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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
17/75

ツンデレラ姫

前回のあらすじ

おっさんがパーティーに加わった。

4人は街道を歩いて、山の麓の森に着いた。

街道は比較的安全なので魔物には出会わなかった。


「ここからは魔物が出る。油断するな」


キキが警戒を促す。


しばらく森の中を進むとコボルトが6匹程遠目に見えた。コボルトはゴブリンより小さいが、群れている数が多いので油断は出来ない。

リントがオーラを確認しようと言霊ことだまを放とうとした瞬間。


「儂が蹴散らしてくれる!ふぉぉぉぉ!」


ヴァンガードが大盾とランスを持って突っ込んだ。


おー!おっさん!カッコイイじゃん!


ヴァンガードは勢いよく群れに向かったが、群れの正面で止まった。


ん?止まった?


「ヘイト!」


ヴァンガードがそう叫ぶとコボルトが一斉にヴァンガードに飛びかかった!

ヴァンガードは大盾を使いコボルト達の猛ラッシュを受けている!


ヘイトってスゲーな!コボルトがおっさんしか見えてないみたいだ。


「リ、リントー!何をしておる!は、早く助けんかぁ!」


え?儂が蹴散らすんじゃないのかよ・・・ランス使えよ。ランス。


ヴァンガードは防御するのに精いっぱいでとても攻撃出来そうにない。

リントはヴァンガードを助けようと剣を取り出した。


すると、いつの間にかルルが猛ラッシュをしているコボルトの背後に立っていた。

コボルトはヘイトの効果でヴァンガードしか見えてない。


ルルいつの間に?ん?なんかでっかいハンマー持ってない?


ルルは直径110cmぐらいの大きな両手ハンマーを持っていた。ヴァンガードの大盾と同じぐらい大きい。

リントはてっきり魔法の小槌を使う片翼のプリティな魔女っ子を想像していたのだが、どうやら違うらしい。


ルルは走りながら両手ハンマーを振りかざし、コボルトの背後からダルマおとしのようにハンマーを横に振る!


「どりゃぁーーー!」


美少女とは思えない声を出し、ハンマーは大盾にクリーンヒット!ハンマーと大盾に挟まれた4匹のコボルトはペッチャンコ。ヴァンガードは大盾ごと吹っ飛び宙を舞う・・・。


「ふおぉぉー!」


ヴァンガードが宙を舞いながら悲痛な声をあげている。


・・・おっさん。俺はおっさんの勇姿を忘れない。おっさんの命は無駄にしない。グッジョブおっさん。バイバイおっさん。また会う日まで。



「うん。練習通りだな」


キキがつぶやく。


うそーん。怖い。怖いよこの双子・・・。


リントは変な練習に巻き込まれたくなかったので、素早く残りのコボルトを斬り伏せた。



水治癒キュア


リントは気絶しているヴァンガードに回復魔法をかけた。


「すごいですね。リント君。回復魔法使えるんですね!」


ルルは先ほどの事を何とも思ってないように目を輝かせている。


「まぁ一応僧侶ですからね・・・」

「助かる。キキのポーションを使わなくて済む。」


先程のルルとおっさんの連携攻撃については何も言わなかった。怖いので。


まぁ、おっさんが吹っ飛ぶだけだし別に良いか・・・。


4人はそんなこんなで、魔物を倒しながら山の麓の洞窟に着いた。

洞窟の中は天井の至るところに穴が空いており、太陽の光が差し込んでいた為、歩くのに苦労はしなかった。


「ここからはオークが出るらしい。気を引き締めろ!」


オーク・・・身長約2m。知能はゴブリンやコボルトより高く力も強い。全身緑色で顔は豚のようで醜い。

人を攫うこともあり、メスならどの種族でも構わず繁殖しようとする。



「オークが出ても、儂のランスで一突きじゃ。安心せい」


うん。無視しよう。


「そういえば、もう1組のパーティーは俺らより先に出発したのかな?全然会わないけど」

「それは分からんが、違うルートで行ったのかもしれないな。ルル。知っているか?」

「ルルがギルドでクエスト受けた時は、ギリアンさんはもう受けたあとって言ってたよ」

「そっかぁ。急がなくても大丈夫なんですか?」

「う~ん。今日の夜までに山頂に着けば大丈夫だと思いますよ」

「無理して死んだら元も子もないからの」


おっさんの戦い方が無理してる気がするけど・・・。


洞窟をしばらく歩いていると少し広い空洞にたき火の後があった。


「これは・・・オークだな。近いぞ。」


耳を澄ますと前と後ろから足音が聞こえてくる。リント達は挟まれたみたいだ。薄暗い所から鼻息を荒くして醜い緑の豚がこっちを見ている。オークだ。

汚い皮鎧を纏い、手にはこん棒や剣を持ち、涎を垂らしている。


オークは不敵な笑みを浮かべ襲いかかってきた。

「おっさんとルルは前の二匹を頼む!俺は後ろの二匹をやる!キキは二人の援護してくれ!」


リントはすぐさまスペルを書き、衝撃波インパクトを一匹に当てる。一匹のオークは吹っ飛び壁に直撃。もう一匹がリントに迫りくる。


泥水マッド


足元に急に現れた泥水に反応出来ずオークは転んだ。リントはすかさずエレメンタルタクトで転んだオークの頭目掛けて突き刺す!

豚のような悲鳴と血潮をあげて一匹のオークは沈む。

壁にぶつかっていた一匹は体制を立て直し再びリントに殴りかかろうとする。


水鞭ウィップ!」


リントが唱えるとリントの右手から長さ5mぐらいの鞭のような粘着性のある液体が現れた。リントはオークを目掛けて鞭を振るったがオークは回避。しかし、その鞭の着弾点にリントは勢いよく吸い寄せられる。オークは自身の横を、もの凄い速さで通り過ぎるリントに反応出来ない。リントはすぐさま背後から背中を一刺し!オークは崩れる。



リントが前を見るとヴァンガードとルルは二匹のオークと応戦中。

キキが魔法玉を一匹のオークに向かって放っていた。オークにはあまり効いてない様だが、それがきっかけでヴァンガードのヘイトが切れ、オークがキキに襲いかかる。


「キャ!」


向かって来るオークに驚いたキキは転んでしまった。


「キキー!」


ルルが叫ぶ!


「クッ!!」


リントは走りながら水鞭ウィップをオークに当て、水の力で引き寄せる。

勢いよく引き寄せたオークを一突き!

オークは力なく倒れる。


「ハァハァ。大丈夫か?」

「あ、ありがとう・・・」


キキは少し頬を赤らめながら上目づかいでリントに礼を言った。


え。なにこの子?めちゃ可愛いんですけど。


「立てる?」


リントが手を伸ばす。


「ぁ、ん。」


キキが少し恥ずかしそうに手を重ねる。


君はそんな声が出せるのですね。ようやく分かりました。あなたは私が探していたツンデレラ姫だったのですね!


「さすがです!リント君!」


ルルが駆け寄ってくる。もう一匹のオークはヴァンガードと倒したようだ。


「いや、まぁアタッカーとして来たんだからこれぐらいは。」

「いいえ!リント君がパーティーに来てくれて本当に良かった!妹の危ない所をありがとうございます!」

「いやいや・・・」


ルルの後ろをみるとなぜかヴァンガードが気絶していた。


グッジョブ・・・おっさん。



それから4人はオークに出くわす事もなく無事に山頂に着いた。洞窟の外に出ると時刻はもう夜になっていた。


「よし。ではここでテントを貼ろう。この辺りの魔物は夜行性じゃないはずだ」


キキは声色を戻していたが、少し優しくなった気がした。


「ルルは食事の準備をしますね。リントさんは魔物避けの設置をお願い出来ますか?」


ルルから魔導器を渡される。


「はい。分かりました。」


◎魔物避けの魔導器は冒険者が野営するときによく使われる。動力源は魔力で設置すると魔導器から魔物の嫌がる匂いがして魔物が近寄りにくくなる。魔族には効かない。


「やっぱり仕事の後の酒は上手いのぉ」


ヴァンガードはすでに持参した酒を飲んでいた。


「おっさん!働け!テント貼れ!」



食事の準備が出来た。

ルルが作ったのは。野菜のスープ。パン。串焼き肉だった。4人はたき火を囲って食事をとっていた。


「それにしてもリント殿。今日はすごい活躍だったのぅ」


いつの間にかリント殿になってるし。調子の良いおっさんだな。


「まぁ 俺はこのクエストの適正レベルの5は上なんでこのぐらいは」

「いやいや、若いのに大したもんじゃ。ガハハ」


ヴァンガードがリントの背中をバシバシ叩く。


酔ってるな。おっさん。早く寝てくれ・・・。


「それにしても大したものだ。あのスペルというのも今日初めて見た」


キキは感心するようにリントに言った。


「いいなぁ。キキ。ルルは前向いてたから見れなかったー」


ルルは不服そうに頬っぺたを膨らましている。


「ハハ。まぁ、明日のトロール戦で使うと思いますのでその時にでも」


そんな談笑を美少女達と食事をしながら楽しんだ。


「さてと。そろそろ寝るか」


キキがテントに向かって歩いて行く。


「そうね。明日も早いし」


ルルもテントに向かう。


・・・・・おっさんは既に酔いつぶれて、たき火の傍で寝てる。テントには行かない。そしてテントは1張りしかない。という事は・・・俺は2人と一緒にテントで寝る➡ドキドキして眠れない➡寝返りを打ってきたルルの胸に顔が当たりラッキースケベ➡俺は慌てて反対を向く➡ふとキキと目が会う➡頬を赤らめながら今日の礼を言われる➡目をつむって近づいてくる➡ひゃっほい!!!


「ひゃっほい!!!」

「なんじゃ・・・うるさいのぅ。寝るのか?ほれ」


ヴァンガードはギルド証からテントを取り出した。


・・・ですよねーーーーー。


リントはこの日ほど自分の雄たけびを悔やんだ時はなかっという・・・。


次の日の朝、4人は軽い朝食をとり出発の準備をしていた。


「いやー!絶景だなー!夜だと分からんかったけど、こんなに上まで登ったんだなー!」


リントの目の前に広がるのは辺り一面の緑豊かな森、大きな川、海。遠くの方にヴェネの町が見えた。山の反対側に廃墟らしき小さな建物がいくつも並んでいるのが見える。


「あそこが廃墟かな?」

「そうですね。地図によるとあそこで間違いないようです」

「90年以上も前じゃが、昔はあそこにも町があったみたいじゃぞ」

「へー。何か宝物がありそうだなー」


リントはそんな事を話しながら防具を着ていると


「リント。防具を脱げ」

「え?」

「い、いいから脱げと言っている」


キキは頬を赤らめながら言ってきた。


ま、まさかこんなに朝早くから!?

★サーシャ先生の補足授業★

水鞭ウィップは水属性の中級魔法よ。魔力に応じて長さが決まるの。

水の力を使って、魔物を自分に引っ張ったり、逆に自分が引っ張られる事が出来るの。これは壁でも地面でも何でも可能よ。引っ張る力は魔力に依存するわ。でも、今のリントの魔力じゃトロールを引っ張る事は難しいかしらね。

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