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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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ダフィーネ・テイル

前回のあらすじ

ティルダはランルージ王国第一王女。

ダフィーネ・テイルだった。

ダフィーネは背中を撫でられて少し落ち着きを取り戻した。


「すん・・・リントよ。どうするつもりなのじゃ?」

「え!あ~。う~ん。そうだな・・・俺が先に強欲の塔を登りきるとかは?登りきったら神をも匹敵する力を手に入れるとか。そんで魔王をちゃちゃっと倒す」

「・・・・・さっき、なんで魔王を倒さないといけないんだ!?と言うてなかったか?」

「いや、登りきったら王様に俺が魔王を倒すんで娘さんをガイアスに渡すのはやめて欲しいとお願してみる」

「・・・・・登りきれるのか?」

「分からない・・・でもやってみせる」

「登ったら魔王を倒すのか?」

「いや、あくまで口実だよ。会ってみたいとは思うけどね」

「そうか・・・すまん。昨日今日会ったばかりのお主に無理難題を押し付けて」

「ティルダ・・・こういう時は”ありがとう”って言うんだよ」


リントの言葉にダフィーネはまた泣きそうになった。



宿に帰ると広間にマリー、キキ、ルル、クピスが待っていた。

ヴァンガードは寝てるみたいだ。


「ただいま」

「お帰りなさい・・・リント君。随分遅かったね?」


ルルの顔は笑っているが青筋が立っている。


「そ、そうかな?心配かけてごめん」

「何の話をしてたんだ?」

「えっと~」


キキに問い詰められリントはティルダの顔を見る。

ティルダはゆっくりと頷いた。


「あ~!何ですか今のアイコンタクト~」

「リント君・・・まさか何もしてないよね?」

「え?してない!してない!なーんもしてない!」

「うそ。だいてた」

「「「え!?抱いてた!?」」」


3人が驚愕の表情を浮かべる。

クピスはこっそりリントの目とリンクしていたのだ。


あー!その設定忘れてたーー!!今度からそういう時は左目つむろう・・・無理か。


「いやいやいや!語弊がある!語弊が!ちょっとここじゃアレだから部屋に行こう」



リントは後ろに殺気を感じながら部屋に向かった。


「で?どういう事だ?」


キキが般若の形相で問いただす。

リントは恐る恐る事の経緯を釈明した。



「王女様!?」「王女だと!?」「お姫さま~!?」


ふぅ。そっちに食いついてくれて助かった。


「うん。」

「何処かのお嬢様だとは思ってたけど・・・」

「あんなに高い指輪をポンッって出せるんだ・・・どうやら本当の事らしいな」

「ですね~・・・でもどうするんですか~?」

「取りあえず強欲の塔を登りきろうかと」

「リント君。勇者より先に登れるの?」

「え?う~ん・・・」


俺が10人いても無理ゲーだ。


リントが俯く。


「それならまだこちらに分があるやもしれんぞ?」

「どういう事ですか~?」


ティルダの話によると、勇者ガイアスは不死身のクセに自分の体が傷つくのを異常なまでに嫌うらしい。端的に言うと痛いのが嫌なのだ。リント達が強欲の塔で出会った時も奴隷に戦わせていた。愉楽もあるだろうが、単純に痛いのが嫌なんだろう。


「たしかに。でも最終的には女の子助けてたよ?」

「それは単純に登録料を取られるからじゃ。クエストで多少稼いでいるようじゃが奴隷を戦わせておる。稼げる額はたかがしれておるというもの」

「ふむ」

「それにな。奴隷の数もあやつが遊んだせいでもう少ない。国が隠そうとしてもあやつの悪評は徐々に奴隷の間で浸透していった。心優しいラクゼ辺境伯はあやつの動きに気づき奴隷を大量に買っていったし、志願奴隷は買い手が見つかるとすぐに飛びついた。どう考えてもあやつに連れて行かれるよりはマシじゃからの」

「なるほどね」

「あやつが本気を出す前に攻略すればまだ目はある」

「・・・・リント。この話受けるのか?」


キキが珍しく厳しい顔をしている。


「今まで50年間誰も登りきった事のない塔だぞ?勇者より先とか以前の問題じゃないか?」

「・・・・たしかに」

「私達が指輪を貰う条件はあくまで”匿う”だ。危険を冒してまでそんな事に挑戦する意味があるのか?」

「う・・・」


キキの言う通りだ。何も言えない。


「・・・・・すまない。責めるつもりはないんだ。ただ別の方法も考える必要はあると言ってるんだ」

「・・・ごめんね。リント君。キキはリント君が心配なだけなんだよ」

「・・・・いや、俺の方こそごめん。皆に何の相談もせずに勝手に決めちゃって。確かにティルダは助けたいけど無茶して皆を危険にはさらしたくはない。塔の攻略と同時に別の方法も考えてみるよ」

「そうですよリントさん~。リントさんがティルダティルダ言うからみんな妬いちゃってるんですよ~。そんなんじゃ、夢のハーレム露天風呂が夢に終わりますよ~?」


うぅ。それは困る。大問題だ。


「・・・・ハーレム露天風呂?なんじゃそれは?」

「あ。いや。その・・・」

「おふろ。みんなではいる」


クピスさん!?なんて事を!


「な、なんじゃと!?この痴れ者が!!」


秋の夜長。リントの頬に真っ赤な紅葉が出来た。



---次の日


ギルド証を見るとサーシャからメッセ―ジが届いていた。確認すると、”よさそうな物件があったら教えて”と書いてあった。

どうやら手配してくれるようだ。ちなみに指輪はリントが島に帰って来た時で良いらしい。


本当にサーシャさんには頭が上がらない。暇を見つけて帰らないとな。


サーシャさんには勇者の件は伏せてメッセージを返信した。

余計な心配はかけたくない。




リントはヴァンガードを起こして宿屋の広間に降りた。

下に降りて行くと皆はもう宿の外で街を見ながら何やら話している。

しかし1人だけ見慣れない女の子が混ざっている。


誰だろ?街で知り合った子かな?


リントから見ると後ろ姿なので顔が見えない。


淡い桃髪はルル、濃い蒼髪はキキ、艶やかな銀髪がクピス、綺麗な黒髪はマリー。1番右のあれは・・・アッシュカラーっていうのかな?ベージュのような髪色・・・誰だ?


おっさんを連れて宿を出る。



「あ!おはよう!リント君」

「おはよう」


ベージュの子がこちらを振り返る。


「遅いぞ!妾を待たせるとは何事じゃ」


聞き覚えのあるその声の子はどう見てもティルダだった。

腰まであった赤髪を肩まで切っている。左だけ小さい三つ編みをしていて可愛いらしい。

誰かに借りたのか白いワンピースを着ていて、喋らなければ何処かのふんわりお嬢様のような印象。


「あ。あれ?ティルダ?どうしたのその髪?」

「これか?・・・どうじゃ?この三つ編みなど美しすぎて言葉も出まい」


ティルダの話を聞くと変装の為にキキから貰った髪を染めるアイテムを使って髪をベージュ色に。

でもそれだけだと弱いので思い切って肩まで髪をバッサリ切ったらしい。


「マジで?・・・でもなんで?」

「妾の我がままでお主達に頼ってばかりはおれん。妾も戦う事にしたのじゃ」

「・・・ガチで?」

「・・・ガチじゃ」


こんな変装ではすぐバレてしまいそうだが、王国では秘密裏にティルダを捜索しているらしい。ティルダが逃げ出した事をおおやけにすると勇者に逆上されてしまう可能性もあるからだ。宿に隠れていた方がむしろ怪しい。いっその事冒険者になった方がカモフラージュ出来るとの事。

リントはティルダを止めたが、傲慢お嬢様は言う事を聞く訳もなくやむなく了承した。


「戦えるの?」

「妾を誰じゃと思うておる?」


ティルダの話によると、幼い頃から爺(元騎士団長)にあらゆる剣技と弓を教わっていたらしい。

魔物を倒した事はないが弓には自身があるとの事。


「と言う訳じゃ。早速冒険者ギルドに行くぞ」

「え?ギルド?そんな事したらすぐバレるんじゃ?」

「リントよ。ゴルタンにいる下々の者が妾の顔を知っておると?それに妾は髪も変えてフードも被る。ガイアスにも分からぬかも知れんぞ?」

「まぁ、そうかもしれないけど・・・」

「それにな。妾を探しておるのは極少数じゃ。妾がいなくなった事をおおやけには出来んからの?見つかりはせん」


何処からそんな自信が出て来るんだ?この王女様は・・・


「大丈夫ですよ~リントさん~。ゴルタンのギルドには私の知りあいがいるんで~。その人に登録を頼みますから~」


ティルダは黒のフード付きコートを被り、リント達はマリーに連れられて冒険者ギルドに着いた。


さすが都市のギルドだけあって大きい。ヴェネの2倍はありそうだ。

強欲の塔にはクールタイムがあるからか、ここにも冒険者が多数いた。


「あ!いたいた~!サラさん~」


マリーにサラと呼ばれた人物は30歳ぐらいだろうか。

緑色の髪に目がキリッとしてて鼻は高く唇がぷっくりしている。誰がどう見ても美人な人間。

ピシっとしたギルド職員の服を着ているため豊満な胸は隠せていない。


「え?マリーちゃん!?」


驚いた様子のサラ。それも無理もない。マリーはヴェネで働いていると思っていたからだ。

2人の話によるとサラはマリーが志願奴隷だった頃に、ランルージ王国でギルドの仕事を1から10まで教えてくれたお母さんみたいな存在らしい。サラが最近ゴルタンに転勤になった事はヴェネのギルドマスター。ロイズから聞いていた。


マリーはティルダの事は伏せてここまでの経緯をサラに説明した。


「良かったわね!マリーちゃん。雇い主が見つかったのね!富豪の息子にヒドイ目に合わされたって聞いた時は心配したのよ」

「はい~!自慢のご主人様です~。しかも永久雇用なんです~!ね?リントさん~」

「ど、どうも。初めましてリントです」

「・・・初めまして。ここのギルド長をしておりますサラと申します」


サラはテンプレートのような挨拶をし、リントを下から上まで舐めまわすように見たと思うとゆっくり顔を近づけて耳打ちをしてきた。


「おいてめぇ。いっぱい女連れてるみたいだがマリーちゃんに酷い事しやがったら・・・分かってるよな?」


一瞬聞き間違えたかと思った。でも違う。

顔は笑ってるけど目は笑ってない。


「は、はぃぃ!」


こ、怖いよこのお姉さん。

試しに言霊ことだまでサラのオーラを確認したら真っ赤だった。ちなみに好物はマリー。

なんでこんなに敵対心燃やされるんだよ・・・


「あれ~?なんの話ですか~?」

「お・と・な・の話よ・・・それより何か用事があるんでしょ?」

「え~?まぁいっか~。そこの女の子の冒険者登録をお願いしたいんです~」

「あら?そうなの?ちょっと待ってて」


そう言うとサラはギルドの奥に向かって行った。


「おいマリー。本当に大丈夫なのか?ティルダは偽名だぞ?」

「分かってますよ~。ギルド証は偽名でも大丈夫です~」

「え?マジで?」

「考えてみて下さい~。クピスちゃんだってリントさんが名前つけて、その名前を思い浮かべるだけで出来たでしょ~?」

「・・・・・まぁ、確かに」


そんな事を話しているとサラがギルド証を持って戻って来た。


「お待たせ。じゃあこれを持って自分の名前を浮かべてね」


サラがティルダにギルド証を渡す。


「うむ」


ティルダはギルド証を手に取り、自分の名前をティルダと思い浮かべた。

するとギルド証が輝き出し【ティルダ】と記載された。

リントはホッと胸をなでおろす。


「じゃあティルダさん。職業を選んでね」

「もう決まっておる」


ティルダはそのまま狩人と思い浮かべる。

するとギルド証が輝き出しギルド証に【狩人】と記載された。


「よし!早速向かうぞ!」

「え?何処に?」

「強欲の塔に決まっておろう?」


・・・・まだ武器も持ってないじゃん




ゴルタンでキャッキャウフフのまったりハーレム生活を謳歌しようと思っていたリントは、ドS王女のお陰でいつの間にかそれどころではなくなっていた。

★サーシャ先生の補足授業★

狩人は盗賊と弓使いの中間の職業よ。

自身の気配を消すパッシブスキル 隠身ハイドや鑑定スキルを阻害する隠蔽のレベルが上げれるのが特徴ね。覚えれる弓の武技は少ないけど、初級のトラップを仕掛けられるスキルを覚えれるわ。

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