さよならのうた
登る皇子におはようという
いえ、言わない まだ
すすすーっとムの中
月が薄皮だけになる
記憶は白い爪
クリスタルぼっち
皇子の惰眠
おはようはキューブの中にある
四角いおはよう
お喋りを止めた鳥
外側の羽だけ見せればいい
一番高いところに皇子
こんにちはと鳴く
届かない羽の空
飴細工の雲
天女のマイ
羽衣を皇子にかけて
目隠しして
もういーかい
レース編みの隙間
覗いてみる
おつかれさま
皇子の微睡み
バイバイ
それは
それはいつも受動的
こんもりとした丸い月に
問いかける
ねえ
真面目にやってる?
夜を照らしてる?
かなしみを与えてる?
優しさを透かしてる?
ねえ
さよならは溜まってる?
苦しくない?
能動的じゃないよね
さよならが
さよならが戦ってる
さよならが穢れてく
だんだん
さよならが
ねえ