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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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王女の実力

前回のあらすじ

リントとティルダは毛鼠ファーマウスを探しに森の麓に向かった。

リントとティルダは毛鼠ファーマウスの生息地である森の麓付近まで歩いてきた。

途中Eランク級の魔物が数匹現れたが、リントが難なく処理。



「リントは闇魔法も使えるのじゃな」

「ん?ああ。最近覚えたんだよ。大した事ないけどね。。。。そんな事よりあそこにいるの毛鼠ファーマウスじゃない?」


リントが指差した方向には体長50mの2足歩行の鼠型の魔物が2匹いた。

手には小剣と小盾を持っている。魔物との距離は約100m。

こちらには気づいてないみたいだ。


「よし!妾の力。その目にしかと焼き付けておくのじゃ」

「はは~。王女様~」


リントは少しふざけてみたがティルダはスルー。真剣な眼差しで弓をギルド証から取り出した。

そんな華奢な体で自分の背丈ぐらいある弓が引けるのかと思ったがそれは杞憂に終わる。

ティルダは弓を構えて矢を限界まで引き絞り、放った。矢は見事に森の木を掻い潜り、弧を描いて毛鼠ファーマウスの頭に命中。毛鼠ファーマウスは1撃で絶命した。


「スゲー!1発で当たった!」


リントが感心しているともう1匹がこちらに気づいて駆け寄ってくる。足が速い毛鼠ファーマウスに対してティルダはショートソードを構える。


「ティルダ。大丈夫なのか?」

「まぁ、見ておくがよい」


駆け寄ってきた毛鼠ファーマウスはティルダにジャンプ斬り。ティルダはショートソードで小剣を弾くと素早くショートソードを手の中で、くノ一のように逆手に持ち替え腹を斬りつけた。毛鼠ファーマウスは空中で血をまき散らしながら地面に激突。そのまま動かなくなった。


「おおー!やるじゃん!」

「わ、妾を誰じゃと思うておる。こんなに弱くては手慣らしにもならんがな。。。。」


ティルダはそう言うとペタンと地面に座り込む。


(あれ?どうしたんだろ?)


地面に座り込んだティルダをよく見ると僅かに震えていた。

ティルダが魔物と戦ったのは恐らく初めてなのだろう。王宮で訓練はしていたみたいだが、訓練と実践では訳が違う。魔物とは言え命を奪ってしまったのだ。強がってはいるが、温室育ちの王女様には刺激が強かったようだ。


「・・・・ティルダ。おまじないを教えよう」

「おまじないじゃと?」

「そそ。魔物を倒したらこうやって十字を切るんだ」


リントはティルダに十字を切って見せた。


「ほう。お主がさっき大蟹ビッククラブにやっておったやつか。。。それをやるとどうなるのじゃ?」

「奪った命に対しての弔いだよ。これをやると気分が落ち着くんだ」

「そうなのか。。。」


ティルダは立ち上がり毛鼠ファーマウスに十字を切った。


「どう?」

「・・・・そうじゃの。何故か気分が落ち着いた」

「良かった」


リントは笑顔でティルダを見つめる。ティルダはその顔を見て少し胸が高鳴った。


「・・・・リントはただの変態男かと思うておったが。。。」

「え?なんて?」

「いや、何でもない。狩りを続けるぞ」



ティルダが毛鼠ファーマウスを狩っている間、リントは左目に意識を集中させてクピスの様子を伺う。

浮かんで来た景色はクピスが順調に大蟹ビッククラブを狩っている様子だった。

リントが生成したアンデットも動きが遅いながらもクピスを援護していた。


(これだけ距離が離れていてもアンデットは力尽きるまで動くみたいだな。命令も出来るし。アンデット生成のレベルが上がったからか?でも何で上がったんだろ?使い続けると上がるのかな?)


そんな事を考えながら何気なく自分のステータスを確認してみた。


(・・・あれ??レベル上がってる?)


リントが昨夜確認した時、自分のレベルは34だったはず。しかし、いつの間にか35になっていた。


(もしかして。。。アンデットが魔物を倒した経験値。。。俺に入ってる?)


昨夜から現在に至るまで、リントは直接魔物を倒していない。アンデットが倒した魔物の経験値が入ってるとしか考えられなかった。


(マジかよ。。。ついに俺もプチチート使いか?これは検証する必要があるな。今日はアンデットを残したまま街に帰ってみるか。)



そんな事を考えながら左目でクピスの様子を見ていると、狩りを終えたのかこちらに向かって来ているようだ。アンデット大蟹ビッククラブも片腕を失いながらも、まだ力尽きてない。


(無事終わったようだな。良かった。。。)



「リント!!」


リントが安堵していると、ティルダが急に大きな声を上げた。


「ん?どうした?」

「あ、あれはなんじゃ?」


ティルダが怯えながら指差した方を見ると、毛鼠ファーマウスの死骸だった。


「ん?ティルダが倒した毛鼠ファーマウスか?」

「腹をよく見るのじゃ」

「腹?」


目を凝らして毛鼠ファーマウスを見てみると腹の部分がもぞもぞと蠢いていた。


「え!?なにあれ?気持ち悪!」


リントは言霊ことだまを放つ。オーラは赤。好物は分からなかった。


(生きてる?死んだらオーラは消えるはず。。。)


レベル1の鑑定をしてみる。


寄生鼠パラマウス◎ レベル 鑑定不能


「げ!レベルが見えない!なんだこいつ?」


寄生鼠パラマウスはビクビクと体を痙攣させながら徐々に大きくなっていく。

体長が3mぐらいになるとムクっと起き上がり奇声を上げる。


「キシャアアア!」


蛇のような奇声を上げると背中から赤い触手が突出してきた。


「ティルダ逃げろ!こいつはヤバイ!」


リントはすぐさま共鳴剣レゾナンスブレードを抜刀し、闇弾ダークボールを放つ。

無詠唱の闇弾ダークボール寄生鼠パラマウスに飛んで行くが躱されてしまう。

体は大きいが動きは速い。


寄生鼠パラマウスは奇声を上げながらリントに突撃。リントはすぐさま水鞭ウィップを使い木の上に退避。すると寄生鼠パラマウスから赤い触手が何本も伸びてリントを襲う。

リントは襲って来る触手を数本斬り伏せたが、触手の数が多く対処しきれそうになかった。

触手を斬り捨てる事は諦めて、水鞭ウィップを使い木の上を蜘蛛男のように移動。逃げながら触手を木に絡まそうとした。

しかし触手は木に当たると少し動きを止めるが、そのまま強引に木をなぎ倒しながらリントを追ってくる。


(マジかよ。。。)


どう対処しようかと考えているとクピスの敏捷旋律スピードが聞こえた。


「クピス!助かった!」


大蟹ビッククラブの攻撃目標を寄生鼠パラマウスに指定。

大蟹ビッククラブ寄生鼠パラマウスの後ろから体当たり。寄生鼠パラマウスは少しよろけて、触手が止まった。


「ハァハァ。クピス!触手が伸びて来るから距離取って!」


クピスはコクリと頷いて様子を伺う。


寄生鼠パラマウスは体当たりしてきた大蟹ビッククラブに触手を絡ませ噛みついた。

大蟹ビッククラブは避ける事が出来ずそのまま捕食され始める。


(戦闘中に食事とは良い度胸だな!)


リントはすぐさま水鞭ウィップ寄生鼠パラマウスに放ち、引き寄せられる反動を使って背中を突き刺した。


「キシャアアア!」


背中から緑色の体液が溢れる。体液が地面に落ちると草や地面が徐々に溶けて行く。

リントはすぐにバックステップで距離を取った。


(あの体液。当たるとやべぇな。。)


寄生鼠パラマウスにダメージは通ってるようだが瀕死ではない。

寄生鼠パラマウスはリントに向き直ると再び襲って来た。

すると何処からともなく寄生鼠パラマウスに向かって矢が飛んできた。

矢は寄生鼠パラマウスの目に命中。


「ギシャアアア!!」


深々と刺さった矢から体液が溢れ出す。寄生鼠パラマウスは矢を引っこ抜くと触手を伸ばした。

触手の向かう先を見ると逃げていたはずのティルダがいた。


「ティルダ!?」


触手がティルダを襲う。

リントはすぐさま水鞭ウィップをティルダの後方に放つ。


(間に合えぇーーーーー!)


触手はもの凄い勢いだったが、リントの方が若干早かった。


「キャッ」


リントはティルダを突き飛ばして触手から遠ざけた。

行き場を失った触手はそのままリントを絡め取る。


「クッ!」


リントは触手から抜け出そうと暴れたが幾重もある触手には意味を成さなかった。

触手から小さい針のような物が無数に生えてリントを突き刺す。


「ぐあぁぁ!」


針は養分を吸うようにリントの血を吸いこんでいく。


クピスはリントが危険と感じ取り、リントが落としていた黒鳴剣こくめいけんを拾い伸びている触手を叩き斬った。

ドサッ!っと血まみれになったリントが地面に落ちる。

クピスは回復ポーションを取り出しリントに振りかけた。

血は止まったが、傷口がまだ塞がっていない。


「・・・・クピス。ありがとう。助かった」

「りんと。へいき?」

「ああ。なんとか。。。」


リントはよろよろと立ち上がると水治癒キュアを唱えた。


「りんと。わたしがおとりに」

「え?・・・・分かった。。。無茶するなよ」


パーティを組み、黒鳴剣こくめいけんをリントに渡すとクピスは寄生鼠パラマウスに走っていった。


(あれ?鞘がない。)


寄生鼠パラマウスを見ると触手に鞘が掴まれていた。


(クソ!あんな所に!これじゃあ振動が起こせない)


「リント。すまん。妾のせいで。。。」


突き飛ばされたティルダが起き上がり、血まみれになったリントに謝る。


「・・・・ティルダは俺を助けてくれようとしたんだろ?ありがとな。。。。。それよりあの触手に掴まれてる鞘を射抜けるか?」


リントが真剣な目つきでティルダに問う。


「・・・・・理由は分からんが、やってみよう」


ティルダは弓を構える。


「クピス!退避しつつ攻撃旋律アタック頼む!」


触手を避けながら攻撃していたクピスに指示を出す。

クピスはバックステップしながらフルートを奏でる。


「ティルダ。俺があの鼠に飛びかかったら鞘を射抜いてくれ!」

「了解じゃ」


リントは水鞭ウィップ寄生鼠パラマウスに当てて突貫。


「今だ!!!」


ヒュッ!


予め狙いを定めておいた鞘に向かって矢を放つ。

触手に掴まれクネクネと動いている鞘に見事命中。


キイィィィン!


鞘が鳴く。


「闘気覚醒!」


リントは超振動している黒鳴剣こくめいけん寄生鼠パラマウスの腹に突き刺す。

溢れて来た体液はリントの体中に降り注ぎ皮膚を溶かしていく。

激痛が走る中、リントは構わず剣を振るった。


「うぉぉぉぉ!」


闘気覚醒が終わる5秒間の間、袈裟切り、右薙ぎ、切り上げ、逆袈裟、切り上げ、左薙ぎ、と無我夢中で斬りまくり、最後に全魔力を剣に込めて上から下に振り下ろした!

寄生鼠パラマウスは真っ二つ。触手も微動だにしなくなった。


「ハァハァハァ。。。」


ドサッ!



リントは気を失った。

★サーシャ先生の補足授業★

極稀に魔物の中に蟲が住んでいる事があるの。蟲が住み着く原因は未だに分かってないわ。

今回は運が悪かったわね。。。


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