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武士 異伝  作者: 弁鳥有無
降誕編
10/104

玖 魔術師との対話

 夢を見ていた。

 幼き頃の木の棒を剣に見立て近い歳の子等と遊んでいる夢だ。

 しかし自分には物足りなかった、幼いながらも自分の体は子供達より大きく力も強かったからだ。

 もっと強い相手はいないのかと周囲を見渡したが子供しかいなかった。

 残念だ、そう思いながら剣を振るった。


 ふと気が付くと何時の間にか子供だった相手が、己よりも倍は大きく恐ろしい形相をした鬼になっていた。

 手には棍棒を握っている。

 突然のことに我を失いそうになるが心を落ち着かせる。

 直後、今度は恐怖と歓喜が同時に襲ってくる。

 だが怖さより僅かに喜びが勝る、面白い。

 声を張り上げる事で気力を充実させ、木の棒を掲げ鬼に向かってゆくが簡単にあしらわれてしまう。

 鬼の力はとても強く幼少の自分では太刀打ちできない。

 握っていた木の棒は鬼の棍棒によっていとも容易く弾き飛ばされ何処かに消えていた。

 鬼は棍棒を高く掲げ今にも振り下ろそうとしている。

 武器を探すが大地は真っ黒で何も見えない。

 棍棒を振り下ろす鬼の顔が何故か自分の顔のように見えた。









 目が覚めていた、それは深い海の底からゆっくり海面へと浮き上がってゆく感覚。

 意識が戻ると急速に自分の現状を認識しだす。

 咄嗟に刀を探すが何処にもない。

 周囲を見渡せば知らぬ場所で寝台の上に寝かされていた、着物は脱がされ身体には包帯が巻いてある。

 その上から絹のような白い衣服が着せられていた。

 此処は何処なのか、何故自分は寝ているのか。

 数瞬の後、思い出す。

 そうだ、自分は大猿と戦いそのあと意識を失ったのだと。

 そして思う、夢ではなかったのだと。

 一体誰がここまで自分を運んだのかと考え、あの場所にはもう一人男がいた事を思い出した。


「あの者に救われたか」


 一言呟くと改めて自分の置かれた場所を見る、十二畳ほどの広さの部屋に自分が寝ている寝台だけが置かれていた。

 四方にある壁には窓と扉が一つずつある。

 窓からは木枠の隙間より朝陽が零れていた。寝台より起き上がろうとしたが身体が言うことを聞かない。

 当たり前だ、幾日か分からぬが眠り続けていたのだから。

 暫しの間、身体を動かすべく四苦八苦する。

 漸く寝台から降りる事が出来る、窓へとよろめきながら向かい開けると朝特有の空気と匂いと共に眩い朝陽が差し込んできた。

 それらを全身を持って受け止める。

 身体は重いがとても心地良い朝であった。

 鳥の声が、そして活動を始めた人々の生活の音が入ってくる。

 存外に多くの人間が暮らしているようだ。


 部屋の外に人の気配がし、扉が開く。

 森で出会った青年の姿がそこにあった。


 驚いたような顔で何言か話しかけてきたが通じない事を確かめているようでもある。


「お主には命を助けられた、かたじけない」


 男も伝わらないのは承知のうえで青年へと感謝を告げる。

 青年は身振りで分からないと表すと部屋の外に姿を消し、暫くして滑車のついた台に食べ物と飲み物を載せて運んできた。

 その匂いに腹が鳴る。男は今初めて自分がとても腹が減っている事に気付く。

 青年は笑い喰えと手振りで示すと扉から出て行った。

 手桶ほどの銀色の鍋には、とろみのついた汁物が入っている、籠には麺麭、何枚かの陶器の皿、銀の匙、湯呑み、そして銀の筒が台に載っていた。

 重ねられていた皿に汁を盛ると匙で掬って食べる、乳白色の汁は濃厚な味がした、何かの動物の乳だろうと当たりをつける。

 中には何種類かの野菜と肉が入っており、とても美味く感じられた。

 何日寝ていたかは分からないが、暫く腹に食べ物を入れてないはずなので胃が驚かぬようゆっくりと咀嚼を心がける。

 が思いとは別に忽ち食べてしまう、恐ろしい程に腹が減っていた。

 横にあった麺麭にも手を伸ばす、森の中で食べた物とは比べようも無く柔らかかった、だがやはり口が渇く。

 再び皿に盛った汁につけて喰ってみると思いのほか食べられる味になった。銀の筒の中身は飲み物だと思い湯呑みに入れてみる。

 汁物と同じ様な乳白色の液体が注がれる、飲んでみて確信した、やはりこれは何かの乳であった。

 四半刻を過ぎぬ内に鍋も籠も筒も空になっていた。


 丁度食べ終わった頃を見計らった様に扉が開き二人の人物が部屋に入って来る。

 一人は青年、もう一人は頭巾を深く被り顔を隠した小柄な者だ。

 小柄な人物は男へと歩み寄り外套を脱ぐ、そこには少女と思しき姿があった。

 茶の髪、翆色の大きな目をした掘りの深い顔立ちをしていた。

 青年は扉近くの壁に寄りかかり事態を眺めている。

 少女は何言か区切って男に向けて言葉を紡いだ、それを何度も繰り返す。

 言葉の抑揚が少しずつ違うので異なる言語を幾つか男に通じるか試しているのだろう、しかし当然分からない。

 少女は落胆したそぶりも見せず、むしろ言語が通じない事を確認したかのようであった。


 少女は地面に座り男にも促す。

 対面に男が座り込むと少女は何処からか手毬ほどの水晶を取り出し、両手を当て低い声で囁く様に言葉を放ち始める、それは何かの儀式に用いる歌の様にも聞こえた。

 少女の身体から気が溢れてくる。男は僅かに目を細める。

 少女は男にも水晶に手を当てるよう手振りで示す。

 男が水晶に手を当てるが何も起こらない、少女は手から気を水晶に送っている、男の顔を覗きその瞳は分かるかと問うていた。

 男はその意を正確に読み取った、瞬時に気を練り上げ水晶に向けて放つ。


「きゃっ」


 と、水晶から紫電が発し悲鳴と共に少女が壁際まで吹き飛んだ。

 慌てて何とか青年が受け止める。

 少女が目を見開き驚いている、青年が話しかけるが上の空で聞いていない。

 よろめきながら水晶の前まで来ると再び両手で包む、男にも載せろと目で訴えてくる。

 先程は強くやりすぎたと見て男は気を緩め水晶へと手を載せた。

 やはり何も起こらない、何かが間違っているようだが男には分からない。

 手を離そうとした時であった。


 頭の中で何かが響く。


(ど ちょ     さい)


(どうちょうしてください)


(同調して下さい)


 始めはただの響きであったそれはやがて意味を持った。

 男は少女の気に合わせる様に気を放つ。

 すると


(私の声が聞こえますか。私の声の意味が分かりますか)


 と聞こえてきた。いやそれは聞こえると言うより頭の中で響いているかのような感覚であった。

 大陸の寓話に出て来る仙人が使うと言う心話なるものなのか。


「聞こえるし分かる」


 男は口に出して答える。


(言葉にする必要はありません、頭の中で話すようにしてくれれば伝わります)


(これでよいか)


(はい、感応の魔法の成功を確認、私はリレティア。フェルモアの魔術師。貴方の名前をお聞かせ願えますか)


 男の思考は一瞬淀み、何かを考える様に間を置いて答えた。


(我が名は、武蔵)


(分かりました、ムサシ。早速ですが貴方は何処から来たのですか。私は先程この大陸の幾つかの主要言語で話しかけましたが貴方はそのどれにも反応を示さなかった)


(俺は、遠い異国よりこの地に参った、お主らが考えも及ばぬ遠い地からだ)


(失礼ですが貴方の面貌、着ていた衣服、武器そのどれもがこの辺りの物ではありません。遠い地とは何処なのですか)


 直接的なやり取りをしているからなのか相手の感情が言葉以上に伝わってくる。リレティアが疑っているのが分かる。

 武蔵は少し考えてから窓から見える太陽を指差し告げた。


(俺はあの日が出処より来た)


(戯言を)


 からかわれたと思ったリレティアが武蔵を睨みつける。

 怒りの感情がぶつかってきた。


(俺からも聞いてよいか)


 怒りを自制したリレティアが不満を露に答える。


(いいでしょう)


(この地のことを聞きたい、ここは何処なのか)


(分かりませんね、貴方はこの国まで一体どうやって来たのですか。その質問はまるで自分が何処にいるのか分かっていないと取れますが)


 武蔵は答えない。このままでは話が進まないと思ったのか少女の口が開く。


(まぁそのぐらいは答えてもいいでしょう、この地はイルティアの西部に位置する大フェモール領のフェモル、と言っても分からないのでしょうね)


(分からぬ)


(イルティアは国の名前、その西部地方を大フェモールと呼称しています、この地はその地方都市の外れです)


(都市とは都のことか。和蘭、西班牙、明と言った国に聞き覚えはあるか)


(ありません)


 やはりここは自分のいた場所と繋がってはいないのだろう、或いは時代が違うのか、いやこの魔法と言う力など何時の時代にもありえない。

 この世は須弥山で言う三千世界のうちの一つなのであろう、と武蔵は思った。


(貴方はあの森で何をしていたのですか)


 武蔵は迂遠な駆け引きを止め直載的なやり取りをすることにした。


(隠していても埒が明かぬ、俺は気がついたらあの場所に立っていたのだ。信じられぬだろうがな)


(誰かにかどわかされたと言う事ですか)


(そうではない。言った通り気がついたらあの森に立っていたのだ)


(言っている意味が分かりません)


 武蔵を見つめる少女の瞳には困惑の色。


(今お主が目を瞑り、開けたら全く知らぬ場所に立っていたと思えばよい)


(そんな事があるのですか、俄には信じられませんね)


(俺も己に降りかからねば信じなかったであろう)


 嘘を言っているように見えない武蔵にリレティアは疑いの思いを少しばかり晴らす。そのような事が起こるなど信じられないが、そうだと仮定すれば武蔵の話にも一貫性がある事が分かる。


(この術は何時まで続く、他の者にも通じるのか)


(この水晶に触れている限り私とは意思の疎通が出来ますが、私以外の者とは無理ですね)


(ならば頼みがある、俺にこの国の言の葉を教えて貰いたい。何時帰れるやも知れぬ、ならばこの地で生きていくしかないのでな)


(まぁ構わないでしょう、ヴィジルにも頼まれていることですし)


(ヴィジルとはあの若者のことか、是非この武蔵が礼を言っていたと伝えられたい。命を救ってもらった借りはいつか返すと)


(分かりました、彼は彼で貴方に助けてもらったと言ってますがね)


 どういうことか分からぬと言った顔をしている武蔵にリレティアが続ける。


(彼はあの白猿に遭遇して大きな傷を負い身を隠しているところを貴方に救われたと言っています。あの猿は森の主の一匹で人を嬲って嬲って嬲り尽くして楽しんでから殺すと言うとても残虐な性質の持ち主です。あのままだったら衰弱死していたか何れ見つかって今頃生きていなかったと言って貴方に感謝していますよ)


 淡々と述べるリレティア。


(それにしても白猿をまさか一人で倒すとは、貴方は上級マナ使いなのですか)


(上級?マナ使い、とは何だ)


(貴方の国にはそう言った階級は無いのですか、マナ使いとは文字通り魔力マナを使う者の総称です)


(まなとは)


(本気で言っているのですか、貴方が先程私を弾き跳ばした力のことです。呼称が違うだけなのでは)


 少女の思考に武蔵は大きく頷く。


(そういう事か、俺は気と呼んでいる)


(キですか、変わった響きの名ですね)


(祖国でも気は使えたが、この地ほど大きな力ではなかった。いや、何より明確な力と呼べる物ではない。これはどういう事だ)


(さぁそれは私には分かりかねますね。少なくとも私達が今いるこの世界ではマナはとても大きな力と認識してもらって結構ですよ)


 武蔵が続きを促す。


魔力マナとはこの世界に満ちる力を指す言葉です。我々魔術師はマナを呼び水に異界の法を具現化し現象を起こします。マナ使いはマナを持って超常の力を発現します)


 リレティアは区切り、また話し出す。


(誰もが持っているものですが多寡があります。ある一定以上の魔力の持ち主がマナ使いとなれるのです。確かな事は言えませんが百人に一人いるかどうかと思って貰えればいいかと)


(では残りの者はただの人と思ってよいのか)


(そういう事です。マナ使いとしての強いマナは性徴が現れる、男子なら九歳から十三歳、女子なら七歳強から十二歳弱までに必ず発現します。そしてこの国ではマナの兆候が見られた子供は徴収され専門の国家機関で育成されるのです)


(武士になるのか)


(ぶし、の意味がよく分かりませんが彼らは職業軍人として育てられます)


(職業軍人とは戦を生業なりわいとする者の事か)


(その通りです。彼らは学院で二年、軍に五年務める事が義務付けられています)


 武蔵の脳裏に若き日に戦に望んだ光景が蘇る。

 負け戦で多くの味方が戦場で散った。

 大雨で抜かるんだ大地。泥水が跳ね骸となった者たちへ無慈悲に降り注いでいる様は地獄の様であった。


(貴方も軍人だったのですね)


(俺の心を読んだのか)


 武蔵は不機嫌さを隠さず質した。


(常ではありません、言うならば貴方の強い想念が流れ込んで来たのです)


 リレティアは目を見張る。


(凄い、一瞬にして心を閉ざしましたね。相当な鍛錬を経なければ出来ない事です)


(この儀式を始めた時から俺の心を読んでいたのか)


(いえ、ですから常にではありません。貴方は特別心を抑える術に長けてるようですから。先程も一瞬貴方の心が見えただけです。今では鉄の扉が目の前にあるようですよ)


(お主も修めているのか)


(ええ未熟ながら)


(では先程の怒りの感情はわざとぶつけてきたのか)


(まぁそういう事です、そうやって貴方から何か引き出せるかとも思いましたが駄目でしたね。何も見えませんでした)


 異国の者同士言葉を交わせるのは実に有益だが心まで伝わるのであれば用心しなくてはならない。心を読まれ知らず知らずのうちに誘われる可能性もある。

 更に問う。


(ではお主も軍人なのか)


(軍で五年勤め上げればそのまま残るか除隊出来るかが選べます、私は除隊組ですね。軍隊は性に合いません)


(今は何をしている、浪人なのか)


(ろーにんの意味が分かりません、自由業の事ですか。所属なら私は白き象牙の魔術師協会に籍を置いています)


 興味が湧いたので更に尋ねる。


(軍を離れた者はどうやって口に糊するのだ。夜盗にでもなるのか)


(そうですね、確かに盗賊に身を落とす者も少なくありません、何しろ計七年もの間、戦闘の訓練をするのですから。そうでなくとも彼らは一般の人間とは比べようも無いほどの力を持っています。より安易な方へ流れてゆくのも道理なのかも)


 達観したような言葉とは裏腹に怒りを飲み込んだ瞳で武蔵を見つめてくる。何か思うところがあるのだろう。


(我々マナ使いの主な仕事は魔物の掃討、護衛、犯罪者の討伐ですね。傭兵の依頼もありますが態々除隊したのに戦場に舞い戻る物好きは少ないです。これらの仕事を国、或いは民間から請けて生計を立てています)


(それらは個々で受けるのか)


(いえ、そういう人もいますが彼らの多くは仲間を集い事務所を構えています。大抵は数人程度の小さなものですが大きなところでは何十人と所属していて仕事の内容に沿って適当な人材を派遣すると言った方法を取っていますね)


 事務所とやらはたなの様なものか、品の代わりに己の業を売ると言う事なのであろう。己が知らぬ言葉、知らぬ道理、世の形が存在する、それは武蔵の心を躍らせる。


(魔物とは森にいた巨大な蟲や白い大猿の事か)


(そうですね、ムサシは既に戦っているから承知しているでしょうが魔物との戦いは文字通り命懸けです。魔物だけではありません、マナ使いへの依頼は常に命の危険を伴います。

 マナ使いの三割が仕事に就いて三年以内に 更に三割が七年以内に命を落としています)


 本当に危険な職業なのですと呟くように漏らす。もしかしたら彼女は既に大切な人を失っているのかも知れなかった。


(マナ使いとやらについてもう少し詳しく聞かせてくれ)


(マナ使いとは先程も言いましたが本来魔力マナを使う物の総称ですが現在では武器を持って戦う前衛の事を主に指し、我々魔術を使う者を魔術師、或いは魔法使いと呼称しています

 マナ使いはマナを全身に作用させることで通常の人とは異なる爆発的な力を発揮させる事が出来ます。魔術師は先程も言った通り異界の法を具現化させてある現象を起こすのです)


(では俺もマナ使いになるのか)


(そういう事ですね、しかも森の主を一人で倒してしまうのですから上級使じょうきゅうし以上に値します。あぁ上級使とは上級マナ使いの略称です)


 どうやらあの猿の化け物は相当な強さと認識されているようであった。一人で倒したのは事実でも大猿が嬲ろう等と思わず初撃の後に追い討ちをかけていれば今、自分は此処にいなかっただろう。

 慢心があの猿を敗北に導いたのだ。

 だが仮定の話をしても全く意味が無い、現実は自分は生きており大猿は冥府へと旅立ったのだから。


(位があるのか)


(上級、中級、下級とありそれぞれ更に三位四位五位と分かれています。詳しく言うと上級一~三位、中級一~四位、下級一~五位と計十二位階になります。これはこの国だけではなく大陸で共通に用いられる位階制度ですので認定されれば何処の国でも通用します)


(国を跨って認められるのか、では誰がそれを行っているのだ)


(各国から独立した専門機関が行っています。ウルド大陸間魔導士協会と言います、ここが査問して実力が認められれば認定される仕組みです)


(お主は何級になる)


(私は白魔術師九位階になります。魔術師は十二位階で表され、白魔術師とは治癒術士のことです)


(治癒とは医者の魔術師と言うことか)


(そうです、ムサシ貴方の筋肉の断裂と骨折を治し、内臓の治療をしたのは私です)


 そう言われて武蔵は初めて気付いた。

 全身にあった細かい皹と骨折、筋の裂傷に臓腑の損傷が治っている事に。


(何とも便利な物だな、魔術とは。礼を言う)


(そうでもありません、治癒魔術とて万能ではありませんし、対象の魔力を持って機能するので一般の方には使えません)


(俺は何日寝ていた)


(貴方が白猿と戦った後昏倒して今日で十日目です、貴方は丸九日眠っていたのです。看護を続け漸く三日前に治癒術をかけてもよいほど魔力が回復したので使用しました)


(随分と世話をかけたようだ)


(魔力を極限まで使い果たすと昏睡状態になり命の危険を伴います、これは肝に銘じとくべきですね)


(心に刻み込んでおこう)


 と、そこまで喋った時、青年がリレティアに話しかけてきた。

 武蔵との感応魔術を中断し青年と向き合う女魔術師。

 何言か言葉を交わした後、再びリレティアの声が頭に響く。


(ヴィジルが貴方は命の恩人だから望むだけ此処に居てくれ、食事の面倒は見ると言っています)


 ヴィジルという名の青年が分かったかと言う風に武蔵に視線を寄越す。


(こちらこそ此処まで運んでもらった上に治療までして貰い誠にかたじけないと伝えてくれ)


(ええ、伝えました)


 ヴィジルが確かに伝わっているぞと頷いている。


 慣れぬ魔術に疲れたのか身体が未だ眠りを欲しているのか急速に睡魔が武蔵を襲う。


(済まぬがまた後にして貰えぬか、何やら急に眠りたくなってきた)


(身体が休息を必要としているのでしょう、また後ほど)


 武蔵はヴィジルへ頷く、そして寝台に入ると同時に意識を失った。

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