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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
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奴隷協会

リントはエレメンタルタクトの練習を早々に切り上げ、町の外れにある奴隷協会に足運んでいた。


奴隷協会の建物は質素だが大きな屋敷のような建物だった。2階建てになっており、ざっと300人ぐらいは住めそうな大きさだ。


「でかいなー。まぁ奴隷が住んでるんだからこれぐらいはあるか」


リントが入り口付近で口を開けていると奴隷協会の従業員らしき人物が話し掛けてきた。


「いらっしゃいませ。奴隷をお探しですか?」


その男は中年ぐらいでボサボサの頭にいやらしい目つきの怪しさ満点の人間だった。


「申し遅れました。私ここの副館長を任されておりますダルヴィンと申します。」

「初めまして。リントです・・・ここにマリーという奴隷がいると思うんですが、値段が知りたくて来ました」

「マリーですか・・・マリーはその明るい性格と可愛らしさでお求めになるお客様が大変多いのですよ。ただ・・・」

「ただ?」

「本人が買われる事に了承しないのです。以前一度だけ契約をした富豪がやらかしましてね」

「と言うと?」

「召使いとして買われたマリーでしたが、その富豪の息子がマリーに手を出そうとした事がキッカケでマリーは契約を解除したのです。その息子は捕まりましたがね・・・それからというものマリーはどんな条件でも買われる事に了承しなくなったのです」

「なるほど」

「それにマリーは現在14歳。あと2年も経たないうちに自由が与えられるのでなかなか買うのは難しいかと」


14歳ぐらいと思ってたけどピッタリだったな。


「ちなみにマリーを買うならいくらするんですか?」

「そうですね~。ギルドの看板娘という事も含み、あの容姿と性格なら1日5000リェンと言ったところですな」


5000リェン!とてもじゃないが今の俺には無理だな。まず、サーシャさんの宿屋が1日500リェン。マリーが冒険者になったとしても2人で1000リェン。その上奴隷協会の支払いが5000リェン。1日で6000リェン稼がなければいけない。厳しいな。


「そ、そうですか。マリーを見る事が出来ます?」

「ええ。ご案内します」


屋敷の中に入ると、扉がいくつもあった。色は2種類あり青は男部屋、赤は女部屋と性別に分けてある。扉にはプレートが貼られ年齢や種族が記してある。年齢には12~14歳と書いてある。おそらく年齢が近い者は相部屋になっているのだろう。


「こちらです」

「ちょっといいですか?」

「どうされました?」

「俺がここに来た事をマリーに知られたくないんだけど、大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ。安心して下さい」


何を安心するかは分からなかったがリントは了承して中に入る。


ダルヴィンに案内されたのは協会の地下にある大広間だった。広間の端を覆うように檻があり、その中に奴隷達がいた。近くにいた奴隷がリント達に気づいて話しかけてくる。


「あらぁ。可愛い子ね」


その言葉の主はチャイナドレスの様な服を着ており豊満な胸を強調するように前かがみになって話しかけてきた。年は25歳前後ぐらい。悪魔のような妖艶な美しさを漂わす女性だった。


「コラ!ミルン!勝手に話しかけるんじゃない!」

「あらぁ。そんな怒らなくもいいじゃない~。ね?お客様?」


ミルンはそういうとリントの瞳を真っ直ぐ見てきた。

リントはその青い瞳に吸い込まれそうになる。


ん?・・・目が、目が離せない。


リントは急に意識が朦朧とした。

ダルヴィンがすかさず手をパチンと叩く!


「はッ!俺は・・・」


リントは音に反応し意識を取り戻す。


「ミルン!次やったら罪人奴隷にするぞ!」

「もぅ。分かったわよ。また遊びましょ。お客様」


そういうと檻の奥に戻っていった。


「今のは?」

「今のはエルフと淫魔サキュバス混血ハーフでして、困ったやつなんです。前のお客様がミルンを買って3日後干からびて発見されたんですよ。証拠がなかったため無罪放免になりましたが、きっとミルンの仕業です」

淫魔サキュバスってあの・・・生気を吸うってやつですか?」

「そうです。あれは淫魔法の使い手です。先ほどミルンから目が離せなくなったでしょう?あれが淫魔法です」


精霊魔法とは別の魔法か・・・スキル一覧には載ってなかったな・・・俺も覚えたい!いや決して不純なアレじゃない。あくまで戦闘用にね。あくまで。あれ?でも使えんのか?


リントは是が非でも使ってみたかった。


「マリーはどこですか?」

「あそこです」


ダルヴィンが指をさす方向を見てもマリーらしき人物は見当たらない。


「ん?見当たらないけど。」

「あそこの獣人の後ろで下を向いているのがそうです。


リントはマリーに気付かれたくなかったので5m以上離れている檻を凝視した。


いた!マリーだ!


「もっと近づいても大丈夫ですよ。あの子は休みの日はいつも下を向いておりますから」


あの元気なマリーが?


リントはゆっくり近づき顔がハッキリ見える距離まで近づいた。

だが、マリーは下を向いてまま微動だにしない。いつも輝いている瞳はそこにはなく、まるで生気を失っているかのような死んだ魚の目をしていた。


マリー。俺がそこから出してやるからな。

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