漢の戦い
前回のあらすじ
琥珀を掘ってるとリザードマンが現れた
リザードマンはこちらの様子を伺っているようだった。
リントは仲間になるようにイメージしながら言霊を放った。
オーラの色は赤。好物は××××
(好物が分からない?こんなの初めてだ。・・・・・俺が知らない物は分からない。とか?)
リントが考察しているとリザードマンがスピーク目掛けて襲ってきた。
スピークは剣を躱し腕に噛みついた。しかしリザードマンは手でスピークを掴み投げ飛ばし、スピークは壁に直撃した。
(やっぱりダメか。仲間にするには何か条件があるんだな。)
「スピーク!大丈夫か?」
「ワン!」
(大丈夫そうだな。)
リントは剣を構え、リザードマンに斬りかかる。
ガキィン!
剣と剣が交え金属音を鳴らす。
何度か打ち合っている内にリントは押されていた。
(強い!速さはそこまでじゃないけど、一撃が重い。)
キン!
(しまった!)
リントの剣がリザードマンの一撃で折れた。リントはすかさずバックステップ。
スピークは主人が劣勢とみると、リザードマンの尻尾に噛みついた。
リザードマンはたまらず、体を揺さぶりスピークを振り落とそうと暴れた。しかしスピークは噛みついたまま離れない。
リントはエレメンタルタクトを取り出し、衝撃波のスペルを書き始める。
「スピーク!離れろ!」
リントがそう言った瞬間スピークは噛みついている尻尾を離し、距離を取る。
スピークが離れた刹那、衝撃波を展開。リザードマンに当たり、壁に吹っ飛んだ。
「水鞭!」
壁に当たってよろけているリザードマン目掛けて放った。反動を利用し、勢いよくエレメンタルタクトで頭目掛けて突き刺した。
リザードマンは血しぶきを上げ崩れ落ちた。
「ハァハァ。スピーク。帰ろう。」
リントは悪寒がしていた。
もしリザードマンが1匹じゃなかったらと思うと背筋がゾッとした。
1匹でもスピークがいなかったら危なかっただろう。
リントは十字を切り、亡骸をドロップ化して早々に鍾乳洞を出た。
リント達は町に帰り、ルル&キキの店に向かった。
「ただいま~。」
「帰ったか。その様子だと見つけたみたいだな。」
キキがリントに微笑みかける。ルルは他の冒険者の接客中だ。
「うん。これだよね?」
リントはギルド証から琥珀を取り出し、キキに見せた。
「こんなに!?そんなに奥まで採りに行ったのか?」
リントが取り出した琥珀は10㎏ぐらいあったのでキキは驚いた。
「いや、どうなんだろ?ここまで行かないとなかったんだ。」
「そうか。手前のは他の冒険者が掘った後だったのかもしれないな。」
「そうかもね。てかリザードマンが出て来てやばかったわ。剣も折れちゃったし。」
「リザードマン!?あそこの鍾乳洞にはいないはずなんだが。。。すまなかった。」
キキは申訳なさそうに言った。
「いやいや、そんなの分からないんだからしょうがないよ。こうして無事だったんだし。」
「すまない。後でギルドに報告しておく。」
「そうだね。。。琥珀はこれだけあれば足りる?」
「充分過ぎる程だ。これで首輪を作ってもお釣りが来る。」
「そっか。。。残りは全部あげるよ。いつもお世話になってるし。」
「いいのか?それは有り難いが。。。後でルルに相談してみる。また明日来てくれ。」
「分かった。また明日ね。」
リントはキキに手を振り、店を出て宿に向かった。
宿に着くとサーシャは相変わらず眼鏡をかけて魔物図鑑を見ていた。
「あら、お帰りなさい。今日は早かったのね。」
「ちょっと汗かいたんで、シャワー浴びようと思って。」
「そうだったの。。。これからまた出掛けるの?」
「そうですね。ちょっと酒場に行って情報収集しようと思ってます。」
「外に出ないならちょっとその子を借りていいかしら?本人がいた方が本と見比べれるから。」
「いいですよ。な?スピーク。」
「ワン!」
リントはスピークをサーシャに預け、酒場に向かった。
「エマさん。こんにちは。」
「いらっしゃい。何か飲むかい?」
「じゃあ、コーヒーで。」
「コーヒー頼むなんてあんたも立派になったねぇ。」
リントが初めて酒場に来たとき、この世界にコーヒーがある事には驚いた。
しかし、値段が高いので一般人にはあまり普及していない。
貴族や王族がたしなむ高級品らしい。
リントがコーヒーを飲みながらエマと雑談をしていると、後ろから男の怒号が聞こえた。
「なんだと!!俺様がマリーちゃんを買うんだ!!!」
「ハッ。笑わせてくれる。貴様のような下衆な輩に買われる事をマリーが承諾するとでも?どうせ断られたんだろう?」
リントが振り向くと、筋肉ムキムキのドワーフとイケメンエルフが言い争っていた。
「この野郎!!そういうお前はマリーちゃんに承諾されたのか!?奴隷協会の奴が、マリーちゃんは誰も承諾してないって言ってたぞ!!」
「これだから下衆は困る。マリーは僕の申し出に恥ずかしがっているだけだ。そんな事も分からないのか?」
どうやらマリーを巡って争っているらしい。二人とも断られたみたいだが。
「あの二人は?」
「あのドワーフは、ムキムキだけど戦闘がからっきしダメなドリノ。あのエルフは最近この島に来たギリアンさ。前、パーティー募集してたろ?」
(・・・・あいつがギリアンか。イケメンだけど性格悪そうだな~。あいつのパーティーに応募しなくて良かった。。。)
「このクソエルフ!ぶっ殺してやる!表に出ろ!」
「君が僕に勝てるとでも?良いだろう。後悔させてやる。」
二人が酒場から出ようとした時エマが叫んだ。
「あんた達ちょっと待ちな!決闘は公的に定められている場所でしか禁止だよ!外でやり合おうってんなら衛兵を呼ぶよ!」
二人はエマの怒号に固まった。
「それにそんな事をしてマリーが喜ぶと思ってるのかい!?どっちが死にでもしたら、マリーが悲しむのは分かってるだろう!?」
二人は茫然としていたが、先にドリノが口を開いた。
「悪かったよ婆さん。婆さんの言う通りだ。だから衛兵は勘弁してくれ。」
「お婆さん。僕も取り乱してすまない。ついマリーの事になると我を忘れてしまうんだ。」
「誰が婆さんだい!!あたしゃまだ42歳だよ!!!!」
酒場の騒ぎは終わり、リントは宿に向かっていた。
(マリーはよっぽど人気があるんだなぁ。めっちゃ可愛いし、愛嬌もあるし、そりゃそうか。俺も・・・・断られたみたいなもんだしな。)
リントはマリーを買うのは半分諦めていた。お金に余裕が出来たらと思っていたが、承諾してくれない事には買えない。前に一度言ってみたのだが、誤魔化されたと思ってしまっている。マリーとの関係性を壊したくないので、買う事は言わない事にしていた。
リントがそんな事を考えながら宿屋の前に着くとスピークが飛びかかってきた。
「バゥ!」
リントは体制を崩し、仰向けになった。
「ハハ。どうしたんだ?寂しかったのか?」
スピークがリントの顔を舐めまわす。
「ちょ。。。アハ。。。どっせぇぇい!」
スピークが宙を舞う。クルリと回って無事着地。
「だから舌を入れてくるなって。。。」
サーシャがそんなやり取りと見ながら宿から出て来た。
「リント。すぐに私の部屋に来て。」
サーシャは真剣な眼差しで言った。
「あ、はい。」
リントは何事かと思いながらサーシャの部屋に向かった。
「リント。驚かないで聞いてね。。。」
「は、はい。え?なんですか?何か怖いんですけど。」
「その子、もしかしたら魔族かもしれないの。」
「・・・・・・え?」
★サーシャ先生の補足授業★
決闘は公的な場所でしか認められていないの。
決闘以外での、私的な理由で人を殺せば罪人奴隷にされる事もあるわ。
ヴェネの町には小さいけど、一応決闘場があるの。




