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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
3/75

変わり者ですねー。

--次の日


リントは朝になって目を覚ました。


・・・ここは何処だ?見覚えがない。

あ!異世界か!


小さいボケをかまして下に降りる。

広間に着くと宿屋の従者に朝食を出して貰った。

朝食は小豆らしきものが入っているパンだった。

味は普通だった。美味くもないし不味くもない。まぁ冒険者の宿屋だからそんなもんか。

ご飯が出るだけありがたく思わないとな。


そんな事を考えながらリントはサーシャに冒険者ギルドの場所を教えて貰うと外に出掛けて行った。


外は昨日の静けさが嘘のように町が賑わっていた。

どうやらここは北のマシーナリー大陸と西のランルージ大陸の中間にある島で、貿易が盛んな港町みたいだ。町の名前はヴェネというらしい。


獣人にエルフにドワーフ。

色々な種族とすれ違い、改めてここは異世界だと痛感する。


「てか戦争の気配なんて全然ないじゃん!」


そんな独り言を言いながら俺は冒険者ギルドに向かった。



冒険者ギルドに着くと受付に人間の可愛らしい女の子が立っていた。年齢は14歳ぐらい。ショートカットで髪の色は黒。瞳も黒い。ここに来て初めて見る人間だ。良かったぁ。人間がいて。


「いらっしゃいませ~!リントさんですか~!?初めまして!私、ギルド職員のマリーといいます~。サーシャさんから記憶喪失の可愛そうな冴えない人間のメンズが来るとご連絡頂いておりました~!魔王の動きが活発になった今!冒険者大歓迎~!今なら登録料無料!初心者応援セットプレゼント!私が手取り足とり教えてあげますね~!!」


と元気いっぱいマシンガントークで話しかけてきた。

でも可愛いな。


「は、はい登録をお願いします。」

「わっかりました~!ではまずこのギルド証を手に持って、自分の名前を念じて下さい~!」


俺は言われるがままギルド証を手に持ち自分の名前を念じた。

そうするとギルド証が淡く光だし、俺の名前がギルド証に刻まれた。


「すごいなこれ!これが魔法というやつですか?」

「いえいえ~。今のは魔導器の光です~。そのギルド証は厳密に言うと魔導器なんですよ~。」


「魔導器?」


そう言えばシャイナがそんな事言ってたな。確かドワーフが作ってるとかなんとか。


「そうです~。これは100年ぐらい前にドワーフとエルフが力を合わせて作った叡智のかたまりなんです~!王国がまだなかった頃は仲が良かったみたいですよ~」

「やっぱり今は良くないのか・・・でもここの島民はみんな仲良さそうだけどな。昨日もエルフとドワーフに親切にしてもらったし」

「仲が悪いのはあくまで国単位の話ですよ~。みんな個人の価値観で動いていますし、この島はどの国の領地でもないですしね~。どちらかというとそういう種族差別とか嫌う人がここには集まってます~」


意外と良い場所に召喚してくれたんだな。

グッジョブおっさん。丘の上に召喚されたことは忘れてやる。


「では早速職業を決めちゃいましょ~。」


マリーがそういうと目の前にウィンドウが現れた。


「・・・・結構な種類があるな」


リントはウィンドウを眺めながら呟いた。


「人間は器用貧乏ですからね~。何でもなれますよ~。極めるのが難しいですけどね~。私のオススメはなぁんと言っても戦士!ステータスは主にHPと筋力がUPし、鍛え抜かれた肉体で敵をギッタンバッコンなぎたぉし、2次職は守護騎士や暗黒騎士といった男なら誰でも憧れるしょくぎょ・・・」

「僧侶で」


リントはマリーの話が終わる前にかぶせた。


「え?魔法使いでもなくて?」


マリーは目が点になっていた。


「うん。それより僧侶に種類が2種類あるんだけど、どう違うの?」


リントは淡々と話しかける。


「ムムム。リントさん~。そんな、か弱い女の子が選びそうな職業を・・・お姉さん、悲しい・・・」


誰がお姉さんだ。誰が。どう見ても年下だろ。


「・・・種類について教えてくれる?」


「分かりました~・・・では気をとり直して・・・光僧侶(ライトプリースト)は一言で言えば王道の僧侶です~。ステータスは主にMPと耐久がUPし光魔法が得意です~。アンデッドに強い付加効力を武器に与えたり仲間の耐久力を上げたり、聖回復(ヒール)によってHPを回復したりです~。魔法は光属性の中級まで扱えます~」


さすがギルド職員。ボケボケだけどこの辺の説明はしっかりしてる。


「次に水僧侶(アクアプリースト)は一言で言えば器用貧乏ですね~。ステータスは主に魔力と敏捷がUPして水魔法が得意ですー。敏捷を生かしながらデバフや地形変化を唱えて弱ったところを攻撃!がセオリーですね~。水治癒(キュア)によるHP回復も出来ます~。魔法は水属性の中級まで扱えます~」


器用貧乏か・・・良いね!


「なるほど。聖回復(ヒール)水治癒(キュア)はどう違うんだ?」

聖回復(ヒール)は即時にHPを回復しますけど、水治癒(キュア)は徐々に回復するって言った感じですね~。例えば聖回復(ヒール)は1秒で30回復するところを、水治癒(キュア)は15秒で30回復するといったところでしょうか~。それなので器用貧乏の水僧侶(アクアプリースト)はあまり人気がないのです~」


なんで人気ないんだろ?


「使いようによってはアリだとは思うんだけどなぁ」

「皆さんほとんどパーティーで冒険しますので、アタッカー、ディフェンダー、ヒーラーといったように役割分担をしっかりしています~。回復や補助魔法に特化した光僧侶(ライトプリースト)の方が断然人気ですよ~。戦闘中は徐々に~とか言ってられませんからね~」


そりゃそうか。でもここは


水僧侶(アクアプリースト)で」


「え?リントさん話聞いてました?パーティーに入れてくれないかもしれませんよ~?」


またもマリーの目が点になる。


「いやぁ、聞いてたよ。でもそれを踏まえても水僧侶(アクアプリースト)で。レアな職業の方がカッコいいじゃん」


俺は傾奇者だからな。


「母さん悲しい。こんな人の言うことを聞かない子に育ったなんて・・・」


誰が母さんだ。誰が。何歳の時に俺産んだ計算なんだよ!


「・・・早くしてもらっていいかな?」


リントは呆れながら言った。


「ムムム。では目を閉じて水僧侶(アクアプリースト)になった自分をイメージしてギルド証を持って下さい~」


なった自分をイメージってどうやるんだよ・・・。

まぁやるしかないか。


イメージを頑張ってしているとマリーが突然大きな声を発した。


「おお!全知全能の神よ!迷える子羊に新たな力を与えたまえーーーー!!」


そう言うとギルド証が輝きだして、俺の職業欄に水僧侶(アクアプリースト)の名が刻まれた。


「おー!これは凄いな!さすが叡智のかたまり!・・・てかそのセリフ。必要だったのか?」

「いえ!気分です!」

「あぁ。そぅ・・・」


冒険者登録だけでエライ疲れた。



手続きが終わるとリントは酒場に向っていた。

マリーの話によると冒険者は酒場に集まってパーティメンバーを探すらしいのだ。

しかしリントは落ち込んで帰る事になる。


水僧侶(アクアプリースト)だって?いらない。いらない」


と無骨なドワーフにあしらわれ。


「ごめんなさい。うちにはもう光僧侶(ライトプリースト)がいるの。アタッカーなら欲しいんだけど」


とエルフのお姉さんにお断りされ。


水僧侶(アクアプリースト)にレベル1じゃと?分け前なしなら考えてやってもいいぞ?ガハハ!」


とノームのおっさんにバカにされた。

世の中甘くない。


くそぉぉぉぉ!あいつらーーーー!絶対に見返してやる!土下座してパーティに入って下さーい!って言わせてやる!必ず!


リントが水僧侶(アクアプリースト)を選んだ最大の理由は世界に4人しかいないレアな存在の勇者になれなかったからである。せめて職業ぐらいはレアな職業に就きたかったのだ。


リントが項垂れていると後ろから聞き覚えのある声がした!


「リントさん~~~~!すいません~。これをお渡しするの忘れていました~~~~!」


マリーがもの凄い勢いで走ってくる。

息を切らしながらマリーは袋を取り出した。


「これは?」

「しょ、初心者応援セットです!ハァハァ」


中を見ると初心者の心得という本と回復ポーション5個とお金が入っていた。


「おお!ありがとう!ところでお金の単位とかも教えて貰っていいかな?記憶がなくてこれがどのくらいのものなのかもわからないんだ」

「まっかせて下さいー。この世界はリェンという通貨を使っていますー。例えばリントさんが宿泊している宿は食事付きで一泊500リェン。サーシャさんのところはギルド直営店の宿なので冒険者は半額になっています~。一般人は1000リェンするんですよ~?あ。ちなみにその袋に入っているお金は5000リェンです~!それで初級装備を整えてクエストに挑戦して下さい~!」

「ずいぶん冒険者優遇だな!」

「そりゃそうですよ~!魔物と戦うなんて普通の人はしませんから~。下手すると死にますしね~。冒険者はクエストという依頼を受けて、私たちを魔物から守ってくれる言わば守り神みたいなもんですからね~」


まぁ確かに。命をかける仕事だもんな。普通は冒険者なんてしないか。


「ところでリントさん。パーティには入れたんですか~?」

「それは聞かないでくれ・・・・」


その悲しげな瞳はいつも元気なマリーですらフォローのしようがなかった・・・

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