ?

(リ)なんでもない・・・

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