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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
27/75

おぱよう

前回のあらすじ

スピークが魔族かも。

レギオ王国城内地下。


獣騎士団長のシュバルツは間者の報告に動揺した。


「なに!あいつが魔獣を連れていただと?」

「はい。銀色の狼を連れておりました。」


(なぜだ?確かあいつは僧侶だったはずだ。転職でもしたのか?いやしかし。。。)


「あいつの素性は分かったのか?」

「いえ、何処から来たのかさえも分かりません。噂では船が座礁して記憶喪失だとか。」

「そんな奴がなぜ従属の首輪を持っている!?エレメンタルタクトも持っていたぞ!」

「分かりません。」

「この役立たずめ!」


シュバルツは間者に蹴りを入れ、胸倉を掴んだ。


「早く奴の正体を突き止めろ!我が国の脅威になりかねない!脅威になると判断したら殺せ!」

「・・・・・御意。」


(いったい何なのだあいつは?僕のイアンヌと話しただけでも腹立たしいのに。まさか・・・・。)


そんなやり取りを物陰から見ている人物がいた。

獣人族の勇者、イアンヌだ。


(リント君。。。。)




一方、その頃宿屋にて。

「魔族かもしれない?スピークが?」

「ええ。でも、気を落とさないで。私が何とかするから!」

「え?なんで気を落とすんですか?良いじゃないっすか魔族!カッコイイじゃん!な?スピーク!」

「バゥ!」


リントは何でもないように答える。


「リントは怖くないの?魔族は魔王に創造された生き物なのよ?」

「怖い?何でですか?スピークはスピークだし、魔族とか関係ないでしょ。神に創造された人だって悪い奴はいる。何が違うんですか?それにこの町は魔族とのハーフだっていっぱいいるじゃないですか。」

「そ、そうね。ごめんなさい。」


サーシャは少し寂しそうな顔をした。自分の好きだった人が魔王に殺されたのだから、魔族を畏怖するのは無理もないのかもしれない。しかしリントは博愛主義者だ。話合える相手ならば、話合いで全てを解決したいと思っている。魔物にですらそうしようとしているのだ。もちろん自分や仲間に危害を加えようとする者には容赦はしないが。


「あ。すいません。。。先生。何か偉そうな事言って。」


リントはサーシャの好きだった人が魔王に殺された事を思いだしていた。


「ううん。あなたの言う通りよ。この子はこの子だものね。」


サーシャは微かに思い出していた。初めて魔王と対峙した時、魔王はこちらに向かって何かを言いかけた。それを無視して問答無用で魔王に向かって行った勇者の事を。


「でしょ?こんな可愛い奴なんだから魔族でも何でもいいでしょ。」

「ワン!」

「フフ。そうね。こんなに可愛いんだから何でも良いわね。」


笑顔を取り戻したサーシャはスピークをモフモフした。


「ところで先生、なんでスピークが魔族と思ったんですか?」

「この子が、どの魔物図鑑にも載っていなかったからもしかしたらと思って魔族の本を読んでみたの。そしたらあったわ。これを見て。」


サーシャは魔族の本を取りだした。


魔人狼ウェアヴォルフ

魔族の中でも非常に稀な存在。

赤い目は昼夜を厭わず、性格は残忍かつ狡猾。足が速く戦闘力が非常に高い。

獲物を殺し、月下で吠えるその銀色は見惚れる程に美しい。


「残忍かつ狡猾って。。。」

「クゥン。」

「まぁ そんなの個体差あるしね。でもそれ以外は完全にスピークに当てはまっていますね。」


(スピークの目は赤い、毛も銀色だ。名前も狼って付いてるし間違いない。魔族だから言霊ことだま

通じたのか?)


「スピークが魔族って他の人に気づかれますかね?」

「う~ん。知っている人は知ってると思うけど魔物の種類なんて腐るほどいるから、まず大丈夫だと思うわ。」

「ですよね。。。あ!先生!魔族の勉強したいんでこの本借りていいですか!?」

「え、ええ。いいわよ。」


サーシャはリントが突然声を荒げたので驚いた。



そしてリントは魔族の本を部屋に持って行き、こっそりと淫魔のページを読んでいた。


淫魔サキュバス

蝙蝠のような羽を背中に生やし雄と雌どちらも美形。

人の寝床に現れ、淫魔法で魅了し生気を吸い取る。

生気を吸い取る理由は食事ではなく、魔力を高めるためと言われている。

ベッドの上でミイラになって発見される死体は淫魔サキュバスの仕業だ。


(フムフム。って俺は中学生かよ!)


自分にツッコミを入れてリントは寝た。



次の日リント達はルル&キキの店に向かった。

店先にCLOSEと書いてある。今日は休日のようだった。

リントが扉を開けると、キキがいた。


「待ってたぞ。リント。」

「あ、ごめん。今日休みだったの?」

「気にするな。それよりも出来たぞ。」


キキが取り出したのは従属の首輪に瓜二つの金の首輪だった。


「すげぇ!完璧じゃん!」

「それだけじゃないぞ。」


キキはスピークの首輪を付け替えた。


「スピーク。首輪に少し魔力を込めてみろ。」

「え?魔力?スピーク。出来るか?」

「ワン!」


(言葉も理解しているし、出来そうと言えば出来そうだな。魔族だし。)


スピークは首輪に魔力を込めた。

するとスピークの首輪がパチパチと音を鳴らし、紫色の光が走った。


「おお!何これ?雷?スピーク。平気なのか?」

「ワン!」


どうやら大丈夫そうだ。


「琥珀は雷の属性を微量に含んでいるんだ。魔力を込めたら雷が出せるように調整してみた。もっと魔力を込めると強力な雷を纏う事が出来るぞ。」

「さすがキキ!依頼品に付加価値まで付けるなんて!」


リントはキキの手を握り上下に揺らした。キキは少し顔を赤らめた。


「こ、琥珀がかなりあったからな。これでも何度かは失敗したんだ。」

「それでもこれはすごい!ありがとう!」

「バゥ!」


そんなやりとりをしているとルルが奥の部屋から出て来た。


「ふぁ。リントくん来てたんれすね。」


ルルはキャミソールのような寝間着姿で現れた。どうやら寝起きらしい。

思ってたより大きな胸がキャミソール越しにくっきり見える。


「お、おぱよう。ルル。」

「おぱよ?」

「おはよう!ルル!」


リントはキキから殺気を感じたが、気のせいだと自分に言い聞かせた。


「ごめんね。朝早くからお邪魔しちゃって。今日は休みだったんだよね?」

「良いんれすよ。今日は品物が不足してきたから店はお休みにして、採集に行こうと思ってたんれす。ふぁぁ。」


ルルは目をこすりながら言った。まだ寝起きのようだ。


「ルル。リントにあれを渡さなくていいのか?」

「あ!そうだった!リント君。ちょっと待ってて下さいね。」


目を覚ましたルルは奥の部屋に走って行った。


「あれを作って昨日徹夜したのに忘れてるとはな。」

「ハハ。ルルらしいね。」


ルルが奥から戻ってくると、剣の柄に銀色で【ルル】と刻印が入っている綺麗な黒剣を持って来た。


「リント君。剣折れちゃったんでしょ?これ使ってみて下さい。」

「え!?良いの?めっちゃカッコイイじゃんこれ!軽いし!」

「気にいってくれて良かったです。黒鳴石こくめいせきを使ってるんで、軽くて硬度が高いんです。でもそれはまだ完成品じゃないんです。」

「そうなの?完成品に見えるけど。。。」

「鞘を作って初めて完成します。」

「鞘?」


この世界の冒険者は帯剣をあまりしない。剣はギルド証からすぐに取り出せるので鞘は必要ないのだ。


「そう。鞘です。でも鞘を作る材料がないんです。」

「・・・なるほど。その材料は何処にあるの?」


この時、リントは鍛治師のこだわりか何かで鞘がいる程度にしか思ってなかった。


「ここから徒歩1時間ぐらい西の鉱山跡地にあるみたいです。でもかなり希少らしいので見つけるのが難しいそうなんです。」

「そっか。でも俺、行ってみるよ。ルルの完成品を見てみたいし。」

「リント君ならそう言ってくれると思いました!ルルとキキもアイテムの採集に行こうと思ってたので、一緒に行きましょ。」

「もちろん!ギルドで何かクエストがないか見てみよう。あと、ドロップ品は全部あげるよ。貰ってばっかりでさすがに悪いから。」

「分かりました。その代わり材料が見つかったら鞘を一生懸命作りますね!」


リント達は出発の準備をして、冒険者ギルドに向かった。

★サーシャ先生の補足授業★

淫魔法は淫魔サキュバス以外でも覚えられるわ。

でも、ギルド証では覚えれないの。

覚えたいなら使える人に教えて貰うしかないわね。

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