one night engel
「えっ?」
「もし俺がマリーを買うと言ったらどうする?」
珍しくマジメな顔をしてもう一度ハッキリ言ってみた。
「えっ?」
マリーは頬を赤らめながらも、もう一度聞いてくる。
ん?もう一回「えっ?」って聞かれた!何回言わすの?なにこれ恥ずかしいんだけど・・・どゆことー?もう一回言えって事ー?
☆さみしがり屋 マリーの日記☆
今日リントさんに瞬きもせずに「俺んとこ こないか?」って言われたー。わっふぅー!
突然そんな事言われたからビックリしちゃった!
聞き間違いだといけないから何回も、「えっ?」って言ったらリントさんが、やさぐれてたの。マリーのバカバカバカ・・・リントさんはその後話題を変えて、クエストに寂しそうに行っちゃった・・・フフ。不器用なリントさん♡
でもクエストから帰ってくるとリントさんは何事もなかったように笑顔だったのー。優しい人だなーって。マリー本当に悪い事したなー。でもこの夜に恋しちゃったから、勇気が出たらマリーから買って下さいって言ってみようと思うのー。
でもでも!マリーすごい高いから、今のリントさんじゃ無理かもしれないの。リントさんがCランクぐらいになったら言ってみようかなー。
マリーは現実主義者だった。
リントが枕を濡らして2週間ほど経った。
リッチーを倒して一気にレベル20になった俺はEランククエストを八つ当たりのようにこなしソロでいけるクエストは全て制覇していた。
「スペルの衝撃波も完璧にマスターしたし新しい水魔法も覚えたしそろそろかな」
俺はこの2週間で衝撃波を完璧にマスターした。スペルはたしかに文字を書くんだけど、イメージの方が大事みたいだ。墓地でスケルトンに殺されそうになった時、文字はめちゃくちゃだったけど衝撃波が発生したのはスケルトンを遠ざけようとイメージしたからだと思う。衝撃波で敵にダメージは期待出来ないけど、吹き飛ばすにはかなり有効だ。そして文字数で威力が変わるのは実験済。しかしなぜか利き腕の右手じゃなく左手じゃないとスペルが発動しない。心臓に近いからかもしれない。他のスペルを作ろうと色々イメージしてスペルを書いてみたけど今はまだ上手くいかなかった。何か条件があるのかもしれないな。
俺はそろそろパーティを探そうと町の酒場にやってきた。
これぐらいのレベルなら拾ってくれるパーティーがあるだろう。
「いらっしゃい」
声の主は酒場の店主。恰幅のいいドワーフのおばちゃんだ。名前はエマ。最近酒場に通っているので自然と仲良くなった。ドワーフは基本的に背が低い。平均身長140cmぐらいだ。人間と比べて手先は器用だけど手足は短い。男性は髭もじゃなのですぐ分かるけど女性は遠目で見るとあまり人間と区別がつかない。肌が少し小麦色な人が多いのと、貧乳が多い。まぁ いってみれば小麦ロリだ。
ちなみにおばちゃんは太っているので貧乳ではない。まぁそこはどうでもいいか・・・。
「エマさん こんにちは。今日はパーティー募集の掲示版を見に来たんだけど、ランクEの募集ってあります?」
「ちょうど昨日の夜、2人が募集掲示板を書いていったよ。何か食べるかい?」
ランクDにランクアップする為にはギルドポイントを貯めるだけではなく、ボスクラスの魔物を倒さないといけない条件があった。つまりソロでは厳しいので、パーティーを組む必要がある。酒場にはパーティー募集の掲示板が貼ってある。酒場は公的機関ではないが、エマさんが窓口になって引き合わせてくれるようになってる。エマさんも客が増えるので一石二鳥という訳だ。
掲示板を見てみるとEランクパーティーの募集は2つあった。
Eランククエスト
募集主・・・ギリアン
クエスト名・・・トロールの討伐
場所・・・南方の廃墟
募集職業・・・オールラウンダー1名 光僧侶1名
ドロップ・・・ランダム(ボスドロップのみダイス)
コメント・・・レベル15以上。当方はランクアップを目指している。アタッカーは私を含め2名は既にいる。クエスト中は全てこちらの指示に従って貰う。
Eランククエスト
募集主・・・ルル&キキ
クエスト名・・・トロールの討伐
場所・・・南方の廃墟
募集職業・・・アタッカー1名 ディフェンダー1名
ドロップ・・・順に配当・ボスドロップは募集主
コメント・・・こんにちは。ルルとキキです。私たちは日頃の生活の為に魔物を狩っているまったりパーティーです。今回珍しくボスに挑戦しようとしたのはボスドロップ狙いです。よろしくお願いします。
「あれ?これ一緒のクエストじゃん」
「昨日の夜発生した新しいクエストらしくてね。早い者勝ちってとこだね」
「そんなことあるんですね。取り合いになったりしないんですか?」
「まぁ、先にボスに着いた方が戦うという暗黙のルールがあるからね。隙をついて獲物を奪おうものなら捕まるよ。何か食べるかい?」
「・・・なるほど。でも途中で邪魔されたり殺されたりとかありそうですけど」
「ギルド証を持っている冒険者がそんな事をしたらすぐバレるよ。南方の辺りだと山賊とかの邪魔は入るかもしれないけどね」
冒険者でもギルド証持ってなかったら良いのかな?てか山賊とかいるのかよ。まぁいくらこの島でも良い人ばかりじゃないか。
俺が険しい顔をしているとエマさんが
「考えたってしょうがないよ!殺られるときゃ殺られる!人でも魔物でもね!冒険者なんだからドーンと構えて行きなよ!何か食べるかい!?」
と。もの凄い剣幕。
まぁ確かにその通りだな。
「魚貝のパスタ下さい。ついでに募集主について教えて貰っていいですか?」
「毎度あり。ギリアンはエルフのイケメン戦士だよ。人間のドットとペアで狩ってる。ドットはギリアンの子分って感じだね」
イケメンに顎で使われるとかないわ。コメントもなんか偉そうだしな。
絶対仲良くなれない気がする・・・。
「ルル&キキは?」
「あの2人はドワーフとハーピーの混血だよ。」
「ハーピーってたしか手が翼になってる種族でしったっけ?」
「そうだよ。魔族との混血なんてのは珍しいがね」
「魔族?」
「あんた冒険者なのにそんなことも知らないのかい?魔族っていうのは魔物みたいに湧いて出てくる存在じゃなくて、魔王が創造したと言われる生き物の事さ。知性もあるし言葉も喋れる。あたしらは女神様に創造してもらっただろ?それと一緒だよ」
創造してもらっただろ?って言われましても・・・俺は失敗してもらったんだけど・・・。
「そうなんですか・・・」
魔物と魔族は違うのか。魔王が魔物をどうにかして作ってるものだと思ってたけど、魔物が湧いて出てくるって事は魔族も魔物に襲われるって事か?分からん・・・
「魔族ってやっぱり襲ってくるんですか?」
「そうだねぇ・・・アタシは魔族の混血以外には会った事はないが、現にハーピーとドワーフの混血がいるぐらいだ。話せば分かり合えるんじゃないかねぇ?言葉が通じればだけどねぇ」
「なるほど」
エマさんの話によると約60年前にランルージ大陸に突如勇者が巫女様に召喚された。それまで大人しかった魔族は勇者が現れた事によって人に危害を加えるようになったらしい。そして魔族との戦争が始まった。人間、ドワーフ、エルフ、獣人の4大種族は連合を組んで魔族を滅ぼそうとした。
しかし、連合軍を率いていた勇者は魔王に敗れ戦争は魔族の勝利に終わった。
魔族はそのまま進撃しランルージ大陸を支配するかと思ったが戦争が終わると何故か魔族は各大陸に散らばった。そしてこちらから何もしない限り魔族は今の今まで襲って来ていない。
逆に勇者が現れたせいで戦争が始まったと言う者もいた。
戦後、4大種族はこの敗戦を他の種族のせいにして仲が悪くなったという事だ。
なんとも勝手な話である。
そんな話を聞いて俺はルル&キキに取り次いで貰うことにした。
この島にいるという事は魔族との混血とはいえ女神側の人に違いない。
それに名前からして女の子っぽかったから。まぁその理由が9割だ。
顔合わせは夜の酒場になったので俺は今回のボス。トロールについて調べたりアイテムを買ったりして夜を待った。
--エマの酒場 夜
「あなたがリント君ですか?」
振り向くと18歳ぐらいの女の子が2人立っていた。
俺はすぐに立ち上がり挨拶をした。
「あ。初めましてリントです」
「初めまして。ルルです」
「よろしく。キキだ」
どうやらというかやっぱり双子らしい。
2人の身長は160cmぐらい。黒い瞳に桃色の唇、瓜二つの顔をした2人の髪形はセミロング。髪の色はルルと名乗った子がピンク。キキが青色でそれぞれ違い、服は長めのワンピース。白と黒の色違いを着ている。胸はルルが少し大きくてキキが少し小さいぐらい。
腰から片方ずつ水色の羽が生えている。ルルが左から。キキが右から。コウモリの羽のような形。
混血だから片翼しかないのかな?
まぁ、そんな事はどうでもいいか!ルルは優しそうでキキはクールって感じだ。
そして手が普通!ハーピーって言ってたからちょっと覚悟してたけど良かった。
魔族との混血とか全然関係ないね!そして何より2人ともめちゃ可愛い!
枕を濡らした事は忘れられそうだな!




