言霊の使い方
前回のあらすじ
ルルが赤いワイバーンに鷲掴みにされた。
「きゃああ!」
「ルル―!!」
リントは水鞭で赤いワイバーンを掴もうとしたが天高く舞い上がる赤いワイバーンには届かない。それどころか仲間のワイバーンが次々と出現。
「クソ!おっさん!ヘイト頼めるか!?」
「任せろ!ヘイト!!」
ヴァンガードのヘイト効果で5頭中3頭がヴァンガードを襲う。
「クピスはおっさんの援護!後衛は残り2頭を頼む」
「「「了解」」」
ティルダの矢とキキの光弾がワイバーンに着弾。
1頭は動かなくなったが、もう1頭が後衛勢に迫りくる。
「卿の前に立ちはだかるは我が煉獄の礎!炎壁!」
マリーはこんな時でもしなくても良い詠唱をしているが、ちゃんと仕事はしている。
スペルが巨大な炎の壁になりワイバーンの行く手を阻む。
「リントさん~!早くルルさんを追って下さい~!」
「リント!ルルを頼む!こっちは何とかする!」
「分かった!」
リントは取り巻きを皆に任せルルを追った。
ギルド証でルルの位置を確認すると、天井にあった大穴を抜けた先に連れて行かれたようだった。
リントは水鞭を使い壁を登っていく。
(ルル!無事でいてくれ!)
大穴を抜けると奥の方に大きな洞窟があった。
位置的にあそこの中にいるようだ。リントは走って洞窟に向かう。
「ウフフ」
洞窟の手前まで来るとルルの笑い声がした。
(なんだ?)
リントは物陰に隠れながら中の様子をこっそりと伺った。
そこには先ほどの赤いワイバーンとルル。
そして知らない獣人の子が座っていた。
(ん?どういう状況だ?)
リントはこっそり言霊を放つ。
獣耳に当たると好物は不明。オーラは緑。油断しているようだ。
赤いワイバーンにも放つ。
すると言霊に気づいたのか、爪先でチョンと弾かれてしまった。
(え!?アイツ言霊が見えてるのか!?)
こんな事は今まで1度もなかった。
神から貰った唯一のスキルが見られてリントは驚きを隠せない。
「誰だ!?」
赤いワイバーンが言い放つ。
(ヤバ!・・・てかアイツ喋った?)
獣耳とルルもこちらを振り向く。
「あ!リント君!」
「ルル!大丈夫か!?」
リントがルルに駆け寄る。
「うん。ごめんね。心配かけて」
「いや、無事なら良いんだ。。。それよりこの子は?」
「僕?僕はアインって言うんだ!よろしくね!お兄ちゃん!」
(お、お兄ちゃん。。。)
リントをお兄ちゃんと呼んだ子は10歳ぐらいだろうか。簡素な白い布の服を纏っており、茶色のショートカットから獣耳がぴょこんと出ている。綺麗に整ったキツネ顔をしていて、こんな子にお兄ちゃんと呼ばれたらキュン死しそうな可愛らしさがある。
「う、うん。よろしく。。。ルル。。どういう状況?」
「ルルも良く分からないんだけど、アインちゃんが友達が欲しかったみたいなの。それで此処に連れてこられたみたい」
「お姉さん!僕は男だよ!」
「「え!?」」
(この可愛らしさで男だったのか。。。。いや違うそこじゃない)
「友達か。。。てか赤いワイバーンさんはワイバーンなんですか?」
リントは隣で静かに佇む巨大な魔物に恐る恐る聞いてみた。
「ん?我の事を言ってるのか?・・・ガハハ。小僧。死にたいのか?」
赤いそれはドス黒い声で言い放ち、リントを睨みつける。
「いや!違うんです。ごめんなさい。。。あの。。何とお呼びすれば?」
「そうだな。。。名などはとうの昔に忘れた。お前ら人は我を古代龍と呼称しているみたいだがな」
「ドラゴン!?」
よく見ると蜥蜴ではない。
ルルが攫われた時は一瞬で分からなかったが、体中に鱗があり翼とは別に腕もある。普通のワイバーンであれば腕が翼になっているはずだ。
何よりもこの赤龍からは素人でも分かる程の絶大な魔力と威圧感を感じる。
「そうだよ。お兄ちゃん。父上は偉大な龍族なんだ。その中でもとーっても偉いんだよ?」
「ガハハ。アインよ。そんな事はない。ただ普通より長く生きているだけだ」
「そうだったんですか。。。そうとは知らず、失礼な事を言ってすいませんでした。」
「良い。我も勝手に小僧の仲間を攫って来たのだ。お相子と言う事にしよう」
赤龍の表情は分からなかったが、先程までの殺気は無くなっていた。
「はい。ありがとうございます」
「・・・・アイン。ルルとやらと遊んで来い。我は小僧と話しがある」
「え!?良いの!?わーい!お姉さん!行こう!」
アインは無邪気にルルの手を取った。
「え?あ、うん。。」
ルルはリントを気にしている様子だったが、リントが頷いたのでアインと洞窟の外に出て行った。
「して小僧よ。我に奇妙なスキルを使おうとしてたな?」
赤龍は言霊が何かは分からないようだったが、自分に何かしらのスキルが向けられた事は感知しているようだった。
「はい。すいません。様子を伺って奇襲するつもりでした」
リントは嘘を吐いても見破られそうだったので正直に話す事にした。
「ほう?どんなスキルだ?」
赤龍に神から授かったスキル。言霊の説明をする。
「ガハハ。小僧は転生者だったのか!」
「転生者を知っているんですか?」
「我ほど生きていればそれぐらい知っている。どれほど生きたかは忘れてしまったがな。。。して小僧よ。神から授かったにしては、ちと頼りないスキルだな?」
「いくつかの中から選ばせて貰ったんですけど、これが一番俺にしっくりきそうだったので」
「ふむ。。。そのスキルは透明な球を飛ばすと言っておったな?」
「はい」
「その透明な球の中に魔法を込めたらどうなる?」
「え?」
リントは今までそんな事は考えもしなかった。
「試した事ないです。。。」
「・・・やってみろ」
リントは言われた通り、闇弾を言霊に込める事をイメージし発動した。
すると言霊の中に黒い弾が現れる。
言霊はゆっくりと壁に着弾。そこで止まった。
「解除してみよ」
赤龍は簡単に言うがそんな事はやった事がない。
ないが、やるしかない。
(・・・・うーん。弾けろ!)
リントがそう頭で思った瞬間。壁に付着していた言霊が割れて闇弾が飛び出してきた。飛び出した闇弾は赤龍目掛けて一直線。しかし赤龍に当たる直前に何らかの障壁が出現。闇弾は消失した。
「あ!すいません!」
「良い。そんな事よりも同時にいくつも出せるのか?」
「あ。。。どうなんだろ。。。」
レベルが2だから2つかは分からないが、結果的に2つまでしか同時に言霊は出せなかった。
しかしリントが覚えている全ての魔法を言霊に込める事が出来た。
しかも言霊は赤龍ぐらいしか気づかれた事がないので攻撃方法としてかなり有効だ。
何も気配がないところからいきなり魔法が飛び出してきたら相手の虚をつける。
今までこういう使い方が出来たかは定かではないがこれは快挙だった。
「すごい。。。こんな使い方が。。。」
「ガハハ。神から貰ったスキルが相手のオーラが見えたり、好物が分かったりだけのしょぼい訳がないだろう」
「そう。。ですよね。。。レベルばかりに囚われていた自分が恥ずかしいです」
「まぁ小僧がまだ若い。仕方ないのかもしれんがな。。。。して小僧よ。アドバイスの代わりと言っては何だが頼みがある」
赤龍は神妙な趣きでリントを見つめる。
「何でしょう?俺に出来る事であれば。。。」
「あのルルとやらを我によこせ」
「・・・・え?」
★サーシャ先生の補足授業★
古代龍は龍族が1000年生きればなれると言われている伝説の生き物よ。
私は会った事がないから分からないけど、その力は魔王にも匹敵すると言われているわ。
ちなみに龍族は龍族だから魔族じゃないの。




