共鳴剣
前回のあらすじ
リントはヴァンガードをすっかり忘れて、ルルとキキの店に向かった。
ルル&キキの店の前に着くと、いつものように客で溢れていた。
「あ!リント君!気が付いたんですね!!」
ルルがそう叫ぶと店にいた冒険者達が一斉にリントを見て駆け寄ってきた。
「おー!お前がリントか!鉱山跡地のボスを倒したらしいな!」
「詳しい話はルルちゃんから聞いたわよ!DランクなのにC級のボスを倒したんだってね!」
「なんでも、わずか1ヶ月でDランクになったそうじゃねぇか!どんなトリックを使ったんだ!?」
冒険者達はリントを囲み、一斉に話しかけてくる。
「ちょ、ちょっと待って!いつの間に俺はこんなに有名人になったんだ!?」
リントが慌てているとキキが店の奥から出て来た。
「フフフ。あの黒馬はC級のボスだったようだ。中級の冒険者達の間でC級のボスは鬼門らしいぞ。それを冒険者歴が浅いお前が倒したんだ。有名になるのも無理はない。」
「いや、倒したというか相打ちというか厳密に言うと俺は気絶してて。。。」
「まぁそんなに謙遜するな。お前がいなければ倒せなかったのは事実だ。」
「そうですよ!リント君!ルル達は弱った所をメッタ打ちにしただけです。」
「そ、そうなんだ。。。」
(なんかちょっと黒馬が可愛そうになってきた。)
騒ぎがひと段落して冒険者達は店から帰った。
「ハァ~。疲れた。。。ボスと戦った時より疲れたよ。」
「リント君。本当にお疲れ様でした。」
ルルがハーブティーを入れてくれた。
「それにしても、リント。今回はその。。。残念だったな。」
「ん?何が?」
「スピークだ!もう忘れたのか!?」
「あ。そう言えばいない。。。どこ行った?」
サーシャはクピスの存在をまだルルとキキに知らせていないようだ。
リントが辺りを見渡すと、入り口からこっちを見ているクピスがいた。
どうやらクピスは先ほどの冒険者達に圧倒され、隠れてしまったらしい。
「クピス。もう入って来ても大丈夫だぞ。」
「クピス?」
クピスはリントの言葉に頷き、店に入って来た。
「あら。すごい可愛い子。クピスさんって言うの?」
「うん。てかこの子がスピークなんだ。」
「「え??」」
ルルとキキは同時に耳を疑った。
リントは簡単に事の経緯を説明し、クピスは獣化してみせた。
「すごい!こんなの初めて見ました!」
「し、信じられない。。でも確かに片目の色が変わっている。。。」
ルルとキキは驚いてるようだ。無理もない。
「という訳で、俺の相棒は見事に生き返ったんだ。この事は内密にお願いね。」
「分かりました!それにしても生き返るなんて、愛の力ですね!」
「あ~。うん。まぁどちらかというと闇の力っぽいけどね。。。」
「それでも良いじゃないか。こうして元気にしてるんだ。」
「まぁね。」
「しかし、その。。。すごく可愛い子だな。。。」
「うん。でもキキもすごく可愛いよ。」
「な、何を!・・・・キキなんて。。その。。みんなより胸も小さいし。」
「小振りなのも俺は好きだよ。」
「な、おまっ。。。。もういい!!」
キキは何故か顔を真っ赤にして、店の奥に入って行った。
「え?なんで怒ったの?」
「リント君~。乙女心が分かってないですね。」
「俺、褒めたつもりだったんだけどなぁ。。。」
「ウフ。まぁ天然なところもリントさんの良いところですけどね。あ!ちなみにルルもリント君の事、大好きなんで!キキにもクピスにも負けるつもりはありません!」
リントは急にサラッと告白されて焦る。
「え!?あ、はい!頑張ります!」
「アハッ。何を頑張るんですか~?」
「え?いやその、俺も自分で何言ってるか分かりません。」
「ウフフ。本当におもしろい人ですね。。。あ!そう言えば鞘が完成したんでした!ちょっと待ってて下さい。」
そう言うと、ルルは店の奥から鞘を取って来た。
ルルが取ってきた鞘は白の下地に金色の龍の装飾があり、先端の方に赤の刻印で【ルル】と刻まれていた。
「カッコイイなぁ!これならいつも帯剣していたいよ。」
「気に入ってくれて良かったです。でもこれは、ただの鞘じゃないんです。」
「え?そうなの?」
「・・・・なんの為に白鳴石を探していると思ってたんですか?」
「カ・・・カッコイイから?」
「そんな訳ないでしょ~。。。ちょっと出掛けません?」
キキにクピスの装備を見繕ってもらう間に、近くの森に試し斬りに向かった。
「黒剣で近くの大きな木を斬りつけて下さい。」
リントは言われた通り、黒剣で胴回り5mはある大木を袈裟切りする。
剣は大木の半分まで刃を進めたが、そこで止まった。
「すごい切れ味だな。」
「ここからが本番です。同じぐらいの大きさの木に今度は鞘を叩きつけたあとで斬りつけてみて下さい。」
「え?鞘壊れない?」
「大丈夫です!白鳴石はオリハルコンの次の次ぐらいに硬いですから!」
(いまいち硬さが分からんけど、大丈夫ぽいな。)
ルルに言われた通り鞘を木に叩きつけてみた。
すると黒剣が微振動を始めた。柄を持つのに影響はないが、ものすごい速さで振動しているのが分かる。
「え!?これは?」
「今です!早く木を斬りつけて下さい。」
さっきと同じぐらいの大木に黒剣を斬りつけてみた。
大木はまるで稲穂でも刈っているいるように、サクっと真っ二つに割れた。
「おおー!スッゲー!!」
「ふっふふ~。どうです?これがその剣の真髄です!」
「マジすごいじゃん!なにこれ!?俺には全然トリックが分からん!!」
「それは、白鳴石に衝撃を加える事で近くの黒鳴石が共鳴する性質を利用し、黒鳴剣が高速振動を起こして威力を上げているんです!名付けて!共鳴剣!」
「なにそれー!俺の厨二心をくすぐり過ぎやーーん!」
「鞘でガードして、威力を増して攻撃!カッコイイでしょ?鞘の紐を手に引っ掛けて使えば、左手で水鞭も使用可能です!」
「ルルさん。あんた。あんた天才や。。。」
試し斬りを終えた後、クエストの清算をしにクピスを迎えて冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは昼過ぎだった為か、他の冒険者はいなかった。
ギルドの入り口に着くと、こちらに気づいたマリーがカウンターから飛び出して来た。
「リントさん~!!」
マリーは泣きながらリントに抱き着いてきた。
「リントさん。意識不明って聞いて、マリーはマリーは。。。えぐ。。。。うぅ。」
「ごめんな。心配かけて。もう大丈夫だから。。。よしよし。」
リントはしばらくマリーの背中をさすってやった。
「リントさん。マリーを買って下さい。もう心配したくないんです。一緒にいたいんです。」
「・・・・え?」
★サーシャ先生の補足授業★
共鳴剣はルルのオリジナル武器よ。
鞘に衝撃さえ与えれば剣と共鳴するわ。
さすが、伝説の鍛冶師の娘ね。




