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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
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赤い指揮棒

--次の日


俺は食事を済ませてサーシャさんの部屋を訪れていた。


トントントン


「どうぞ」

「失礼します」

「おはよう。昨日はご苦労様。早速ご褒美をあげないとね。ちょっと待ってて」


聖剣が額縁に飾ったままになっているのでどうやらご褒美は聖剣ではないらしい。

やっぱり聖剣じゃなかったか。推薦状かな?でもギルドランクEになったばかりだし。それはないか。

俺が思考を巡らせているとサーシャさんが帰ってきた。


「お待たせ」


サーシャさんが手に持っているのは片手剣がすっぽり入りそうな長方形の箱だった。


推薦状じゃないか・・・やっぱり何か強い剣とかくれるのかな?


サーシャさんが箱を開けると柄の付いた鉄製の細長い赤い棒状の物が入っていた。


「これはレイピア・・・ですか?」


リントがそう思うようにこの柄の付いた赤い棒状の物は、例えるならレイピアが近い。しかし刀身がレイピアにしても細すぎるのだ。


「一見そう見えるかも知れないわね。先端が尖っているから突いて攻撃する事は出来るけど刃もないし少し短いでしょ?」


長さはリントが使っているミドルソードが70cmぐらいなのに対してこのレイピアのような物は50cmぐらいしかない。


「たしかに。片手剣にしては短いし、短剣にしては長い・・・これは何なんですか?」

「これは、エレメンタルタクトよ」

「えれめんたるたくと?」


指揮棒?音楽家に転職フラグ?


「そう。これを持って魔力を込めながらスペルを書くの」


そう言うとサーシャはタクトを手に持つと何もない空間に文字を書いた。タクトの軌跡に光る赤い文字が現れる。筆記体のような8文字ぐらいのスペルを書き終えると、文字の上からタクトを振り下ろす。すると光る文字は燃え上がる炎になり、少しすると消えた。


「おー!スゲー!」

「フフ。エレメンタルタクトは大気中の微精霊を操る事が出来るの。言ってみればスペルを用いて微精霊を指揮する感じね」

「俺にも使えるんですか?」

「もちろん。魔力がある人なら誰でも使えるわ。初めはスペルを作るのが大変だけどね」

「スペルを作る?」

「そうよ。ほとんどの魔法は精霊の力を借りて発動しているの。スペルは精霊とお話しする役割を果たしているわ」

「魔法は精霊の力とかなんとなくそんな気がしてましたけど、俺が魔法を使う時スペルなんてなくても使えてますよ?」

「それは当然よ。リントが使っている魔法は偽物だから」

「偽物?ちゃんと傷も治るし、泥水も作れますよ?」

「ちょっと言い方が悪かったわね。リントはギルド証で転職してギルド証で魔法を覚えたでしょう?ギルド証の中にある職業は全て実在した偉人を元に構成されているわ。転職はギルド証 (魔導器)を媒介にして身体の中にその偉人の情報を書き込んでいるの。代表的な職業で言うと、魔法使いや僧侶はエルフ、戦士や拳闘士は獣人、盗賊や商人は人間、鍛冶師や魔導精製士はドワーフのと言った具合ね」


人間の偉人微妙過ぎる・・・。


「・・・それだから適正武器は補正が付いたり、上がりやすいステータスがあるんですね」

「その通りよ。その人物が実際に使っていた武器や高かったステータスが反映されるの。初級の武技や他属性の魔法が覚えれるのは色々な人物の情報が入ってるギルド証のおかげね」


俺の中の魔導器万能説が確固たる物になっていくな。すごい魔導器作ったら魔王倒せるんじゃね?


「でも、リントが今使っているスキルはその技術を似せて使っているだけに過ぎないから覚えるスキルは本来の性能より落ちているの。まぁそれでもギルド証のスキルはとても有用よ。スキルポイントさえ増えれば習得できるから」

「やっぱギルド証スゲーな!・・・ということは?」

「要するに、もともとエルフがスペルを使って編み出した精霊魔法をリントの身体に覚えさせて、リントの魔力を変換して魔法を発動させているの。精霊の力は使ってないわ」

「なるほど!だからスペルがいらないのか」

「ご名答。良く出来ました!じゃあ早速リントの属性を調べてみましょうか」

「おー!もう強い魔法は水属性しか覚えれないと思ってました!来たれ!俺のスーパー属性!・・・ってどうやって調べるんですか?」

「・・・やってみれば分かるわ」


そういうとサーシャはエレメンタルタクトをリントに手渡した。


「適当でいいから魔力を込めながら文字を書いてみて」


リントは言われた通り魔力を込めながら適当にタクトを振った。タクトの軌跡に光る半透明の文字が浮かびあがった。文字はリントが魔力を抜くと消えた。


「風が・・・吹いた?」

「決まりね。あなたの属性は風よ」

「風か・・・フフフ。なんかカッコイイですね!さすらいの男って感じで。」

「そ、そうね・・・スペルは自分の属性しか編み出せないものだから頑張ってね」

「はい!でも良いんですか?こんな激レアっぽいアイテムを俺なんかに」

「・・・そうでもないわ。そのエレメンタルタクトは壊れないってだけで王国に行ったら劣化品が普通に売ってるわ」

「そうなんですか。でも壊れないだけでも充分です!大切にします!ありがとうございます!」



早速練習をしようと町の近くの草原に向かった。


「よーし!大精霊使いのリント様の冒険のはじまりだ!!」


魔力を込めて適当に文字を書いてみる。


「風が・・・吹いたか?てか外でやったら全然分かんねーー!てか、そもそもスペルってどうやって作るんだ?」


考えろ・・・いや違う・・・感じるんだ・・・・・・・


「うん!無理!何も感じない!宿の中庭で練習しよう!MPも尽きそうで気分悪いし!奴隷協会にも行ってみたいし!今日はおしまい!」


3分で諦めました。


~~~アイテム説明~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


エレメンタルタクト(赤)・・・かつて勇者の仲間が使っていたと言われる伝説の武器。色は赤、青、黒の3本が存在する。赤はMP消費が激減し、所有者の微精霊を集める特性があるため場所を選ばない。魔力を込めた際、模造品はMP消費が1秒につき5に対して赤は1秒につき1しか消費しない。

なおフォレン王国には模造品が売られているが、相場で150万リェンする。


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