銀色
前回のあらすじ
リントが眠りにつくと光の女神シャイナが現れた。
光を司る女神・シャイナは問いかけに応じた。
「お久しぶりです。リント様」
シャイナが微笑みかける。
「俺が転生して1ヶ月ぐらいか・・・ここは、夢の中なのか?」
「はい。リント様の夢にお邪魔させてもらっています」
さすが女神。なんでもありだな。
「はい。と言っても万能ではありません」
心を読まれた!?
「少し違いますね。リント様の夢の中なので、思っている事はそのまま私に伝わります」
「なるほど。俺が思ってる事は隠せないって訳だな。まぁ 隠す事なんかないけど」
リントは何故かドヤ顔でシャイナにそう言った。
「今日はどうしたんだ?まさか勇者が死んだから代わりに勇者になってー!とかじゃないよな?」
「ウフフ。違いますよ。勇者はそれぞれ順調に育っているみたいですよ」
「じゃあ言霊のスキルはもういらねーだろ?返せーとか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
シャイナは真剣な顔をして黙り込む。
「え!?マジで!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
シャイナは何も答えない。
「・・・いやいやいや!今更それはないでしょうよ!なんだかんだ気に入ってるんだからこのスキル!」
「・・・・・ウフフ。冗談ですよ。」
・・・女神の冗談笑えねぇ。
「そうですか?とっても面白かったんですが」
シャイナは屈託のない笑顔で笑っている。
「フフ。今日は、その言霊の件で来たんです」
「そ、そうなの?まぁいいや。聞きたかった事たくさんあるし」
リントは一呼吸おいて尋ねた。
「・・・・言霊のレベルが上がって好物が分かるとかどうでもいい事が分かるようになったんだけど、何あれ?ウケ狙い?」
シャイナは少し困ったような顔をした。
「・・・言霊はリント様が思ったように進化するスキルなのです」
「俺は使った相手の好物が知りたいと思ってたって事?」
「はい。そのようですね」
「うそーん・・・あー。でもマリーは好きな人いるのかなーとか思ってたかもしれん」
「おそらく心の中で強くそう思っていたのでしょう。」
「ふーん・・・じゃあ、俺が強くなりたいと心の中で本気で思えば戦闘でスゲー役立つスキルになるかもしれないって事?」
「そうですね。どのような形になるかは分かりませんが・・・」
「そういう事は早く教えてよ。何回も死にかけたんですけど・・・」
「ごめんなさい。でもリント様が心から強くなりたいと思っていたら、違った形になっていたはずです」
「まぁ そりゃそうなんだけどね。でも本当に心の中で思うって難しいな。自分には嘘つけないからな」
「はい。いくら他人は欺けても自分には嘘はつけません」
「まぁいいや。言霊の事について詳しく教えてよ」
「リント様は今まで、相手に何かを伝えようとして言霊を使った事がありましたか?」
「うーん・・・・・そういえばないかも。オーラを見る為にしか使った事ないわ」
「オーラはオマケみたいなものです。言霊は放った相手と意思疎通する事が本来のスキル能力なのです」
「うん・・・・全然ピンと来ないんですけど」
「例えば・・・今日、森で銀狼に言霊を使いましたね?その銀狼に対してリント様は意志疎通する事が出来ました。それが本来の使い方なのです」
「分かったような分からんような。でもあの状況だと言霊なくても意志疎通は出来たんじゃないの?」
「そうですね。もしかしたら出来たのかもしれません。しかしあの銀狼があそこまであなたになつく事はなかったと思いますよ」
「なついてた?」
「それはすぐに分かります」
「どゆこと?」
シャイナに問いかけると、シャイナは何かの気配を察知したように辺りを見渡した。
「!・・・・ごめんなさい。もう時間が無くなってしまいました」
「え!?早すぎ!!10分も経ってないじゃん!ちょ!まっ」
突然部屋の中が光に包まれ俺は意識を失った。
--次の日
「うぉぉぉい!」
リントは飛び起きた。周りを見て夢から覚めた事に気づく。
くそ~。シャイナが全然笑えない冗談かますから時間無くなったんじゃん・・・。
リントはサーシャに朝の挨拶を済ませると防具の修理の為にルル&キキの店に向かった。
店は今日も繁盛しているようだ。
「いらっしゃいませー。あ!リント君」
「忙しそうだね」
「キキが対応してるから大丈夫ですよ。今日はどうしたんですか?」
リントは言いづらそうに言った。
「実はこれなんだ。」
リントはギルド証から左肩が損傷した赤い軽鎧を取り出す。
「ごめん。昨日もらったばっかりなのに壊しちゃった」
「いえいえ。傷つくのが防具の役目ですから。使ってくれて嬉しいです!」
「本当ごめんね。でもこれのおかげで助かったよ」
「それは良かったです。でもあんまり無茶はしないで下さいね」
「うん。俺も無理はやめようと思ったよ・・・これいくらぐらいで直りそう?」
「お代はいりませんよ。こんなのすぐ直せますから」
「いやいや。さすがにそれは」
「うーん・・・じゃあ、お代の代わりに西の森に生えているキャロルを10本ぐらい取ってきてもらっていいですか?キキの大好物なんです」
「キャロル?」
「知らないんですか?森に生えている野菜ですよ?リント君も食べた事があると思います」
マジか。そういやこっちの世界に来て野菜とか何も考えずに食べてたけど名前とか何も知らなかったな。
「ここら辺に生えてるはずです」
ルルはギルド証を取り出し俺にマップを見せてくれた。
「こんなとこに生えてるんだ?全然気づかなかった」
「クエスト中に下を見て歩かないですからね。分からなくて当り前ですよ」
まぁ~野菜が生えてるとは思わないわな。薬草ぐらいなら探した事あるけど。
俺は防具をルルに預け森に出掛けた。
キャロルが生えている場所は昨日行った森の中層の手前ぐらいだった。
ここら辺はゴブリンしかいないから防具がなくても大丈夫かな。
お!あったあった。
木の根元にそれらしき葉っぱが生えているのが分かった。
引っこ抜いてみる。
「・・・・・ただの大きい黄色のニンジンだな。ちょっとワクワクしてたのに」
10本ぐらい引っこ抜いた時ふいに叫び声が聞こえた。
「ワォーン!」
振り向くとそこには昨日、助けた銀狼がいた。
「あ~びっくりしたぁ。ブラッディウルフかと思ったよ。あ。お前もブラッディウルフか。こんなとこで何してんだ?また仲間外れにされたか?」
「バウッ!」
銀狼はいきなり飛びついてきて顔をペロペロ舐めだした。
「ハハッ。ちょ。。やめ。ハハハ」
リントと再会したのがよほど嬉しかったのか尻尾を振りながらリントを舐める。
「ちょ!分かった!分かったから!」
銀狼はそれでも辞めない。舐めまわす。
何故か舌を口に入れてきた。
「やめ・・・どっせぇぇい!」
俺は銀狼を掴み投げ飛ばした!
銀狼は宙を舞ったが一回転して無事着地。
「ハァハァ。舐めすぎだろ・・・顔がデロンデロンじゃん。俺は男に顔を舐めまわされる趣味はないぞ」
いや男なのか?いや雄か。
「昨日の今日なのにすっかり元気になりやがって」
「バゥ!」
「狼ってワンって鳴くんじゃないっけ?」
「ワン!」
「そっちも出来んのかよ。使い分けがよく分からん。てか俺の言葉理解してる??まぁいいや。キャロットも手に入れたし俺はそろそろ帰るよ。元気でな」
「クゥーン」
銀狼は寂しそうな鳴き声を上げた。
しかしリントは拳を握りしめて町に向かった。
街道をしばらく進んでいると後ろに気配を感じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり付いて来てるな。付いてくるかなぁ?とか思ってたけど付いて来てるな完全にこれは。うん。
「・・・・・大好きだー!」
俺は振り向き銀狼を抱きしめた。
「一瞬付いて来てないと思って泣きそうになってたぜこの野郎!俺と一緒に行こう!よしよし。可愛い奴め」
銀狼は尻尾を振りリントの顔をペロペロ舐めた。
「ハハ!ちょ・・・どっっせぇぇい!」
また銀狼は宙を舞う。しかしクルっと回転し無事着地。
「舌を入れるのはマジヤメテ・・・」
★サーシャ先生の補足授業★
キャロルはこの世界でとってもポピュラーな野菜よ。甘味があって歯ごたえがあるの。
森の大きな木の下に生えてる事が多いわ。




