欠落
前回のあらすじ
3人は光に包まれ塔の中へ
「ここは?塔の中か?」
光に包まれ3人は塔の中に転移した。
飛ばされた場所は小さな部屋で鉄の壁に囲まれており少し薄暗い。
塔の中と言うよりは迷宮の中といった感じだ。
ギルド証のマップを見ると、入り口が南西の方向にあった。
「どうやらランダムに飛ばされるみたいだな」
「じゃのぉ。取りあえず入り口の方向に行ってみようぞ」
入り口の方向へ歩いて行くと先ほどより少し広い部屋があった。
部屋の中にはゴブリンが1匹ポツンと立っていた。
◎タワーゴブリン◎ レベル3
そのゴブリンは島で見たゴブリンより少し青みがかっていた。
「塔仕様のゴブリンってところか。おっさん戦ってみて。レベル3だし」
「任せろ」
何故かいつも強気なヴァンガードがゴブリンに突撃する。
ゴブリンはヴァンガードの気配に気づき持っていたナイフで応戦。
ヴァンガードはナイフを盾で防ぎ、ランスでカウンター。ランスの直撃を受けたゴブリンは崩れ落ちた。
「どんなもんじゃい!」
「おお!おっさんが魔物倒したの初めてみた!」
「おー」
クピスも驚いている様子。
亡骸をドロップ化してみるとゴブリンの牙になった。
「あれ?魔石じゃないじゃん」
「もしかすると魔石もランダムかもしれんの」
その後も入り口の方に向かって歩いて行った。
途中1匹ずつ現れるタワーゴブリンを倒したが魔石は出なかった。
しばらく歩くと少し大きい部屋に出た。
「モンスターハウスっぽいな」
「この階なら余裕じゃろう」
中に入ると何もない空間から5つの光が湧きだし、光の中からタワーゴブリンが出現。
1番大きい光の中からハイゴブリンが出現した。
「魔物が湧くの初めてみた」
「やっぱり魔物は湧くんじゃのぉ」
◎タワーハイゴブリン◎ レベル7
「おっさんとクピスは雑魚を頼む」
リントは少し大きいハイゴブリンに駆け寄り瞬く間に斬りつけた。
ハイゴブリンは身動きも取れず崩れ落ちる。
2人も残りのゴブリンを余裕で倒す。
「まぁ1階だし。こんなもんかね」
ハイゴブリンをドロップ化してみると魔石LV1が出現した。
「おお!やっと出た!」
「おー」
「これいくらするんじゃ?」
「・・・・・分からん」
その後しばらく歩いて行くとまた大きい部屋があった。
よく見ると部屋の片隅に他の冒険者がいる。
「ん?あいつは・・・」
先程、受付カウンターで叫んでいた男だった。その傍らには2人の少女。
男は白いローブを身に纏い手には淡く輝く剣。
少女達は鎧を着ており手には斧と盾を持っていた。
部屋に光が湧きだしゴブリンが出現。
少女達は憶する事もなくゴブリンに突撃。
しかし、レベルが低いのか防戦一方でかなり苦戦している様子だった。
男は立ったままじっと見つめているだけで応戦する様子はない。
ふいに少女が倒されゴブリンのナイフが少女の顔をかすめた。
男は咄嗟に氷属性の魔法を放つ。
魔法はゴブリンの全身を凍結し、男が剣を振り下ろす。
ゴブリンは成す術もなく粉々に砕け散った。
その後なんとか少女達が応戦してゴブリンを掃討。
「ふぅ。ヒヤヒヤしたのぉ」
「見てられないな」
リント達は魔物泥棒だと思われないように手は出さずにいた。
こちらに気づいた男がふいにこちらに振り向いた。
「あ。君は昼間の」
「え?」
リントは驚いた。
確かにこちらは受付で叫んでいた男だから見覚えがあるが、こちらを知っているのはおかしい。
男は茶髪で歳はリントと同じぐらい。中肉中背の何処にでもいるような人間だった。
「驚いているようだね。僕もさっき君たちを見て驚いたんだ。君が美少女ばかり連れてるから」
(確かに他人から見たらそう見えるかも知れないな。。。おっさんもいるけど)
「あ。そうなんですね。」
「何処で手に入れたんだい?」
「手に入れた??いやいや、手に入れたとかじゃなくて仲間ですから」
「ふ~ん。仲間ねぇ。。。」
男は不適な笑みを浮かべ、クピスを凝視する。
「まぁそれでも羨ましい限りだ。僕にはこんな玩具しかなくてね。」
リントは男が振り向いた先の少女達に目をやる。
少女達はマリー達程ではないが整った顔立ちをしている。首輪は付いていないので奴隷ではない。しかし顔は無表情で死んだ魚のような目をしていた。
「玩具って。。。」
「玩具は玩具さ。もう飽きたんだけど。ね!」
そう言うと男は少女に蹴りを入れた。蹴り飛ばされた少女は何も言わず地面に転がる。
もう1人の少女は無表情のまま微動だにしない。
「な!?」
「だって!だってさぁ!?ゴブリン如きに苦戦しているんだよ!?夜じゃ役に立たないから昼に連れてきたらさぁ!このザマだ!僕の手を煩わせるんじゃない。よ!」
そういうと男はもう一人の少女を殴りつける。
殴られた少女は吹っ飛び地面に転がった。
普通ではない。行動がおかしい。考え方がおかしい。同じ人間とは思えない。
何故、少女達はこんな男に付き従っているのかも考えたくもなかった。
「・・・そうですか。じゃ俺達はこの辺で」
リントは作り笑いをしながらそそくさと男の横を通り過ぎて入り口の方へ向かった。
「そうかい?残念だよ。。。でも君とは気が合いそうだ。また会える日を楽しみにしているよ」
リント達は振り向かずに通り過ぎた。
(気が合いそうだって?冗談じゃない)
胸糞が悪い物を見たリント達は早々に塔を出る事にした。
マップを見ると幸いにも出口は目前だったので急いで出口に向かった。
出口には台座の上に水晶のような物が置いてあり、触れるとリント達は光に包まれた。
気がつくとゴルタンの街中に出た。そこは丁度リントがティルダと出会った路地裏であった。
「出るときもランダムみたいだな」
「じゃな」
「うん」
「なんか違う意味で疲れたから取り敢えず宿に帰ろう」
宿に帰ると広間でマリーが本を読んでいた。
「あ!お帰りなさい~!」
「ただいま。あれ?マリー1人?」
「ルルさんとキキさんはゴルタンを散策しに行きました~。マリーは商人の本を読んで勉強中なのです~。偉いでしょ~。えへへ~」
その屈託のない笑顔にリントは思わずマリーを抱きしめる。
「ふぇ!?どうしたんですか?リントさん」
マリーは驚きのあまり顔を真っ赤にした。
リントはギュッとマリーを抱きしめる。
少し経つとマリーが口を開いた。
「何か怖い事でもあったんですか~?」
抱きしめられたまま、マリーは背中をさすりながらリントに問う。
「あ!!ごめん!違うんだ。ちょっと嫌な事があって。マリーの笑顔を見たら。。。つい。。。」
「ふふふ~。どっちが年上か分かりませんね~」
リントは顔を真っ赤にしてマリーから離れる。
「ふぉふぉふぉ。マリー殿。許してやれ。ワシも久しぶりに胸糞悪い物を見たんじゃ。今夜は飲まんとやっとられんわい。」
「それはいつも」
クピスが的確なツッコミを入れた。
「じゃあ、ルルさんとキキさんが帰ってきたらその話聞かせて下さいね~」
「う、うん。。。」
あの男には二度と会いたくないと思いながらリントはルルとキキの帰りを待つのだった。
★サーシャ先生の補足授業★
魔石はレアドロップに値するわ。雑魚からでも低い確率で出る事はあるの。
でもLV1だと魔石が普及してるこの時代は1000リェンぐらいしか価値がないわ。




