ソロリスト
--次の日
俺はマリーの事を考えながらEランククエストを受けに冒険者ギルドに向かった。
「いらっしゃいませー!リントさん~!早速Eランククエスト受けますか~?」
マリーは昨日とは別人のように元気だった。
「うん。お願い。マリーいつもありがとな」
「どしたんですか~?リントさん~。そんなに改まっちゃって~」
マリーは屈託のない笑顔を向けて来る。
その笑顔を見ると少し胸が痛かった。
「ううん。何でもない。Eランクのクエストはどんなのがあるの?」
「そうですか~・・・Eランクになるとダンジョンクエストもあります~!でもダンジョンクエストはパーティ向けなのです~。リントさんはソロなんでフィールドクエストこなしましょ~」
「そうだな。ちなみにダンジョンクエストは報酬が良いの?」
「そうですね~。何人で受けるかによりますけど~3人ぐらいならソロより効率いいかもですね~。ドロップアイテムが高値で売れますから~」
これはそろそろパーティーも考えないといけないな・・・スペルの練習も怠らないようにしないと。
「取りあえずフィールドクエストを見せてもらっていい?」
「はい~!今はこちらです~」
マリーがそういうとウィンドウが表示される。
「結構あるなー・・・お!この倒しただけ報酬がもらえるクエストいいな!」
「墓地のクエストですね~。最近ここでアンデッドが徘徊してるらしいんですよ~。町の人が墓参りに行けないと困ってるんです~。これにしますか~?」
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ランクE
アンデッドの討伐
場所 谷底の墓地
クエストクリア報酬 1匹400リェン
ギルドポイント 1匹 10ポイント
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「うん。挑戦してみる」
「わかりました~!リントさんなら大丈夫だと思いますけど、気を付けて下さいね~~!」
「ありがとう!めっちゃ稼いでくるわー!」
マリーに手を振って張り切って墓地に向かった。途中ゴブリンやスライムと遭遇したが難なく倒しながら進んだ。しかしソロで墓地に来た俺は後悔することになる。
「やっと着いたー。結構遠かったなー。このあたり何故か太陽が出てるのに薄暗いな・・・それに少し寒いような・・・」
寒気を感じながら墓地の中に入った。
・・・遠目に人影のようなものが見える。
近づいてみると男のようだった。しかし顔は青黒く髪の毛はほとんどない。目は片方落ちかけている。服もボロボロの物を着ていた。
これがゾンビってやつか。さすがに気持ち悪いな・・・。
ゾンビが生物なのかは不明だったが言霊を試してみた。リントが言霊を放つと透明な球状はゆっくりと進んで行くとゾンビに当たった。
・・・・・白!?
オーラは出たが色は白だった。リントが見た事のない色だった。
どういうことだ!?白なんて初めてだぞ・・・う~ん。生物としては認められる・・・頭が真っ白ってことか?
考えても拉致があかないので水治癒を自身にかけミドルソードで先制攻撃!
剣はゾンビの腹に刺さった・・・が!
「ブァァァァァ」
ゾンビのオーラが赤に変わり襲ってきた。まさか動き出すと思ってなかったゾンビに肩を噛まれる。
「グッ」
リントは剣をゾンビから引っこ抜き後方へ下がった。
いてぇな!クソ!けど動きはそんなに早くない・・・狙うは首か?
リントは剣を構え直すと首めがけて袈裟斬り。
ゾンビの首が飛ぶと動かなくなった。
「ハァ。首を跳ねればなんとかなりそうだな・・・」
攻略法が分かればなんてことはない。少し苦戦することもあったがゾンビの首を次々と刎ねた。
・・・1段落するとMPを回復するため座りこんで休憩をとっていた。
すると突然、地面から手が生えて足を捕まれた!
リントは驚愕し起き上がろうとしたが足を捕まれて起き上がれない。
「!!!!!なんっだ!これ!」
もの凄い力で掴まれて抜けられない。
すると急に目の前から骸骨が地面から這い出てきた。剣を持っている。
骸骨はリントの頭を目掛けて剣を振り下ろしてきた!
リントはすかさず剣でガード!
ヤバイ!
骸骨は剣を突く姿勢に構えなおしリントを突き刺す!
「ぐぁぁ!」
リントは避けようと身体をひねったが足を捕まれて上手く避けれず剣は右肩を貫通。
何か!何か方法は!
リントはギルド証からエレメンタルタクトを取り出し左手でめちゃくちゃにスペルを書いた!
「何でも良いから出ろぉー!」
するとスペルの文字が光を増し、圧縮された風になった。リントが無我夢中でタクトを振り下ろすと骸骨に向かって圧縮された風が飛んで行き骸骨は5mぐらい後方に吹き飛んだ。
奇跡が起こったと思った。しかしまだ足には腐った手が掴んだまま離れない。
この手をなんとしない限りピンチは免れない。そう思っていると、吹き飛んだ骸骨が起き上がり剣を持ち直してリントに襲ってきた!
殺られる!
リントがそう思った瞬間だった。何処からともなくバスケットボールぐらいの火の玉が飛んで来た。骸骨に直撃すると骸骨は灰と化した。
「た、たすかった・・・」
リントを掴んでいた手もいつの間にか消えていた。
「大丈夫かい?」
リントが振り向くとそこには影が2つあった。声の主は25歳ぐらいの獣人だった。白銀の鎧を身に纏い、腰には騎士剣、頭には獣耳。顔には毛が生えてはいるが、その凛々しい目と顔つきはまさに美男子と言える風貌で身長は2mぐらいあった。
その後ろには隠れるようにこちらを見ている獣人の女性だった。ローブを着ているので胸の大きさは分からないが、身長はリントと同じぐらいで170cm。年は20歳前後で髪はピンクのセミロング。獣耳をぺたんとしててその素顔は可愛らしい。
ちなみに女の獣人は背中に毛が少し生えるだけでそれ以外は人間と同じだ。もちろん顔に毛は生えていない。
「す、すいません。ありがとうございます!」
「礼ならこの子に言ってくれ。火の玉でスケルトンを灰にしたのも君の叫び声に気づいたのも彼女だ」
「あ、あの~ありがとうございました!本当に助かりました!」
獣耳の女の子に感謝すると女の子はペコっと頭を下げてまた男の後ろに隠れた。
「すまないね。彼女は人見知りなんだ。それより君はソロかい?1人なのにこんな所で休憩するなんて危ないにも程がある。とりあえずこれを飲んで傷を癒すといい」
そういうと獣人の男はリントが見たこともない青色のポーションを取り出した。
「す、すいません何から何まで・・・」
「気にすることはないさ。10分もすれば治るだろう」
なにこのイケメン。カッコイイ・・・。
「そういえば君。珍しい物を使っていたね。エレメンタルタクトなんて高級品。普通ここに来る程度の冒険者が持っている物じゃないんだけどね」
「これはある人からの貰いものなんです。全然使えなかったんですが。さっきは無我夢中でスペル書いたらなんか使えました。どうやって使ったか全然覚えてないですけど・・・」
「そうなのかい?・・・ちょっと見せて貰ってもいいかな?」
「どうぞ」
リントはタクトを男に手渡す。
「こ、これは!!!」
タクトを手に持つと男は驚いた表情をした。
「どうしたんですか??」
「いやなんでもない。これは大事にするんだよ。君が思っている以上の物だ。今みたいに簡単に他人に渡してはいけない。似たような模造品はあるがよく見れば分かるからね」
「は、はい・・・あの~ところでお二人は何故こんな所に?どうみてもこんな低レベルなクエストを受けている冒険者には見えないんですが・・・」
おそるおそる聞いてみた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕の名前はシュバルツ。レギオ王国の獣騎士団の団長をさせてもらってる。そして彼女の名前はイアンヌ。1週間程前に巫女様に召喚して頂いた勇者だ」
「お、俺の名前はリントです・・・って勇者--------!?」
思いがけない所で勇者に出会う。




