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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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リント、家を買う。

前回のあらすじ

改築中の家が出来たようです。

--次の日


リント達は荷物をまとめると、マリーに連れられて早速新しい家へ向かった。

門の前に着くと恰幅のいい人間の男が立っていた。


「あ!ブルグさん~!おはようございます~!」

「これはこれはマリー様。お待ちしておりましたぞ」

「マリねぇ!すごい!様付けなんだ!」


アインのマリーへの尊敬っぷりはとどまるところを知らない。


「えっへん!」

「おやおや。これは可愛らしい女の子ですね?」

「僕は男だよ!」

「・・・これは失礼致しました。ささ。早速ご案内致しますので中へどうぞ」


ブルグはそう言うとリントの背丈の倍はある門を開けてくれた。

門の向こうには広大な庭が広がっており、リントが欲しがっていた噴水は見当たらないが綺麗な花が所々に植えられていた。空いているスペースが十分にあるのでヴァンガードの畑を作っても景観を失いそうにない。


「綺麗だね!リント君」

「あぁそうだな」

「英雄サーシャ様の家ですからこれぐらいはいるかと思ってサービスさせて頂きました」

「えいゆう?」


アインは首を傾げる。


「坊ちゃん。サーシャ様を知らないのですか?ここはサーシャ様の店を・・・」

「あ~!この子は知らないんです~。私がメイドとして雇ったので~」


ブルグの言葉を遮り、慌ててマリーが説明する。


「ふむ。。。このような小さい子をですか?しかも失礼ながら獣人に見えますが。。。」

「・・・ブルグさんもサーシャさんがヴェネで志願奴隷を雇って冒険者の宿を営んでいるの知っているでしょ~?それの延長なんですよ~。サーシャさんは種族差別しないですから~。この子は志願奴隷じゃないですけどね~」

「そうでしたか。。。これは失礼しました。では屋敷に向かいましょう」


ブルグに怪しまれないように何とか誤魔化しながら庭の奥に進み、階段を少し上ると白を基調としたレンガ作りの立派なお屋敷が聳え立っていた。


「近くで見るとまたデカいなー」

「キキ達だけじゃ大きすぎるな」


もともと奴隷協会の建物になる予定だったので貴族の屋敷ぐらいの大きさがある。

改築されて部屋はそれぞれ広くなっているとマリーは言っていたが、それでも20部屋ぐらいの個室がありそうだ。


「ささ。どうぞ中へ」


ブルグが玄関を開けると、エントランスの中央に大きな階段があった。

階段の右側は廊下になっており、各扉の中は食料庫。シャワー室。衣装部屋等があり、何もない部屋も数か所あった。


「リント殿。ワシはここの部屋にしたいのぉ。ここならシャワー室も近いし、何も無い部屋は酒蔵と農具を置く倉庫に出来る」

「どうぞ!美味い酒造ってくれよ!」


リントの思惑通り、ヴァンガードの部屋が決まった。


「ここが皆さまの憩いの場所です」


ブルグが一番奥の部屋の扉を開けるとリビングがあった。家具等の細かい物はマリーの交渉で基本的な物は揃っており、大きなソファーや10人掛けのテーブルがあった。


「まぁまぁの広さじゃの。妾の部屋よりは狭いが」

「ちょ!ティルダ!」


王女様はつい自分の部屋と比べてしまったらしい。城とこの屋敷を比べるのはどうかと思うが、ブルグが居るのでそういう発言は控えて欲しいものだ。

幸いにもブルグには聞こえてなかったようだが。


「この奥がキッチンになります」

「おお!」


キッチンはサーシャの船と同じぐらいの大きさで、一流シェフが扱うような包丁や鍋が並べてあった。


「誰か料理出来たっけ?」

「・・・・・・・・・」


シーン。


誰も料理出来ないらしい。


「ルルとか得意そうなんだけどな」

「ごめんなさい。リント君。簡単な料理なら出来ると思うけど、このキッチンを使いこなす自信はないかな。。。」

「まぁ、このキッチン見たらプレッシャーだよなぁ」


新築のキッチンはピカピカで塵1つ落ちてない。これを初めて使うには勇気がいるかもしれない。


「1階の右側が以上となります。では左側に参りましょう」


屋敷の左側は大きな客間、個室が数か所、店用の大きな倉庫があり、奥の部屋はルルとキキのアイテム制作室があった。


「これはすごいな!」


キキが制作室を一目見て言った感想がそれだった。


「ここなら良い武具が作れそうね!」


リントには凄さが良く分からなかったが最新の設備が揃っているらしい。


「そうでしょう!サーシャ様のお店の資本となる部屋です。マシーナリー王国程までとは言いませんが、ランルージ王国の最新鋭の設備を揃えさせて頂きました」

「ありがとうございます!ブルグさん」

「いえいえ。後はお2人の腕次第ですな」

「いずれはルルと魔導器の制作もするつもりだ」

「ほぅ!魔導精製士を目指しておられましたか!」

「そうなんです!このゴルタン。いいえ。いずれは2人で世界一の職人になるつもりです」

「なんと!これは大きくでましたな!我がヨハネ商会もうかうかしてられませんな。ハッハッハ!」


ブルグはそう言っているが随分余裕のある笑いだった。

さすがゴルタン随一の商会の主。いくら英雄の店とは言えそう簡単にはゴルタン市場を譲る気はないらしい。


「では店舗の方に参りましょう」


そう言うとエントランスの階段へ案内された。

階段の両面に下り階段が出来ており、扉を開けると店舗のバックヤードに出るようになっていた。


「なるほど。だから屋敷が中二階みたいになってたのか」

「ええ。そうです」


バックヤードの扉を抜けるとカウンターになっており、店舗の入り口が見えた。


「すごい!僕がマリねぇに連れて行ってもらった店よりずっと大きい!」


店内はルル&キキ店の3倍はあった。


「ほぉ。ここまで大きい店はランルージ王国にもないやもしれんの」


ティルダの率直な意見。

さすがに屋敷の裏を店舗にしている店は他にないらしい。


「ここまで大きかったら品を揃えるのが大変そうじゃ。ワシも酒を造ったら販売してみようかの」

「それ良いかもな。期待しているぜ大吟醸」

「任せておけ」


ここにルル達の商品が並ぶのを想像するとリントは何だか感慨深いものがあった。


「では2階に参りましょう」

「待ってました!」


(キターーー!!!露天風呂!)


リントは心の中でガッツポーズ。

ブルグに連れられてエントランスの階段を登ると中央に大きな扉があった。


「おー!ここが露天風呂ですか?」

「いえ。ここはサーシャ様の部屋です」

「あぁ。。そぅ。。」


ブルグはサーシャが視察に来た時の為にサーシャの部屋を作っていたみたいだ。

部屋は20畳ぐらいで黒を基調とした高級感溢れる家具が置いてあり、ベッドは大人が3人寝ても寝れるぐらいの大きさだった。


「どうです?英雄ともなればこのぐらいの部屋は用意しておかないといけないと思いまして」

「ありがとうございます~。ブルグさん~。サーシャさんも喜ぶと思います~」

「そう言って頂いて何よりです。サーシャ様によろしくお伝え下さい」

「分かりました~!」

「では続いて使用人の部屋ですが、ここはどこも遜色がないため案内は1部屋だけとさせて頂きます」


隣の部屋に行ってみると10畳ぐらいの少し広い部屋があった。

ベッドと棚が置いてある普通の部屋だ。宿屋と比べると段違いに良い部屋だが。


「英雄の使用人なのでこれぐらいは必要かと思いまして」

「ありがとうございます~!」

「ではお待ちかねの露天風呂に参りましょう」

「お願いします!」


(やっと来たか。。。)


露天風呂は2階の左側にあるらしい。

露天風呂に行く途中に個室が10部屋もあった。


「ここです」


ブルグが開いた扉の向こうに更に2枚の扉があった。

その扉をよく見ると 【男湯】 【女湯】 と書いてある。


「なんでやねん!!!」


リントは思わず関西弁で叫んでしまった。

★サーシャ先生の補足授業★

屋敷の食物庫には氷の魔石が埋め込んであって、中はひんやりしているの。

魔石の効果が切れる前に取り換えないと食料が腐ってしまうわ。

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