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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
51/75

ネタスキル?

前回のあらすじ

リントは激戦の末、気を失った。

(・・・・・・・ここは?)


リントは重い体を起こしながら目を開く。

薄暗い辺りを見渡すと割れたステンドグラスと大きな十字架が見えた。


(まさか・・・この教会。。。)


「おはよう。そのまさかさ」

「ハーデ!」


振り向くとそこには黒いローブを纏った小柄な男が立っていた。

相変わらず顔が見えないがこの耳に付く声。間違いなくハーデだった。


「君はまた無茶をしたみたいだね」

「俺はまた・・・気を失ったのか?」

「そうだよ。あんな格上相手と戦うべきじゃなかった。君は僕の願いを叶える前に死ぬつもりかい?君が死んだら魔人狼ウェアヴォルフも死ぬんだよ?」

「え!?」

「当り前じゃないか。君の身体を触媒にしてるんだよ?それが理解出来たらもう無茶はしないことだね」

「・・・・いつも俺を監視しているのか?」

「・・・さぁ?でも、最後の一撃は見事だったよ。まさか僕の編み出した闇魔法を君自身がギルド証を介さずに発動するとはね。称賛に値するよ」

「何の事だ?」

「・・・後でステータスを確認してみなよ」

「・・・・まぁいい。お前が俺の意識の中に来たって事は何か要件があるんだろ?」


ハーデは少し微笑むと、リントに問いかけた。


「そうだ。。。君は今、強欲の塔を登ろうとしているね?」

「ああ。」

「王女様の為かい?」

「・・・・かもな」

「・・・おかしいと思わないか?」

「何がだ?」

「勇者だよ。君が出会った勇者はまともな奴がいないだろう?」

「・・・人間勇者ガイアスはそうだが獣人勇者イアンヌはまともだ」

「何処がまともなんだ?誰かがピンチにならないと攻撃が出来ない勇者なんておかしいだろう?人としてじゃなく”勇者”としておかしいと言ってるんだよ」

「・・・・・」


リントも薄々そう感じていた。

神による勇者の選定。ガイアスもイアンヌも”勇者”として欠落している。

何よりも魔王を倒す意志が感じられない。


「君も気づいてるはずだ。”おかしい”と」

「・・・かもしれないな。でも俺には関係ない事だ」

「・・・そうだね。でも僕の願いには”それ”が関係してくるんだ」

「・・・・何が言いたい?」

「話を戻そう。。。強欲の塔には<神智の書>という本が眠っている。それを手に入れて欲しいんだ」

「塔の何処にある?」

「分からない。でも上層の何処かにある事は確かだ。途中で見つけるかもしれないし、100階にあるかもしれない」

「・・・分かった。クピスの命には代えられないからな」

「理解が早くて助かるよ。。。。そんな君に少し力を与えよう。死んでもらっては困るからね」


そう言うとハーデは何か詠唱を唱え出した。

10秒ぐらいの長い詠唱が終わると、ハーデの指先から黒い靄が出現。

靄はリントを包み込む。


(・・・・!い、息が。。。)


リントは呼吸器官が全て停止したような全く息が出来ない感覚に襲われた。

生まれ立ての赤子のように呼吸の仕方を忘れたようなそんな感覚。


(苦、苦しい。。。。)


死を感じた。


(いき!いき!いき!いき!く、くうき。。。)


酸素を求めていると突如脳が締め付けられ、激痛が走る。


「がぁぁぁぁぁ!!!!」


リントは酸素不足と激痛の中、気を失った。


---------------------------------------------------------------------------------



「ハッ!!・・・ハァハァハァ」


胸を押さえ、ベッドから飛び起きる。


「リント君!」


リントが目の前を見るとルルが泣きそうな顔で見つめていた。


「お、俺は。。。」


リントが何か喋ろうとした瞬間に皆が一斉にリントの名を呼んで覆いかぶさる。

正面からルル、右からクピス、マリー。左からキキ、ティルダ。


「うぉ!」


起こした体を美少女達に押し倒されてまたも仰向けの状態になる。


(こ、これは。。。)


リントは体中の感覚を研ぎ澄ました。何故なら体の至る所に果実の感触がある。

特に顔だ。顔がルルの果実に押しつぶされてエライ事になっていた。


(おぉぉぉぉ!)


リントは海綿体にこの感触を刻み込む。

この柔らかさ。この弾力。忘れてなるものかと。


(・・・・・・・・・・・でも・・息が出来ん)


「し、死ぬ~~!」


リントは至福のひと時をもっと味わいたかったが、また呼吸が止まる感覚は避けたかった。


「あ!ごめん!リント君」


ルルはリントの悲痛な声を聞き離れた。


「ハァハァハァ。。。。いや。俺の方こそ心配かけてごめんね」

「リント。キキ達に無茶するなと言っておいてお前が無茶してどうする。。。」


キキが泣きそうな顔で呟く。


「ハハ。本当だな。ごめんよ」

「もぅ!笑い事じゃないですよ!帰ってきたらリントさん気を失ってるし、体中が火傷だらけで本当に心配したんですから!2日も起きなかったんですよ!?」


マリーは珍しく声を荒げた。


「ごめん。マリー。本当に気を付ける。。。」

「はい。リントさんは私のご主人様なんですからね。死なれたら困ります」

「うん。。。」


リントはマリーの頭を撫でる。



「リント。。すまん。妾のせいで。。斯くなる上は。。」


そう言うとティルダはおもむろに着ていた黒のワンピースを脱ぎだした。

艶やかな肌が露わに。


「ちょ!」


本気なのかボケなのか分からないが皆に全力で止められた。


(王女様。。。。マジメ過ぎて天然?ちょっと可愛いけども。。。)



そんなやり取りをしているとヴァンガードが扉から入って来た。


「おお!気が付いたようじゃのリント殿」


ヴァンガードは頬を赤く染めており、酔っ払っているみたいだ。


(おっさん。。。)


「・・・はて?リント殿。そのような紋章が胸にあったかの?」

「え?」


はだけた服をヴァンガードが指を差す。

リントは下を向いて確認したが角度的に見えない。

キキがリントに近づき服を脱がした。


「本当だ。。。これは?・・・天秤か?」


キキがリントにまたがり胸を見る。


「真ん中が十字架になってますね~」


マリーも顔を近づける。


「本当ね。そこから羽みたいなのが生えてるわ」


ルルもマジマジと見つめる。


リントは少しドキドキしたが紋章が気になったので事細かに説明してもらった。

紋章は胸郭の少し上の部分にあり、天秤のマーク。天秤の真ん中が十字架になっており、その十字架から左右に翼が生えている。左が悪魔の翼のような形。右は天使の翼のような形をしている。


(ハーデか。。)


皆に意識を失っている間、ハーデが出て来た事を説明した。


「神智の書?キキ。聞いた事ある?」

「いや、ないな。だが強欲の塔にあるなら都合が良いな」

「だね。サーシャさんに聞いてみとく」



マリー達は付きっ切りで看病していてくれたのか、疲れきっていた様子だったのでリントは皆に部屋で休むように伝えた。



リントはサーシャにマイホームと神智の書のメッセージを送った後、マリーが持ってきてくれた夜食を食べながらステータスを確認した。


==============================================

リント 21歳 男 人間

称号 :痴れ者

レベル:40

ランク:C

職業 :闇司教ダークビショップ

HP :330/330

MP :525/525

筋力 :115(+150)

耐久 :85(+80)

敏捷 :175

魔力 :315

運  :88

スキル:言霊ことだま レベル2 運命天秤デスケル

水魔法:水治癒キュア泥水マッド水鞭ウィップ水障壁アクアウォール

闇魔法:闇弾ダークボール暗闇付与ダークエンチャント 

深淵魔法:アンデッド生成 レベル2

スペル:なし

武技 : 闘気覚醒 

装備 :共鳴剣レゾナンスブレード

   :ブラッディウルフのマント

   :トロルの軽鎧

   :黒革のブーツ

==============================================


(魔力が異常に上がってるのはハーデのお陰か。。。暗黒付与ダークエンチャント?もしかしてハーデが言っていた最後の一撃か?)


リントは称号でティスられている事はスルーして暗黒付与ダークエンチャントをタップしてみる。


~~暗闇付与ダークエンチャント~~

闇司教ダークビショップ専用。最大MPの2分の1を消費し対象に暗黒の力を付与する。対象は攻撃力が増加するほか攻撃した相手に失明効果を与える。攻撃力と継続時間は魔力に依存する。



(MP消費半端ないな。。。まぁ頭に入れとこ。それよりもこっちが気になる。)



続いて運命天秤デスケルをタップしてみる。


~~運命天秤デスケル~~

ユニークスキル。触れた対象の運を増減させる。右手なら運を上げ、左手なら運を下げる。発動すると胸の天秤が傾く。天秤が元に戻ると再使用可能。増減値は術者の魔力に依存する。術者自身に使用する事は不可。


(なんじゃこのネタスキル。。。今まで運なんて気にした事なかったけど。。。明日おっさんに使ってみよ)



リントは言霊ことだまの時と同じようにヴァンガードを実験対象にした。



---次の日


キキの特製回復ポーションのお陰ですっかり火傷も治ったリントはクピスとヴァンガードを連れて強欲の塔に来ていた。他の仲間はティルダのお金で衣類や食器の買い出しにウキウキで出掛けて行った。やはり女の子。冒険よりショッピングだ。




---強欲の塔4F


「いやー。楽勝だな」

「じゃのぉ。タワーゴブリンのレベルがちょっと上がったぐらいで何の問題もないわい」

「あい!」


リント達は強欲の塔を順調に登っていた。

4階も難なく通過し、1番奥の部屋にある階段を登るとボスがいる5階に辿り付いた。

5階は大きな広間になっており、他の冒険者が3組奥の扉の前に座っていた。


「順番待ちかな?休憩しよう」

「そうじゃな」

「かに~」


クピスはそう言うとギルド証から大蟹ビッククラブの鋏と簡易的なキャンプセットを取り出した。


「おお!クピス殿!準備がいいのぉ。酒の肴には持ってこいじゃ」

「それ。。。。持って帰ってたんだな。。。」

「あい!」


クピスは手際よく火を起こして目を輝かせながら蟹を焼き始めた。


(よし。。おっさんに気づかれないように運命天秤デスケル使ってみよう。。。)


ヴァンガードはいつものように酒を飲みながら頬を赤く染めている。

リントは焼けた蟹を右手でヴァンガードに渡す。その際に手に触れ運命天秤デスケルを発動。

しかしヴァンガードには何の変化も起きない。運命天秤デスケルが掛かっている事も分かっていないようだ。


(何も起こらん。。。。それにしても食べ辛いなこの蟹)


大蟹ビッククラブの鋏は非常に食べ辛い。

焼いた殻をナイフで切ると身まで切れてまともに食べれないのだ。




--5分経過


リントが蟹の殻を一生懸命切っていると


「おお!!」


ヴァンガードが声を荒げた。


「どうした!?」

★サーシャ先生の補足授業★

クランリーダーが強欲の塔のボスを倒せれば、1度外に出てもその階の次の階から挑戦出来るわ。


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