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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第2章 強欲の塔 編
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人間の勇者

前回のあらすじ

塔で出会った男は人間の勇者だった。

「ああ。。。お主の話からして間違いない。。。」

「あ、あんな奴が勇者だってのか?」



ティルダの話によると今から約2ヶ月程前。

巫女から召喚された人間の勇者は召喚された瞬間に巫女を見ると、いきなり慰み者にしようと襲いかかった。

周囲にいた護衛達が召喚に失敗したと思い込んで勇者に槍を突き刺した。

噴き出した血は辺りを真っ赤に染めたが、勇者は死ななかった。



「え?槍刺されたのに死なないの?」

「・・・あやつは不死身なんじゃ。。。」

「え!?」

「HPのバーが∞になっておるらしい。妾も初め聞いた時は嘘だと思ったがな。。。」

「マジかよ。。。」



槍を刺された勇者は激怒し護衛達を皆殺し。

助けを求めて巫女は近くにあった冒険者ギルドに駆け込んだ。

巫女の後を追っていた勇者は冒険者達に拘束され王の前に連れ出された。

いくら不死身で勇者とはいえ、召喚されたばかりの彼は頑丈な枷をつけられどうにもならなかった。





---ランルージ城 謁見の間


「お前は・・・勇者なのか?」


声を発したのはランルージ王国の王。キュクレウス・テイル。

彼は真っ赤なマントを身に纏い腕を組みながら勇者を睨みつけた。

若々しくも威厳のあるその風格は如何にも王様といった感じの人だった。


「どうやらそうみいだね」


槍で刺された傷は既に完治していたが、裸の上に返り血で真っ赤になったその体はとても勇者の風貌とは思えない。


「名はなんと申す?」

「・・・ガイアス。神が勝手につけた名だ」

「ふむ。。。してガイアスよ。お前は勇者だ。魔王を倒すという使命を知っておるのか?」

「・・・そうらしいね。人の事を勝手に勇者にして魔王を倒せってどんだけ勝手な話なんだろうね」

「・・・どうして巫女様を襲った?」

「それは。。。。あの子が俺の好み。だったからだよぉぉぉ!」


ガイアスは急に豹変して叫んだ。


「そのぐらいいいだ。ろぉ!?何で僕は魔王を倒さないといけないん。だ!?勇者?知るもん。か!神が勝手に決めたん。だ!お前達も魔王を倒して欲しいなら女の1人や2人よこ。せ!」

「・・・・・聖なる巫女様をお前に渡す事は出来ん」

「ふざける。な!僕は命がけで魔王を倒すんだ。ぞ!?お前たちは魔王を倒す僕に何も感謝しないの。か!?そっちがその気なら僕は何もしてやらな。い!」

「・・・・・」


王はしばし沈黙した。

そんな王を見かねた大臣。ザンギ・ローゼスは王に耳打ちした。

王はしばらく考えこむと、口を開いた。


「・・・・・巫女様は渡せんが、奴隷なら好きに使っていい。」

「奴隷だ。と!?」


ガイアスは少し落ち着きを取り戻して言葉を紡ぐ。


「・・・良いだろう。魔王は倒してやる。でもその代わり僕の方にも条件がある」

「なんだ?」

「その隣に立っているお前の娘もよこせ!」


ガイアスが指さしたのは王の娘。ダフィーネ・テイル。

ダフィーネは枷をしている悍ましい勇者に指をさされ顔が真っ青になる。


「・・・お前のような者に娘を。。。」


王の顔つきが激情に変わり手を震わせて今にもガイアスに襲いかかりそうになる。

しかしこの時、大臣のザンギが王にまたも耳打ちした。

王はしばし考えこんでいたが、ようやく口を開いた。


「・・・・・・良かろう。しかしこちらも条件がある」

「ち、父上!?」


ダフィーネは驚愕した。まさか父が了承するとは思ってなかったのだ。


「ここランルージ大陸には強欲の塔というダンジョンがある。それを全て登りきったらダフィーネはお前にくれてやる」

「なんだそれは?なんで僕がそんな事をしなきゃならない?」

「お前が勇者で不死身と言っても今のお前が魔王を倒せるとは思えん。お前はまだ召喚されたばかりでレベルも低い。現に冒険者に捕まってるぐらいだ。魔王を倒せるかどうか分からんお前においそれと娘をやれると思うか?塔を登りきったら魔王を倒せる条件として認めてやる。」

「アハハハハハハ!良いだろう!気に入った!その条件飲んでやる!お姫様はあとのお楽しみって事でなぁ!!」


ガイアスはダフィーネを舐めまわす様に見入る。

ダフィーネはガイアスの忌々しい表情を見て、嫌悪で吐き気を催す。


「・・・・奴隷は好きに使って良いんだよなぁ!?」

「・・・・・好きにしろ」



こうして勇者ガイアスは強欲の塔を攻略する事になった。

しかしガイアスはすぐに強欲の塔に向かわず、奴隷という奴隷を弄び凌辱した。

男は危険なダンジョンに連れて行き、強い魔物と戦わせて遊んだ。

女も飽きたら魔物と戦わせて遊ぶ。

志願奴隷も犯罪奴隷も関係なくガイアスの気まぐれで多くの奴隷が死んでいった。




「許せねぇ。。。」


リントはその話を聞いて手を震わせる。


「王も許せねぇが、ガイアスはもっと許せねぇ!!」

「・・・王は民の為に苦渋の決断をしたんじゃ。勇者でないと魔王は倒す事は不可能に近い。。。」

「何が民の為だ!奴隷は民じゃないってのか!?ガイアスの気まぐれで何人死んだと思ってる!?そんなに勇者ってのは大事なのか!?そんなに魔王を倒さないといけないのか!?」

「・・・・・・しかたないのじゃ」

「何がしかたないんだ!魔王は何もしてこないんだろ!?どうして倒す必要がある!?このまま平和に過ごせばそれで良いじゃないか!!」

「それは・・・・・」


ティルダが俯き口をつむる。


「・・・・・ごめん。ティルダさんを責めるのは筋違いだったね。」

「・・・・・・・」

「・・・でもどうしてティルダさんがこの話を俺に?」

「・・・・妾がダフィーネじゃ」

「・・・・え?」

「妾がランルージ王国第一王女。ダフィーネ・テイルなのじゃ。。。」

「!!!」


リントの思考は一時停止した。


「・・・マジかよ!たしかにあんな高い指輪を持ってるからどっかのボンボンだとは思ってたけど。。。まさか王女様とは。。。でもどうしてゴルタンに?」

「・・・もう分かっておろう?あやつの慰み者にされるのが嫌で逃げ出したのじゃ。商人の隙を見て荷馬車に乗り込み隠れておったら、運悪くあやつがおるゴルタンに着いたという訳じゃ。。。笑えるであろう?」


王女は悲しみの笑顔でリントに微笑みかける。

その美しい微笑みにリントは不謹慎にも見惚れてしまう。


「民の為などと偉そうな事を言っておきながらこのザマじゃ。でもどうしても。どうしても。嫌だったのじゃ。。国の者に見つかった時はもう諦めてたんじゃ。そしたらお主が現れて。。。」


ダフィーネの瞳に大粒の涙が溢れだす。


(・・・この子も王女という肩書がなければただの女の子。王女に生まれてきたくて生まれたんじゃない。大人の都合であんな頭のおかしい奴に慰み者にされるなんて。。。)


リントはそっとダフィーネを抱きしめる。


「うぅ。。」

「よし!分かった!俺が何とかする!」

「当り前じゃ。。。馬鹿者。。。お主が。。。お主が妾の覚悟を挫いたのじゃ。。うぅ。。」

「ごめん。ごめんね。。。」


リントは泣き崩れるダフィーネの背中を泣き止むまで優しく撫でるのであった。

★サーシャ先生の補足授業★

ガイアスに付き従ってた女の子は恐らくガイアスに自我がなくなるまで凌辱されたのね。

首輪をしていないのはそのせいかもしれないわ。。。

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