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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
53/75

心配症

前回のあらすじ

ルル、キキ、クピスはマーレ湖畔に採集しに行くことになった。

--次の日


リントはまだ皆が寝静まっている頃ゆっくりと起き上がった。

ヴァンガードを起こさないようにサーシャにお礼のメッセージを送り、胸の紋章を自分で出来る限り確認した。


(まだ天秤は傾いてるっぽいな。今日、運命天秤デスケルは使えないか。。。クールタイムがどれぐらいか検証しないとな)


傾き具合を確認した後、ルル達が心配なので昨日こっそり調べていたマーレ湖畔に下見に向かった。

まだ陽が出ておらず、薄暗かったがリントには関係ない。湖畔へは魔除けの魔導器が設置されている街道が続いており、何事もなく歩いて20分ぐらいで着いた。


湖は林に囲まれており、水面が透き通っていてとても綺麗だった。

幻想的な雰囲気に包まれてボーっとしていると、陽が登ってきた。

大きな湖から陽が登り水面が反射してキラキラしている。


(綺麗だな。。。)


呑気に水面を眺めていると、突然水中から大きな口が現れリントを襲う。


「あっぶね!」


間一髪で頭ごと噛みつかれそうになった口を躱す。

大きな口の正体は体長4m程の黄色いワニだった。頭に大きな角が生えていて、おどろおどろしい。

鑑定してみる。


◎レイゲーター◎

レベル 27


(なんだこいつ?E級のレベルじゃないぞ。。。)


リントは抜刀しつつ大きなワニに突撃。

ワニは体を回転させ尻尾でリントを薙ぎ払う。

リントは跳躍して尻尾を躱しつつそのまま背中にジャンプ斬り。

背中から血が噴き出し、ワニは怒り狂いながら大きな口を開けリントに噛みつこうとした。

口を開けた所にリントは闇弾ダークボールを放った。魔法を喰ったワニは全身から血が噴き出す。

敵わないと悟ったのかワニはリントに背を向け湖の中に逃げようとした。


「逃がすか!水鞭ウィップ!」


リントはワニの背中に水鞭ウィップを放ち、引き寄せられる勢いのまま背中に剣を突き刺した。

ワニは絶命し、ピクリとも動かなくなった。


(湖には近づくなと言っとかないとな)


レイゲーターをアンデット化し、ルル達が来たら護衛するように指示した。

その後マーレ湖畔を一周したが、E級以下の魔物しか出て来なかった。


(これでよしと。まぁクピスとこいつが居れば大丈夫そうだな)


下見の時間が思ったより掛かったのでリントは急いでゴルタンへ帰った。



--ゴルタンの宿


「あ!リントさん~。どこ行ってたんですか~?」

「ごめんごめん。ちょっとマーレ湖畔に下見にね」

「ウフ。リント君は本当に心配症なんだから」

「うん。ホントに心配。湖の中にはデカいワニいたし、下見に行って良かったよ。湖付近には近づかないようにね」

「すまんな。キキ達がもう少し強ければリントにそんな心配は掛けずに済んだんだが。。。」

「いやいや。2人は戦闘職じゃないんだから当たり前だよ。。。ワニのアンデット作ってきたからゆっくり採集してきて」

「ありがとう。リント君。。。じゃあ、行ってくるね」

「いってらっしゃい。。。クピス。2人を頼んだよ」

「あい!」


そう言って、3人は手を振り出掛けて行った。



「ではリント。妾達も行くとしようかの?」

「そうだね。行こうか」


リントはマリーとティルダを連れて強欲の塔に向かった。

塔の扉に触れると目の前にウィンドウが表示されて行きたい階層を選べるようになっていた。

6階をタップすると3人は光に包まれた。

飛ばされた部屋も1階と同じくTHE迷宮といった感じで鉄の壁に囲まれており、部屋の奥の方に通路があった。


「1階と同じですね~」

「うん。でも魔物はたぶん違うから気を付けて」


通路をしばらく進んで行くと広い部屋に出た。部屋の隅に下へ続く階段があり、そこには広い床が続いていた。その遠目に蟻のような大きな魔物が2匹歩いており、下に降りないと次の部屋には勧めそうになかった。

リントが言霊ことだまで蟻のオーラを確認した所こちらには気づいていないようだ。


「マリー。あそこの魔物見えるか?鑑定してみて」

「まっかせて下さい~」



◎タワーアント◎

レベル12

体長2~3mの蟻の魔物。酸を吐いて攻撃してくる。

身の危険を感じると仲間を呼ぶ。

弱点 頭 火属性



「おお!さすが鑑定レベル5!もっとレベル上がったら何が分かるんだろうな?」

「う~ん。ドロップアイテムが分かるようになるとかじゃないですかね~?」

「なるほど。そうなると便利だな」

「仲間を呼ばれると煩わしいの。。。妾が一撃で屠ってやる」

「私もやる~」

「では其方は右じゃ。妾は左の方を狙う」

「了解です~」


ティルダが弓を構え、マリーがエレメンタルタクトで文字を書く。


「悠久に眠りし炎の精霊よ。我が矢となり敵を穿て!ブレイズアロー!」「闘気覚醒!」


マリーのスペルが炎の矢に変わりタワーアントを襲う。

直撃した矢から炎が燃え盛り蟻は不気味な鳴き声を放ちつつ絶命。

同時にティルダの矢もタワーアントの頭に直撃。こちらは声を上げる暇もなく絶命した。


「おお!2人共やるじゃん!」

「えへへ~。新技です~」

「まさかティルダが闘気覚醒を覚えてるとは思わなかったよ」

「お主が使うのを見ていてな。初級の武技で便利そうだったので妾も覚えてみたのじゃ」

「便利だけどHPごっそり減るからね。。。水治癒キュア


ティルダに水治癒キュアをかけてHPを回復。


「ヒーラーがいない時はなるべく使わないでね」

「お主は心配症じゃの」


(そう言えばガチのヒーラーってウチにいないんだよな。。。俺もこれしか回復魔法ないし。。塔を攻略するにはヒーラー絶対いるよな。。。)


「それよりマリー。お主の魔法はなんじゃ?妾は初めてみたぞ」

「えへへ~。すごいでしょ~」


ティルダにエレメンタルタクトについて教えてあげた。


「ほぅ。そんな物があるのか」

「はい~。帰ったら試してみます~?」

「いや、妾は半端者ゆえ他の武器にうつつは抜かせぬ」

「ティルダさんってすごいマジメですよね~」

「そんな事はないぞ?マジメなら城から抜け出しておらん」

「それもそうですね~。アハハ~」



そんな話をしていると、カサカサと足音が聞こえてきた。


「ん?もしかして仲間を呼ばれたか?」


奥の通路から蟻がワラワラ出現。


「げ!10匹はいるぞ。。。マリーは右から。ティルダは左から。俺は真ん中に突っ込む」

「「了解」~」


リントは2人に指示してすぐに詠唱を始める。


「光ある所に闇はある。我が欲するは暗き常しえより生まれし漆黒の刃!暗闇付与ダークエンチャント!」


黒鳴剣こくめいけんは一瞬光ると黒いオーラに包まれる。

黒いオーラは刀身から30cm程伸びていた。単純にオーラでリーチが伸びており、オーラを当てるとダメージが与えれそうだ。


「うぉぉぉ!」


リントは蟻の中央に突っ込む。

迫りくる蟻達の顎や酸を躱しながら次から次へと斬りつけた。

マリーとティルダも左右から矢と魔法で攻撃。

リントに斬りつけられた蟻は失明効果が効いたのか、辺り構わず滅茶苦茶に酸をまき散らす。

酸は仲間に着弾し蟻達は混乱していった。

烏合の衆と化した蟻達を屠るのに時間は掛からなかった。

約1分で誰1人ダメージを負う事無く蟻を殲滅した。


「リントさん!何ですか今の?カッコイイ~」

「フハハ。俺も新技を披露ひろうしたくてね。かなり疲労ひろうするけどね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・では少し休憩しようかの」

「・・・う、うん」


(え?スルーされた?完全にスルーされたよねコレ?)


2人は親父ギャグをスルー。

蟻達をドロップ化して魔石をいくつか回収した。


(くそう。。。会心の出来だと思ったんだが。。。良いもん!俺にはクピスがいるもん!愛しのクピスの様子を見よう。。。)


リントは気を取り直して左目に意識を集中させた。

浮かんで来た景色はマーレ湖畔でルルがピッケルで鉱石を掘っており、キキが薬草を採集している様子だった。リントが生成したアンデットも健在。クピスは何やら魚を食べている。


(クピス。。。湖の中に入ったな。。。まぁ無事みたいだから良いけど。。)



「よし!行きますか!」


MPがある程度回復したので6階のマップを埋めるように塔の中を進んだ。

半日程掛かったが特に問題なく蟻を狩り、7階への階段を見つけた。


「お!階段発見!帰りますか」

「はい~。6階は広いですね~」

「良いレベル上げになったの。今度は罠でも覚えてみるか」

「隠密のレベルも上げといてよ。。。」

「そうじゃの。忘れておった」

「いやそれが一番大事だからね?」

「リントは心配症じゃの」


(皆が呑気過ぎるだけだと思うんだけど。。。)


3人は6階で発見した水晶の部屋まで戻りゴルタンに帰った。



宿に着くと広間にクピスを発見。ルルとキキは買い物に行ってるのか居なかった。


「クピス!湖の中に入ったよね!?」


クピスはハッとした様子で頷くと悲し気に肩を落とした。


「・・・・いや。無事なら良いんだけどね。心配でさ」

「ごめん。なさぃ」


クピスは泣きそうな顔になる。


「あ~。ごめんごめん。そんなに怒るつもりじゃなかったんだけど。。。そうだよね。最近魚食べてなかったもんね。俺の方こそ気づかなくてごめんね」


リントはそっとクピスを抱き寄せ頭を撫でる。

クピスの髪は最近マジックソープで洗っていなかったのでかなり傷んでいるようだった。


(むぅ。。。サラサラのクピスの髪が。。。これはマジックソープを手に入れなければ。。。)


「あ~!ずるい~!リントさん~。私もナデナデして~」


そんなやり取りをしているとルル達が帰って来た。


「ただいま。リント君」

「お帰り~。無事で何より。。。キキってさマジックソープ作れる?」

「ん?あぁ。しかし材料が足りんな。そんな物がいるのか?」

「そりゃ、皆でサラサラヘアーにならないといけないじゃないか!」


リントはえらい剣幕で言い放つ。


「い、いけないのか?」

「うむ!」

「リントよ。妾も欲しいぞ。マジックソープがないと体がベタベタして敵わぬわ」

「でしょ?いるよね!?」

「分かった。でも錬金する場所がない。家が出来るまでは無理だな」

「そっかぁ。。。どっかに売ってないかな?」

「ゴルタンには売ってないみたいだよ?かなりの高級品だから王国ぐらいしかないんじゃないのかな?」

「ですよね。。。じゃあ先に材料だけでも手に入れよう」

「そうだな。七色薔薇セブンローズが何処で採れるか調べておく」

「あの良い匂いは薔薇の香りだったんだな」

「私も使ってみたいです~」



--その日の夜


何処かで飲んでいたヴァンガードが部屋に帰ってきた。


「おっさん。お帰り。良い農具あった?」

「それがのぉ。。。品数が少なくて鍬と肥料ぐらいしかなかったわい」

「まぁ、ここで農業する人とか居そうにないもんな。。。何かラッキーな事あった?」

「ん?特にないがのぉ。何故じゃ?」

「いや。なんでもない」


運命天秤デスケルは少し傾いているけど、もう効果は切れたっぽいな。反動とかもないっぽい。。この傾き具合なら明日は使えそうだな)



そんな事を考えながらリントは眠りに着いた。

★サーシャ先生の補足授業★

マジックソープに必要な材料は魔石LV3と七色薔薇セブンローズよ。

七色薔薇セブンローズは小高い丘の上にあるとされているわ。

ちなみにリントが生成したアンデットはルル達が帰った後にE級の魔物を倒しながら力尽きたわ。

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