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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
59/75

強欲の塔10階

前回のあらすじ

王女様はクマの抱き枕にベア美という名前を付けていた。

--次の日


「お兄ちゃん。お兄ちゃん。起きてよー!」


体が揺さぶられる。


「ん?・・・・・」


リントが目を開けるとそこには獣耳をピンと立てた可愛らしい女の子がいた。


「あ。。。え?俺に妹は。。いなかったような。。。」

「なに寝ぼけてるの?僕はアインだよ」

「・・・・あぁ。おはよ」


リントは寝ぼけまなこをこすりながら生返事をする。


「・・・頭痛い」


リントは昨日ヴァンガードにクエスト達成会という名の飲み会に付き合わされたので完全に2日酔いだった。隣を見るとヴァンガードは気持ち良さそうに眠っている。


「もぉ。。。あ。そうだ!キキねぇからこれを貰ってたんだ」


アインが取り出したのは緑色をした毒々しい小瓶だった。


「・・・なにこれ?」

「頭痛いって言ってたら渡せって言われたんだ」


(スゲーまずそう。。。)


「・・・・おやすみなさい」


リントはそう言うとまたベッドに横になる。


「・・・・気円陣」


大きなため息をついたアインは気円陣を発動させて気を練り始める。


「ハッ!」

「ぐぉ!?」


掛け声と共にアインが気を放出するとリントはベッドごと壁に吹っ飛んだ。


「起・き・た?」


悪気はないのか、アインは獣耳をピョコピョコさせて笑顔だった。


「は、はぃ。。。もう使いこなしてるんですね。。。」



リントは顔を洗いお世辞にもおいしいとは言えない緑の液体を飲んで宿の広間に向かった。


「リント。早うせぬか。妾を待たせるとは良い度胸じゃ」

「あ。おはようティルダ。何処か行くの?」

「何を寝ぼけておるのじゃ。強欲の塔10階に決まっておろう?」

「え?ティルダと?」

「当り前じゃ。お主のスキルが効いとるウチに行かんと損じゃろう?」

「まぁ確かに。。。そのスキルで何か良い事あった?」


リントにそう言われるとティルダは一瞬瞳孔が開いた。


「な、何も無い!ふん!お主のスキルも大したことないの」

「・・・・・じゃあティルダにはもう掛けない方向で」

「そ、それをどうするか検証しに今から行くのであろう?」

「・・・・・・・まぁいいや」

「ねぇねぇ。早く行こうよ~」

「え?アインも行くの?」

「もちろん!」


アインは目をキラキラさせて楽しみでしょうがないと言った感じだ。


「・・・そう言えば他の皆は?」

「双子とクピスは採集じゃ」

「マリねぇはヨハネ商会に行くって言ってたよ」

「そっか。。。。」



メンバー的には少し不安だったが、攻略を悠長にする訳にも行かなかったので強欲の塔へ向かった。

塔に行くことをギルド証のメッセージで皆に伝えた後、リント達はアインのピースブリッジへの加入を済ませて6階にワープした。



--強欲の塔6F


「すごい!ワープなんて初めてしたよ!」


アインはピクニックに来たようにはしゃいでいる。


「アイン。遊びじゃないんだぞ。。。ここはデカい蟻が酸を吐いて来るから気を付けて」

「分かった!足止めなら任せて」


塔の9階まではマッピングが終わっている為、最短距離で階段へと向かった。

しかし魔物はやはり出て来る。リント達の前に3匹のタワーアントが現れた。


「俺が引き付ける!2人は援護頼む」


リントは指示を出すとタワーアントに向かって行く。

一匹の頭を貫いて一撃で仕留めるともう一匹がリントに体当たり。

しかしリントは体を捻らせてこれを回避。

もう一匹は気を溜めているアインに向かって行った。


「ハァッ!」


アインの掛け声と共に気が放出される。

タワーアントは僅かながら体が後方に下がり宙に浮いた。

ティルダはその隙を逃がさず矢を放つ。

矢は足に命中してタワーアントは態勢を崩した。

そこにアインが光る右手を地面振り下ろして追撃。


地龍の棘アースニードル!」


アインの詠唱が終わると共に地面から大きな棘が突出してタワーアントを串刺し。絶命した。

リントは2人の安全を確認するともう一匹の胴体を真っ二つにして倒した。


「ふぅ~。さすが龍の子。どうなるか心配だったけど全然余裕だな」

「うん!気を溜める時間はお兄ちゃんが稼いでくれるしまだまだいけるよ」



こんな感じで、余力を残しながら早々に塔の10階に辿り着いた。

10階の広間に着くと他のパーティーが1組順番待ちしているようだった。

リント達は休憩がてらにキャンプセットを取り出し食事を取る事にした。

その間クピスの様子を見てみるとリントの知らない何処かの森の中にいるようだった。


(ルルとキキが見える。。。大丈夫そうだな)


3人だけで採集に行っているので少し心配だったが危険な所ではないみたいだ。


「いよいよだね。お兄ちゃん」

「あぁそうだな。ここなら大丈夫だと思うけど油断しないようしないとな」

「ドロップはリントのスキルに期待じゃな」


ここに来るまで魔石はLVが低い物しか出なかったが、運命天秤デスケルがまだ効いているティルダがいるのでボスドロップは期待出来るかもしれない。

そんな事を話しているとリント達の順番がやってきた。


「行きますか!」


意を決して赤い扉の中に入る。

中は5階の時と同じような空間でいかにもって感じの広間だった。

広間の中央が光出すとタワーアントより1周り大きい蟻が5匹出現。近衛蟻と命名。

その奥に更に大きい蟻が1匹出現した。女王蟻と命名。

鑑定してみるがやはり出来なかった。


「思ったより数が多い!囲まれるな!」


リントは闇弾ダークボールを入れた言霊ことだまをティルダの後方に設置すると、無詠唱で暗闇付与ダークエンチャントを発動。向かって来る近衛蟻に突撃した。

やはり通常のタワーアントより硬く俊敏だった。さすがに一撃で仕留めるのは難しい。

リントは3匹に囲まれながら応戦した。


残った近衛蟻2匹がアインに襲いかかる。

アインは冷静に1匹を気で吹き飛ばすと、すかさず地龍の棘アースニードルを唱え串刺しにした。

もう1匹がその隙を突いてアインに噛みつこうとしてきたが、アインは軽い身のこなしでそれを躱す。

気円陣から外に出てしまったアインは近衛蟻と対峙して隙を伺う。


「ティルねぇ!」


アインが何かに気づき真上を見て叫ぶ。

叫んだ時には既に後ろに居た筈の女王蟻が羽を広げティルダに接近していた。

遠目だったので気づかなかったが女王蟻は羽が生えていたのだ。しかも女王蟻は音も立てずに飛んでいた。


リントは応戦中だったが、アインの声に気づくとティルダの後方の言霊ことだまを弾けさせた。

女王蟻の羽に闇弾ダークボールが着弾。女王蟻は羽の片翼を失い落下した。

しかし羽を失った事もおかなまいなしに、そのままティルダに突撃した。


「クッ!」


パチン!


ティルダが指を鳴らすと前方2mに予め設置してあった小さな光が大きな落とし穴に変化。

女王蟻は落とし穴に飲み込まれてしまう。狩人の初級トラップだ。


「闘気覚醒!」


ティルダはスキルの発動5秒の間に3本の矢を女王蟻に射る。

しかし致命傷は与えておらず、女王蟻は落とし穴から抜け出しそうともがいていいる。

リントは近衛蟻の2匹目を仕留めると水鞭ウィップで素早く女王蟻の落とし穴の前に移動。

鞘を地面に叩きつけて鳴らすと、超振動している剣を女王蟻の頭目掛けて突き刺した。


「ギィーーーー!」


さすがの女王蟻も頭を貫かれては生きてはいられない。不気味な悲鳴を上げ絶命した。

しかし、悲鳴が響き渡ると今度は近衛蟻の死骸と生き残っている2匹の体が赤く点滅し始めた。

リントはそれを見ると嫌な予感がして叫んだ。


「アイン!離れろ!」

「え?」


残った2匹と対峙していたアインはリントの声に気づき後方に下がった。

その刹那、点滅していた近衛蟻が激しい光と共に爆発した。


「アイン!!」


黒い煙が充満しているので、近くに居たアインの姿が見えない。


「クソ!」


リントは無我夢中で煙の中のアインを探した。


「ゴホッゴホ!」


煙が消えかけるとアインの姿が見えた。真っ黒になっていたが無事のようだ。


「アイン!無事か!?」

「ゴホッ!う、うん。お兄ちゃんが叫んでくれたからなんとか。。。」

「まさか爆発するとはの」

「うん。。。ビックリしたよ」


女王蟻の死骸が光に包まれて消えると、広間の奥の方に宝箱が出現した。


「お。木箱発見!」


木箱を開けると中には赤い魔石とローブが入っていた。


「なんだろこれ?」


赤い魔石は初めてだった。何か属性が付いているのかもしれない。

ローブを広げてみると半透明で薄い水色を帯びた物だった。


「何とも不思議なローブじゃの」

「僕にはちょっと大きいかな」

「何となく魔力を感じるね」


3人では鑑定も出来ないので、ゴルタンに帰る事にした。



--ゴルタン宿屋


「あ!お帰りなさい~」


時刻は夕刻。

宿に着くとマリーが広間で読書中だった。


「マリねぇ!ただいま!10階のボス倒してきたよ!」

「ちょっとアイン君!真っ黒じゃないですか~!どうしたんですか~!?」

「うん。ちょっと蟻が爆発したんだ。。。それよりこれ鑑定して!」


アインは半透明のローブと赤い魔石をマリーに渡した。


「ちょっと蟻が爆発~?」


マリーはその内容が聞きたいようだったが、アインにせがまれるので鑑定を始めた。


「この魔石は火の魔石LV3ですね~。それとこのローブは。。。」


マリーは少し間を空けた。


「幻視の法衣です~!」

「なにそれ?おいしいの?」


リントのボケはスルーしてマリーが説明に入る。


「これを着ると、周囲から視認されにくくなるようですよ~」

「簡素に言うとそれを着ると、影が薄くなると言う事じゃな」

「はい~。ティルダさんにピッタリですね~」

「リント。妾が貰っても良いのか?」

「もちろん。さすがは俺のスキル!ピッタリな物出したな」

「ふむ。。。今回は認めてやろう」


何故か上から目線の王女様に少し青筋を立てたリントはボソっと呟いた。


「ベア美。。。」


ティルダはハッとして顔が青くなる。


「え?べあみ?なにそれお兄ちゃん」

「クマの抱き・・・」

「リント!!妾が悪かった!!」


リントの声を遮るようにティルダが叫ぶ。

見られていた事を察したようだ。


「ねーねー。なにそれー?僕にも教えてー」


アインがリントの腕を掴んで揺さぶった。


「・・・ティルねぇに聞いてみ」

「・・・子供は知らんでよい!」


ティルダは物凄い剣幕で話を終わらせた。

子供相手に大人げない。


そんな事を話しているとクピス達が帰ってきた。


「ただいま!リント君」

「あ~お帰り。採集どうだった?」

「良い素材が採れた。後は作るだけだな」

「じゃあ、家が出来るのを待つだけだね」

「あ!そうそう~!言うの忘れてました~。今日ヨハネ商会に行って来たんですけど明日には家が完成するから来て下さいってブルグさんに言われました~!」

「お!マジで!?」

★サーシャ先生の補足授業★

火の魔石は魔力を込めると、焼き石のように熱くなるわ。

LVはその熱くなる継続時間に比例するの。お風呂に使うにはピッタリね。

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