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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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お約束

前回のあらすじ

親であった赤龍と別れてアインは泣き出してしまった。

リントとルルは泣き止んだアインを連れて皆が居る所に向かった。



「あ!リントさん~!」


マリーが水鞭ウィップを使って降りて来るリント達を見て声を上げる。


「みんな。遅くなってごめん!」

「ルル。良かった無事で」

「ありがとう。心配させてごめんね」


キキは姉の無事に安堵しルルに抱き着いた。


その隅でヴァンガードがアインを見て不思議そうな顔をしている。


「リント殿。その連れておる子は誰じゃ?」

「僕?僕はアインだよ!お爺ちゃん!」

「お爺ちゃん?・・・ワシはまだ40歳じゃ!」


子供相手にムキになっているヴァンガードをスルーしてリントはアインの事を皆に説明した。


「ほぉ。古代龍エンシェントドラゴンか。妾も文献では読んだ事はあるがまさか実在するとはの」

「リントさん~。そうやってすぐ可愛い女の子を仲間にするんですから~」


リントにマリーの冷たい目線が突き刺さる。


「いやいや!赤龍さんに拒否権はないって言われたんだよ!?拒否したら、ワレ。オマエラ。マルカジリ。って言われたし?・・・まぁ拒否するつもりもなかったけども」


(あ。言われたのは皆殺しか。。。)


「・・・お姉ちゃん。僕は男だよ?」


キョトンとしたアインは獣耳をピョコピョコさせる。


「え~~~~!?そうなの~?でもどう見ても女の子にしか。。」


(まぁ女の子だしな。。。誰得だよ。その獣耳ってなるもんな。。。)


「マリー。どちらでも良いだろう?リントが決めた事だ。それともその幼い子をここに置いて行くつもりか?」


(さすがキキさん!正論です!)


1人でも大丈夫だと思うが正論だ。


「・・・・むぅ。分かりましたよぉ~。よろしくね!アイン君~」

「うん!よろしく!マリねぇ!」

「マ、マリねぇ。。。ウフ。悪くないかも~!」


マリーは姉と呼ばれた事で機嫌が直り、アインの頭をナデナデした。


「まぁそんな訳でアイン君を預かる事にしたからみんなよろしくね」


皆はお互いに自己紹介を済ませる。


「よろしくお願いします!」


最後にアインはぺこりと頭を下げ、皆を見渡した。


「お姉ちゃん達。魔物と戦って怪我してるね?ちょっと待ってて」


アインはそう言うと、持っていた麻袋から赤い篭手を取り出して手に嵌めた。

そのまま片手を振り上げると手から黄色い光が溢れだす。


地龍の恵みアースブレッシング!」


詠唱と共に手を地に振り下ろす。

振り下ろされた手から光が波紋となってリント達を包み込む。


「・・・すごい。怪我が治っていく。。。」


黄色い光に包まれたキキは先程の戦闘で出来た擦り傷があっという間に無くなっていた。


「・・・これは。ワシの疲れも取れたようじゃわい」


アインの魔術はHPだけでなく体力もある程度回復しているようだった。


「すごいな!これが龍魔術ドラゴニックマジックってやつか?」

「うん!環境の力を使う魔術なんだよ!」


アインによると龍魔術ドラゴニックマジックは術者の周りの環境によって変化する魔術らしい。

例えば、術者が松明に手を翳せば火の魔術となり、水に手を翳せば水の魔術になる。

しかし、万能ではない。元の属性が手に存在しなければ魔術は発動出来ないとの事。

風が吹いていれば風魔術が使えるが強欲の塔のような風が吹いていない場所だと風魔術は使えない。

自分で手に息を吹きかけても元の属性が少なすぎるため、今のアインでは発動出来ないらしい。

そのため基本的には地属性の魔術しか自ら発動する事は出来ない。


「へぇ~。それでもすごいじゃんそれ!・・・例えば相手の魔法を利用出来たりとかするの?」

「うーんと。。それは相手の魔力によるんだ。相手の魔力が僕より高かったらそれは無理かな。。。」

「なるほど。でも全体回復が出来るのはすごい助かる。ウチには回復職ヒーラーがいないからね」

「・・・でも、仲間だけ回復~とかは出来ないんだ。範囲はある程度コントロール出来るけど、敵も僕の魔術の範囲に入ると回復しちゃうから」

「・・・・乱戦では使い所が難しいって訳ね」

「うん。細かいコントロールが出来るようになったら良いんだけどね。。。」

「ハハ。まぁ気楽にやろう。無理して体壊してもアレだし」

「うん。ありがと!お兄ちゃん!」


アインは無意識だろうが嬉しいのか獣耳をピョコピョコさせている。


(・・・・・いいね!)



「リント殿。そろそろ帰らんか?ワシは酒が切れてしもうたぞい」

「あ~。そうだね。もうすぐ日も暮れそうだしな」

「リント君。ここからなら滑空して帰れそうだよ?」

「え?マジで?でもめっちゃ人数いるよ?」

「大丈夫だ。こんな時の為に用意していた物がある」


キキはそう言うとギルド証から大きな翼を2翼とベルトを取り出した。

翼は何かの植物で出来ており、手に嵌めれるようになっていた。


「浮葉樹から作った翼だ。これなら心配ないだろう?」


キキはドヤ顔だが、果たしてこんな物で滑空出来るのか不安だ。


「リント。滑空とはどういう意味じゃ?」

「え~と。。。ルルとキキはハーピーとドワーフの混血ハーフでして。。。」


リントは以前、滑空した時の事を皆に説明する。


「な、なんじゃと?妾もそれで帰るのか?」

「ティルダさん~。女は度胸!愛嬌!ド根性ですよ~!それに、いざとなったらリントさんが何とかしてくれますから大丈夫ですよ~」


(え?いやいやムリムリムリムリ。。。)


「おもしろそう!僕も滑空してみたい!」


アインは獣耳をまたピョコピョコさせている。


「よっこらせ」


ヴァンガードに至ってはおんぶ紐を既に装着していた。

以前、滑空していた時は気絶していたのに何故かベテランの雰囲気を漂わせている。


「やるー」


クピスは意味が分かっているのか分からないがやる気だ。


「だそうです。。。王女様。。。」

「クッ。。。わ、妾はランルージ王国第一王女であるぞ?それをこんな。。。もちろん実験はしたのであろうな?」

「・・・王女様。そんな事をする時間があったと思いますか?キキが作った物を信用出来ないなら仲間として失格ですよ?」


ルルが珍しく冷たい言葉を投げかけた。


「まぁまぁ。ルル。。。ティルダ。ちょっとこっち来て」

「な、なんじゃ?」


ティルダに右手で触れて運命天秤デスケルを発動。


「これでよし!」

「何がよし!なのじゃ?」

「ステータス見てみて。運がすごい上がってると思うから」


ティルダは言われた通りステータスを確認。


「これは?リントのスキルか?」

「まぁそう言う事。詳しくは後で話すよ。それだけ運が上がったら落ちても大丈夫な気がしない?」

「・・・・全くせぬわ」

「・・・ですよね~」


(やれやれ。どうしたものか。。。)


「ティルねぇ!早く~」


リントとティルダがひと悶着してる間に他のメンバーは既に準備完了と言った具合だった。


「王女様。。あんな幼子が飛ぶと言っているのですよ?ランルージ王国第一王女ともあろうお方が、幼子に後れを取るのですか?それに運も上がっている。これ以上の特別待遇はないと思うのですが?」


リントは少し趣向を変えて言ってみた。


「クッ。。。そこまで言われては妾も黙ってはおれん。。。。良かろう。庶民の道化に付き合ってやる」

「・・・はいはい。じゃあ防具脱いでこれ着けてね~」


ティルダは観念したのか言われた通り防具を外して、いそいそとベルトを装着し始めた。

リントも続いて装着。

そしてヴァンガードは定位置のようにリントの背中に乗ってきた。


「リント殿の背中。おっきぃ」

「それさ。。。狙って言ってるだろ?」


体格的にアインが背中に乗る事を少し期待していたが、クピスが背負っていた。


「クピねぇ。良い匂い~」


アインはクピスの耳の辺りをクンカクンカしていた。


「あっ」


クピスが悩ましい声を上げている。


(くそぉ。。アインめ。。。まぁ女の子だから許す!)


「みんな準備は良いかな?あの崖から行くよー」


ルルとキキが両端に立ち、翼を手に嵌めていた。


「ほ、本当に大丈夫なのであろうな?」


ティルダは震えた声でリントに訴える。


「・・・・たぶんね」


そう言っている間に崖まで辿り付いた。


「お、お主!たぶんとはなんじゃ!妾はランルージっきゃあああああああ~!」


ティルダは何か言いかけたが既に遅い。体は崖から離れていた。


「あはははは~~~!すごいです~~~!飛んでます~~~!」


マリーは楽しそうに笑っている。


「おー」


クピスも軌道に乗ると気持ち良さそうに風を浴びていた。


(おっさんは。。。気絶中かな?)


「ルルねぇ!キキねぇ!すごい!」


感激しているアインに対してリントは疑問に思った。


「アインは赤龍さんの背中に乗せて貰った事とかないの?」

「龍の背中に乗るって事はその龍を従者にしたって事らしいんだ。それだから僕は乗せて貰えなかったんだよ。父上が背中に乗せた事ある人は1人だけいたらしいんだけど、もう死んじゃったみたい」

「へぇ~。あの赤龍さんを従者にかぁ。きっと凄い人なんだろうな」

「そうだね。たしか。。。ハーレさん?いや。。ハーゲさんだったかな?忘れちゃった」

「ハハ。ハーゲさんはないだろ。。。」


(ハーデ。。。じゃないよな?)


そんな事をアインと話しているとティルダが声を震わせ目を瞑り、リントに助けを求めるように言った。


「リ、リント。い、いいいつ着くのじゃ?」

「う~ん。どうだろうね?まだまだ掛かりそうだよ?」

「ティルねぇ。早く着きたいの?こんなに気持ちいいのに。。。」

「あ、当り前じゃ」

「そっかぁ。。。分かった!」


そう言うとアインは手に魔力を集中させ始めた。

手に魔力が集まると手は緑光を放つ。


風龍の息吹ウィンドブレス!」


アインの詠唱が終わると後ろから突風が吹き、滑空速度が数倍に跳ね上がった。


「っきゃあああああああああ~~~~~!!」


ティルダの叫び声が再びランルージ大陸に木霊したのだった。

★サーシャ先生の補足授業★

龍魔術ドラゴニックマジックは一子相伝の龍の秘術よ。

赤龍はアインに全て託したからもう龍魔術ドラゴニックマジックは使えなくなっているわ。

人族でそれが使えるのはアインだけかもしれないわね。

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