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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
52/75

おっさんのターン

前回のあらすじ

ヴァンガードに運命天秤デスケルを発動し運を上げてみた。

リントがヴァンガードに振り向く。

すると蟹が見事に身だけツルンと上手に剥けていた。


「ふぉっふぉっふぉ!」

「おおー!」


殻に切れ目を入れて、身を引き抜こうとしてもこう上手くは剥けない。


(まさか。。。これは運命天秤デスケルの効果か?だとしたらマジでネタスキルだな。。。)


リントは少し落胆しながら蟹を必死にむさぼった。


皆が蟹を全て食べ終わる頃には他の冒険者はいつの間にかいなくなっており、ボス部屋の赤かった扉は灰色になっていた。挑戦者がボスと戦い終わると灰色になるらしい。


(3組いたはずだけど。。。。まさか負けたのか?終わるのが早すぎる。。)


「リント殿。何を呆けておる?行くぞい!」

「あぁ。ごめん」


ボス部屋の大きな扉を開く。

中に入ると闘技場のような大きな空間が広がっており、壁には燃えている松明がいくつも並んでいた。


「如何にもって感じだな」

「ワシに任せろ」


広間の真ん中の辺りが光ったと思うと3匹のゴブリンが出現。

試しに鑑定してみるが、ボスなのでレベル1の鑑定では出来なかった。

2匹の魔物は少し大きいゴブリンタイプで重鎧と盾と剣を装備。騎士のような恰好。ゴブリンナイトと勝手に命名。

その奥に居る1匹はローブを纏い、木の杖を持っている。魔法使いのようなゴブリンだった。杖ゴブリンと命名。


(魔法を使うのか?今まで魔物が魔法を使っているのは見た事がない)


「2人共。奥にいるやつは魔法を使って来るかもしれない。警戒して」

「任せろ!ふぉぉぉぉ!」


ヴァンガードは左のゴブリンナイトに突っ込む。


「クピス!防御旋律ディフェンス頼む!」


クピスは演奏を開始。リントは右のゴブリンナイトに向かう。


ガキィン!


ヴァンガードとゴブリンナイトの鍔迫り合いが始まった。


リントはもう1匹のゴブリンナイトの袈裟切りを躱し、鎧がない顔を目掛けて突き刺す。


「ぶぉぉぉ!」


顔を串刺しにされたゴブリンナイトは悲鳴を上げながら倒れた。



その間に杖ゴブリンは不気味な言葉を並べ詠唱を唱える。杖を掲げヴァンガードに向かって魔法を放った。

杖からバレーボールぐらいの火の玉が出現し、ヴァンガードを襲う。


「おっさん!」


火の玉はヴァンガードに当たるかと思いきや、絶妙のタイミングでヴァンガードが足を滑らせてこけた。

鍔迫り合いをしていたゴブリンナイトはそのままヴァンガードに覆いかぶさるような態勢になり、火の玉がゴブリンナイトに直撃。


「ごぉ!?」


燃えながら吹っ飛んだ。

演奏をしながら様子を伺っていたクピスは追撃のチャンスを見逃さなかった。吹っ飛んだゴブリンナイトに駆け寄り、頭を一突き。ゴブリンナイトは絶命した。


その間、リントは唖然としている杖ゴブリンに向かって水鞭ウィップを発動。

杖ゴブリンを引き寄せ、首を掻っ切った。杖ゴブリンは頭が宙に浮き絶命した。



「ふぃ~。マジで魔法使ってきたな。ちょっと焦ったわ」

「らくしょーー」

「ふぉふぉふぉ。見たか!ワシの機転を利かせた見事なコケっぷり!」


(転んだだけだろ。。。。てかこれも運命天秤デスケルのお陰なのか?だとしたら。。。)



魔物達の死骸が光に包まれ消えていく。

すると広間の中央に木箱が出現。


「お。これがボスドロップって事かな?」


リントが木箱を開ける。中には、魔石と一升瓶が入っていた。


「・・・鑑定出来ないって事はLV1の魔石じゃなさそうだな。。。。てかこの一升瓶なんだろ?後でマリーに鑑定してもらうか」

「リント殿。。。。これは?」



ヴァンガードが震えた声で一升瓶を指差した。

一升瓶をよく見ると何やら文字が書いてあった。


「・・・え!?日本語!?」

「にほんご?」


クピスが首を傾げる。

リントはしばらく日本語に触れてなかったので一瞬分からなかった。

しかし、確かに一升瓶に日本語が記載されている。


「だ、大吟醸。幻。。。」

「なんじゃと!?幻?リント殿!これが読めるのか?」

「あぁ。うん。。俺の故郷の言葉だ」

「おお!・・・これはやはり酒なんじゃな?」

「たぶんね。でもおっさん。よく酒だと分かったな」

「ワシを誰じゃと思っておる?呑んべぇの会。初代会長じゃぞ?」

「あぁ。そぅ。。。」


(これも運命天秤デスケルか?でもそうとしか考えられないな。おっさんが好きな酒出て来たし。。。ボスが湧くのも早すぎる。。。てか日本酒とかありなの?)



全く訳が分からなかったが、とりあえず帰る事にした。

ボス部屋の奥の扉を抜けると入り口にあった水晶と同じ物を発見。

触れるとウィンドウが表示され、塔を出るか登るか選択出来た。


「帰りますか」


出るを選択。光に包まれ3人は塔を出た。


-----------------------------------------------------------------------------



気が付くと知らない路地裏に出た。時刻は夕方。

表に出てみると、どうやらゴルタンの商業地区みたいだ。


「あ!リントさん~!」


マリーの声だ。


「お!偶然だな!マリー!」

「えへへ~。塔のボスまで行ったんですか~?」

「うん。取り敢えず5階は制覇したよ。魔石出たから後で鑑定してくれる?」

「まっかせて下さい~!」


マリーの後を追ってキキ達もやってきた。


「無事だったようだな」

「うん。まだ余裕だったよ」

「リント君。丁度ここから買おうとしてる家が近いから行ってみる?」

「そうだな。そう言えばまだ見た事なかったし」


ルルに案内され商業地区のど真ん中にある建築中の家に向かった。


「おおー!これか!デカいな!」


貴族の屋敷ぐらいあるその家は商業地区ではひと際目立つ建物だった。

奴隷協会の建物になるはずだったので装飾等は施されてないが、白を基調にしている上品な建物だった。


(ガイアスの所為で売りに出された建物。。。それを俺達が買うとは皮肉なもんだな。。。)


建築中と言う事だが、ほぼ完成しているように見えた。

後は改築だけすれば終わりそうだ。


リント達が家を眺めていると、高そうな衣服を身に纏っている小太りの男が話かけてきた。


「これはこれはマリー様。下見ですかな?」

「あ。ブルグさん~」


ブルグと呼ばれた中年の男はゴルタンを拠点にしているヨハネ商会の元締め。

買い手が難しいと言われた家を買ってくれるマリー達はこの上ない上客だった。


「マリー様。本日入金が確認出来ましたので、後は露天風呂を作って裏口を店舗に改築をすれば完成します」

「入金!?」

「ええ。稀代の英雄サーシャ様が店を出すと。。。。失礼ですがあなたは従業員の方ではないのですか?」


(ヤバ。そういう話になってたのか)


「すいません。俺は武器の素材とか魔石を集める雇われ冒険者でして。。。先日、マリーさんに住み込みで雇われたばかりなのです。まさか英雄の店とは知りませんでした」

「・・・そういう事でしたか。これは失礼。。。。しかしあなたはラッキーですな。こんな広いお屋敷に住めるのですから。しかもここには従業員用の露天風呂まで作られる。さすが英雄。器が大きいですなぁ。ハッハッハッ!」


リントはティルダの冷たい目線を感じたがスルーして会話続ける。


「ですねぇ!サーシャ様に感謝感激雨あられですなぁ!ハッハッハッ!」

「・・・・何ですかそれは?」

「いや・・・・なんでもないです」



ブルグの話によると屋敷を改築するのに10日程かかるとの事。

屋敷をくるっと1周した後、普通の店より少し高めだがティルダが居るので個室がある食事処に向かった。


「10日後か。ルル。そろそろ2号店の準備をしないといけないな」

「そうだね。島から持ってきた素材じゃ足りないから採集しないとね」

「リント。明日からルルとゴルタン付近で素材集めをしようと思うんだがいいか?」

「え?あぁ。いいよ。でも危険な所には行かないでね」

「大丈夫だ。ここに来てから色々情報は集めてある。明日は近くにあるマーレ湖畔に行こうと思う」

「強い魔物いないの?」

「大丈夫だよ。リント君。いてもE級ぐらいの魔物しかいないってギルドの人が言ってたから」

「そっか。。。じゃあ念の為クピスも連れて行って」

「いくーーーー!さかなーーー!」


3人の明日の予定が決まった。

冒険者ギルドで簡単な討伐クエストも受けるらしい。


(クピスが要れば大丈夫か。。。一応アンデットも同行させてみるか)



「リント殿。。。そんな事よりもアレを出してくれ」

「アレ?」

「幻じゃ!」

「え?ここ店だよ?持ち込みはマズイんじゃ?」

「話はつけておる。早くせぬか!」


ヴァンガードは酒の事になると怖かった。


「わ、分かったよ。。そんなに怒らなくても。。。」


リントはギルド証から大吟醸を取り出した。


「おお~。あの時は暗くてよく分からんかったが、こんな透明な酒は見た事がないぞ」


ヴァンガードがグラスに幻を注ぐ。

匂いを堪能した後、一気に飲み干した。


「美味い!!!!なんじゃこれは!?こんな酒飲んだ事ないぞ!!!」


ヴァンガードは目を潤ませながら感動している。


「リントさん~。それなんなんですか~?」

「あ~。5階のボスドロップなんだ。俺もこんなの出て来たから驚いたよ。酒が出て来るとかどうなってんだろね?」

「そんなの聞いた事ありませんね~」


皆が不思議そうな顔をしている。


「・・・・リント殿。そう言えばこの瓶に書いてある文字は故郷の文字と言っておったの?作り方を知っておるのか?」

「あぁ。確かにそれは故郷の文字だけど、酒の作り方は知らない。でもたぶん米から作ってると思うよ」

「こめ?」

「あ~。こっちだったらライスフラワーの実か。種から作ってみたら?」


リントはヴァンガードにライスフラワーの種を渡す。


「ふむ。。。育ててみる価値はありそうじゃの。。。。決めたぞ!ワシはあの屋敷で畑を耕す!そしてこれと同じ酒を造って嫁に飲ませてやるぞい!!」

「それは自分で飲むんかーい!!・・・・え!?てか奥さんいたの!?」

「ぬ?言っとらんかったかの?」

「聞いてねぇよ!」


リントは奥さんを残して冒険者になって良かったのかとヴァンガードに聞いた。

しかし奥さんもヴァンガードと同じく酒に魅了されたらしく、こちらから酒をノームの島に送る事を条件に冒険者になる事を認めて貰ったらしい。


(妻帯者だったのか。。。無理させられないじゃないか。。。)


「ヴァンガード。ついでにキキ達の素材も栽培してくれないか?」

「ふぉっふぉっふぉ!任せておけ!ワシはずっと畑を耕しておったからな!どんな物でも育ててみせるぞい」


ヴァンガードはやる気だ。酒の造り方を知っているのかは定かではないが。

明日は農具を買いに行くらしい。


「リント。では明日は妾と強欲の塔じゃの?」


ティルダが微笑む。


「あ!ずるいですよ~。マリーも行く~」

「え?6階から?」

「当り前じゃ。雑魚をいくら倒しても強くはなれぬ」

「まぁ、そうだけどね。。。じゃあ、明日は下見って事で6階だけね?」

「む。。。まぁ良かろう」



こうして明日はリント、マリー、ティルダの3人で強欲の塔6階ツアーが決まった。

★サーシャ先生の補足授業★

ボスドロップでお酒が出たのは聞いた事がないわ。恐らくリントのスキルの所為ね。

ちなみに魔石はLV3だったみたいよ。価値は5000リェンぐらいかしら。

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