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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
63/75

共喰い

前回のあらすじ

部屋の鍵を掛ける事を硬く誓うリントだった。

--次の日


リントが目を覚まして辺りを見渡すと2人の美少女が椅子に腰かけていた。


「おはよう。リント君」

「おはようございます~。リントさん~」

「あぁ。おはよう」


昨夜は2人の美少女に挟まれながら何も出来なかったので、リントは悶々としてあまり眠れなかった。

しかし2人は昨夜何もなかったかのように仲良く紅茶を飲んでいる。

自分の所為で2人の仲が悪くなっていないか心配だったがそれは杞憂だったようだ。


「今日から11階攻略するんですよね~?」

「うん。そのつもり。11階からのルールを聞きに行かないとな」

「ルルはキキと店の準備しておくね」

「分かった。頑張ってね」



朝の食事を済ませ、クランメンバーを連れて強欲の塔ギルドへ向かった。

受付に行くと眼鏡をした人間の男が立っていた。


「いらっしゃいませ。ピースブリッジ様」

「おはようございます。今日から11階へ挑戦したいんですが、何か変わったルールありますか?」

「11階からは4人まで同時に入場出来ます。それとクールタイムですが、クランリーダーともう1人なら連続で入場しても構いません」

「おお!それは助かるな!」

「じゃあマリーが専属決定ですね~」

「あ!マリねぇずるい!」

「何を言っておる。妾に決まっておろう?」


(俺的にはクピスが良いんだけど。。。)


「リント殿。今日は誰と行くんじゃ?」

「そうだなぁ。。。初めての11階だから。。。。」


リントは鑑定が出来るマリーとヴァンガードとクピスを選んだ。


「え~?僕お留守番~?」

「ティルダとアインは前に一緒にボス倒しただろ?今日は留守番だ」

「む~~。じゃあティルねぇ僕たちは冒険者ギルドに行ってクエストでも受けよ?」

「ふむ。。。よかろう。今日はスキルの練習がてら小銭でも稼いでおくか」

「・・・2人なら大丈夫だと思うけど無理しないでね」


意外とあっさり引き下がったティルダとアインを置いて4人は11階へワープした。



--強欲の塔11階


「・・・ここは強欲の塔か?」


11階にワープするとそこは今までのTHE迷宮な感じではなく熱帯雨林のような場所だった。

大きな木が生い茂っていて空がある。塔の中なのに不自然過ぎる。

しかしマップを確認すると確かに11階と表示されている。


「不思議ですね~。塔の中なのに空が見えるなんて~」

「ふぉっふぉっふぉ。今さら不思議も何もあるまい。この塔自体が何故存在するのかも分からんのじゃからな」

「まぁ確かに。。。」


ヴァンガードの答えに妙に納得した一同は歩き始めた。

道という道はなく、あるのは木と草のみ。マップがないと間違いなく迷いそうだ。


「それにしてもここの階広いな。。」


歩き始めて1時間。出口を目指して歩いているが、余り距離が縮まったように見えなかった。

それに他の冒険者や魔物に遭遇することもなかった。


「リントさん~。そろそろ休憩しません~?」

「それもそうだな。。。」


塔の中なのに雨が降っているのか、地面は濡れていて歩きにくい。

14歳のマリーには負担が大きいのだろう。

何処か良い休憩場所がないか探していたら、マリーが何かに躓いた。


「いたっ」

「大丈夫か?マリー」

「はい~。少し擦りむいただけです~」


マリーは膝から少し出血していた。

リントは水治癒キュアを掛けようと近づこうとした。


「きゃあああああ~!」


突然マリーが叫んだ。


「どうした!マリー!」


リントは慌ててマリーに駆け寄る。


「が、骸骨。。。」


マリーの足元を見ると鎧を着た骸骨が倒れていた。

風化はしてない。骸骨になってそんなに時間が経っているようには見えなかった。


「ふむ。。。他の冒険者かの。。。」


よく見ると近くにもう3体骸骨があった。

ローブを着た者や軽鎧を着た骸骨もある。やはり風化はしていないようだ。


「まものきてる」

「え!?」


リントがそう言った瞬間、茂みの中から体長2mはある何かが飛び出してきた。

何かはヴァンガードを目掛けて飛びついた。


「キシャアア!」


ヴァンガードは盾を構える暇はなく、腕に噛みつかれる。

鎧を貫通してしまったので噛みつかれた腕から大量の血が溢れ出る。


「ぐっ!」

「おっさん!」


ヴァンガードはたまらずランスで振り払った。

振り払ったそれは、体長は約1.5m。大きな1つ目で大きな口。

手足はあるが首はなく、身体は灰色で顔と繋がっている何とも奇妙な生き物だった。

ヴァンガードは腕から血を流して座り込んでしまった。


「クソ!」


リントは抜刀して、それに斬りかかる。

一撃目は躱されたが、鞘で地面を突き刺すとその反動を利用して目玉を貫いた。


「ギギ。。ギィ。」


奇妙なそれは倒れた。


「ハァハァ。。なんだこいつ?・・・マリー。鑑定出来るか?」

「はい~」



◎ブラッドリィ◎

レベル 19

体長1~2mの魔物。

血の匂いに敏感でいつも腹を空かせている。

知性は低いが大きな口で噛みつかれると麻痺する場合がある。

弱点 目 氷属性



「麻痺持ちか。。。」

「厄介ですね~。」

「・・・またくる」


今度は3方向の茂みの中からブラッドリィが3匹現れた。


「クピス!おっさんを守ってくれ!マリーは俺の背中に!」


1匹はヴァンガード目掛けて飛びかかったが、これをクピスがフルートで受け止めて蹴り飛ばした。

ヴァンガードは痺れた体に鞭を打ってポーションを飲んで回復。血は止まったようだ。


もう1匹はリントに向かってくるでもなく、先程リントが倒したブラッドリィを捕食し始めた。

共食いだ。


それを好機と見たリントはもう1匹に闇弾ダークボールを放ったが躱される。

しかし躱したその着地地点にマリーがエレメンタルタクトで炎の矢を放っていた。

流石にいつもの詠唱をする余裕はなかったようだが上手くブラッドリィを貫いた。


「ギィィ!!」


金切り声のような叫び声を上げて燃えるブラッドリィがのたうち回り絶命した。


「気持ち悪いです~~」


クピスが蹴り飛ばしたブラッドリィは再びクピスに襲い掛かった。

しかし、先程の1戦で敵の動きを読んだのかクピスは冷静に目玉を突き刺してトドメを刺した。


「リ、リント殿。。。あれを。。」

「ん?」


ヴァンガードが指を差したのは共食いをしていたブラッドリィ。

よく見ると体が一回り大きくなっていて黒く変色している。


「なんだ?」

「ギシャアア!」


捕食を終えたブラッドリィは次にマリーの魔法で丸焼けになったブラッドリィに噛みついた。

また共食いを始めた。


「リントさん!食べさせたらダメです~!」

「え!?」


リントは訳が分からなかったが、マリーの言葉を信じてすぐさま水鞭ウィップでブラッドリィに接近し斬りつけた。

しかし浅かった。先程まで噛みついてくるしか能がなかったブラッドリィは鋭い爪でリントに反撃。


「クッ!」


爪は軽鎧の腰の部分に当たり鎧が欠けてしまった。

リントは転倒してブラッドリィの大きな口に襲われる。

しかし、リントが初撃を与えると同時に飛び出していたクピスがブラッドリィの後ろからフルートを突き刺した。


「ギギィ。。」


黒く変色したブラッドリィは倒れた。


「ハァハァ。。。ありがとう。クピス」

「あい!」

「・・・・それにしてもなんだったんだこいつ」


マリーが変色したブラッドリィの鑑定結果を教えてくれた。



◎ハイブラッドリィ◎

レベル 24

ブラッドリィが共食いを行う事によって進化した魔物。

仲間を襲って共食いをする事はないが仲間の死体を発見すると共食いする。

ブラッドリィに比べて爪が鋭くなっており知性が向上している。

更に共食いするとまた進化する。

弱点 目 氷属性



「マジかよ。。。更に共食いしたらまた強くなるのか」

「ごめんなさい~。私の鑑定レベルが高かったら初めに分かってたはずなんです~」

「いやいや。しょうがないよ。マリーが居なかったら更に共食いされてたかもしれないし」

「こやつらは血の匂いを察知してワシらを襲って来たんじゃな」

「ごめんなさい~。それも私が転んだから。。。」


マリーは今にも泣きだしそうだった。


「よしよし」


クピスがマリーを抱きしめて頭を撫でた。


「ごめんね。クピちゃん~」


その様子を見て、これ以上は探索は無理と判断したリントは帰還鍵エスケープキーを取り出した。


「え?リントさん。もう帰るんですか~?」

「うん。今日は帰ろう。マップを見る限り出口までかなりあるし、おっさんと俺の鎧も直さないと」

「ごめんなさい~。私の所為ですね~」

「いや、違うんだマリー。これは俺の所為だ。ロクに11階の情報も集めず、行き当たりばったりでここに皆を連れて来ている俺の慢心がいけなかったんだ。謝るのは俺の方なんだ」


リントはなるべく他のクランとの関わりは持たないつもりだった。

王女を匿っている事や、クランに魔族が居る事がバレる可能性があったからだ。

しかしそうも言っていられない。情報を集めないと仲間を危険な目に合わせる可能性もあるし、100階を目指しているのにこんな所で躓く訳にはいかないのだ。


「ふぉっふぉっふぉ。リント殿。リーダーらしくなってきたのぉ」

「そんな事ないよ。。。」


リントは帰還鍵エスケープキーに魔力を込め始めた。

その間、他の人は倒した魔物をドロップ化する。


「りんと。これ」

「これは?」


クピスがギルド証をリントに見せた。

先程、マリーが躓いた骸骨が持っていたらしい。


「他のクランの人の仲間かもしれないな。塔のギルドに持って行ってあげよう」


リント達は周りを警戒しながら帰還鍵エスケープキーで脱出した。

★サーシャ先生の補足授業★

進化したブラッドリィは1日経つと元に戻るけど、最高5段階まで進化出来るの。

タチの悪い冒険者は他の冒険者を阻害するためにワザと進化させて襲わせる者もいるわ。



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