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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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ベア美

前回のあらすじ

キキが作った翼でリント達はガルジ山脈から滑空した。

リント達はティルダの叫び声と共にゴルタン近くの丘に着陸した。


「ふぃ~。クピス大丈夫だったか?」

「あい!」

「アインの魔術は計算に入れてなかったが、何とか大丈夫だったな」

「キキが作ったんだもん。大丈夫よ!」

「楽しかった~~!もう1回やりたいです~」

「わ、妾はもう2度と飛ばん。。。」

「ねぇねぇ。ヴァン爺が寝てるよ?起こした方が良いかな?」

「あ。それ気絶してるだけだから」


リント達は気絶しているヴァンガードを背負ったままゴルタンに帰った。

ゴルタンに着くとタイミング良くヴァンガードが目覚めた。


「お。もう着いたのか」

「着いたのか。。。じゃねぇよ!全く。。。」

「リントさん~。思ったより早く着いたからアイン君の冒険者登録しに行きましょ~」

「それもそうだな」

「さっき話してたやつだね!やったぁ!」

「わ、妾は先に帰らせて貰うぞ」

「ハハ。じゃあマリーと3人で行ってくるね」


リントは皆と別れアインとマリーを連れて冒険者ギルドに向かった。



ギルドの中は相変わらず人で賑わっていたが、サラがこちらに気づくと駆け寄ってきた。


「マリーちゃん!いらっしゃい!無事で良かったわ。亜種クエストはどうだった?」

「サラさん!これ見て下さい!」


マリーはそう言うと赤龍から貰った万能薬エリクサーを取り出した。


「こ、これは!?まさか万能薬エリクサー?こんな物どうしたの!?」

「貰ったんです~」

「え?こんな高価な物を?」

「はい~」


サラは不思議そうにしていたが、大好きなマリーが貰ったと言ってるので深くは聞いてこなかった。


「うふ。まぁいいわ。マリーちゃんが持ってきたんだもの。何でもいいわ。これを代替え品として受け取っていいのよね?」

「はい~!よろしくです~!サラさん大好き~!」


そう言うとマリーはサラに抱き着いた。


「んふ。私もよ。依頼人にこの品で良いか聞いとくわね」

「ありがとうございます~!・・・サラさん。今日はもう1つお願いがあるんです~」

「もしかしてそこの可愛い女の子の事かしら?」

「・・・お姉さん。僕は男だよ?」

「あらあら。ごめんなさい。男の子だったのね。。。良かった。またマリーちゃんのろくでなし主人が女の子を囲ったのかと思ってたわ」


(この職員スゲー失礼なんですけど。。。上司を出せ!上司を!!)


と思ったがサラが怖いのでそんな事は言えない。


「じゃあ坊や。このギルド証を持って自分の名前を思い浮かべてね」


サラはそう言うとアインにギルド証を渡した。


「これがお兄ちゃんが言ってたギルド証なんだね」


アインはギルド証を受け取り、自分の名前を思い浮かべた。

するとギルド証が輝き出し【アイン】と記載された。


「すごい!光った!」

「ハハ。俺も初めて見た時はそんな反応だったな。。。アインはなんの職業に就くか決まったのか?」

「さっきマリねぇに一覧見せて貰ってたんだけどまだ決まってなくて。。。」

「そっか。。。やっぱり魔法系か?」

「・・・それが父上が龍魔術ドラゴニックマジック以外の魔法は覚えるなって言ってたんだ」

「そうなの?」

「うん。何か龍の波長が合わなくなるんだって。僕も良く分からないけど」

「なるほど。。。じゃあ戦士とか?」

「う~ん。龍魔術ドラゴニックマジックを使うから手には何も持ちたくないかな」

「そりゃそうか。。。じゃあ拳闘士とかは?」

「・・・手を怪我したくないしなぁ」

「・・・ですよね~」


リントとアインの話し合いでは決まりそうになかった。


「アイン君~。聞く人を間違ってますよ〜。この人は水僧侶アクアプリーストとか言う変な職業に就いてずっとソロしてた人ですよ~。マリねぇは元ギルド職員だから私に任せなさい~!」


(クッ!否定出来ない!)


「さっすがマリねぇ!何か良いのあるの?」

「もっちろん~!アイン君にピッタリなのはこれかな~」


マリーが指差したのは気功士だった。


「おー。何かカッコイイ」

「どんな職業なんだ?」

「ふっふふ~」


マリーによると気功士とは魔法ではなく体内の”気”を使用する職業。

例えば集めた気を放出して攻撃したり、結界を作ったり、敵を吹き飛ばしたり出来る。

しかし気を集めるには魔法より集中しないといけない上に時間がかなり掛かる為、扱うのが難しいらしい。

リントやクピスが覚えた闘気覚醒も気功士の初級スキル。攻撃力が倍になると言うかなり便利なスキルだが気功士じゃない職業が使うとHPが減る仕様になっている。


「おー!それにする!」

「なんか難しそうだけど良いのか?」

「大丈夫だよ!マリねぇのお勧めなんだから!」


(なにその絶対的な信頼感。。。)


「決まりだね~!じゃあ、アイン君。ギルド証を持って気功士と思い浮かべるんですよ~」

「うん!」


アインがギルド証を手に持った瞬間マリーはすかさず詠唱する。


「汝。己の気を信ずるか?・・・ならば応えよう!わが師の名のもとに此処に生誕せよ!」


(か~め~は~。やめとこ)


マリーの詠唱が終わると何故かタイミング良くギルド証が光出す。

アインのギルド証に気功士と刻まれた。


「マリねぇ!なにいまの!?すごいカッコイイ!」


クピスの時と同じくアインはマリーを尊敬の眼差しで見ている。


「えっへへ~」


(俺。完全にいらん子やん。。。)




--ギルドを出た後、マリーがアインの装備を買いに行くと言い出したので拗ねたリントは1人で宿に帰る事にした。


(クピスに癒して貰おう。。。)


クピスにお土産でも買って帰ろうかとゴルタンを散策していると、途中で見覚えのあるフードを見かけた。


(ん?あれはティルダか?)


そこには、宿に帰っているはずのティルダが店の前に立っていた。


(1人で出歩くなとあれだけ言ったのに。。。)


リントの心配を知ってか知らずか、ティルダは店の中に入っていった。


(なんだ?なんの店だ?)


リントはこっそり店に近づくと看板に【ベアーズ 2号店】と書いてあった。



(は?ベアーズ??なんじゃそりゃ???)


ティルダに気づかれないように店に入ると、店の中は様々な大きさのクマのぬいぐるみで溢れかえっていた。

生前の記憶のぬいぐるみほど、精巧な物ではなかったがこの世界の文化レベルにしてはよく出来ていた。


(まさか・・・・これ買うの?)


リントが思考を巡らせていると店の奥の方からティルダの声が聞こえて来た。


「店主!この抱き枕はいくらじゃ?」

「お嬢さん。お目が高いですな。この抱き枕は限定品の・・・」

「御託は良い!いくらじゃと聞いておる!」


ティルダは焦った様子で店主の言葉を遮った。


「せっかちなお嬢さんですな。こちらはオープン限定モデルになりますので100000リェンになります」


(10万!?高っけぇーーーー!)


「買った!」


(買うんかい!!)


ティルダはそう言うと城からくすねた金貨を取り出した。


「毎度あり!」


(節約するんじゃなかったのかよ。。。)


そんな事を思っているとティルダがこちらに向かって来たのでリントは慌てて店を飛び出した。

ティルダは店を出た後、クマの抱き枕を持ったまま路地裏の方に向かったのでリントはこっそりその後をつけた。


「ベア美~!ゴルタンまで来ていたんじゃな!早う言わぬか!この馬鹿者~」


(べ、ベア美。。。)


ティルダはそう言いながら、リントが見た事のない満面の笑みでぬいぐるみを抱きしめている。


「お主がおらんと妾は寝れんのじゃ。恋しかったぞー!」


(見てはいけないものを見てしまった。。。。)


恐らく城で愛用していた抱き枕(ベア美)があったが、城を抜け出す時はさすがに持ってこれなかった。

運命天秤デスケルで運が上がったティルダは今日の帰り道にたまたま店を見つけ、1人でこっそりとベア美を買いに来たといったところだろう。


「もう!もぅ離さぬー!べア美ーー!」


ティルダが力いっぱい抱きしめているのでベア美はクシャクシャになって今にも破けそうになる。


(ベア美。。。。死ぬなよ。。。。)


リントはベア美の無事を祈りながら子供の様に喜ぶティルダを温かく見守るのであった。

★サーシャ先生の補足授業★

気功士は基本的に”気円陣”を地面に発動してその中で気を貯める事が出来るの。

錬度が上がれば陣の外でも気を貯めれるようになるみたいだけど、基本的には陣の中じゃないと無理ね。

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