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第四話


 確認できる向こうの戦力は、機甲戦闘機と呼ばれたロボット一台、森の木々に隠れて正確な人数は分からないが歩兵がかなりの数いるのが分かる。

 残念ながら探査スキルの範囲から外れていて、詳しくは分からない。


 爆音が響き、さらにもう一台輸送車を破壊される。

 こちらも歩兵携行ミサイルを使い反撃を試みるが、弾幕を張られ近づく前に撃ち落とされてしまう。

 しかし、連携してミサイルを撃ち込む事で、こちらへの狙撃は止まっている。

 

 こちらの被害は、輸送車が二台。

 まだ人的被害は出ていない。

 彼我の距離は約3000m、本格的な銃撃戦が始まるまで若干の猶予がある。



 探査スキルに反応が出る。

 距離は500m。

 山側からの奇襲だ!

 

 小隊を見ると機甲戦闘機に釘付けになり、背後に気が付いていない。

 トルキス伍長も俺のお守が任務なのか、脇に抱え木の陰の地面に伏せているため気づいていない。


「山の上から誰かきます!!!!」


 怒鳴り声あげて、伍長に危険を知らせる。

 周囲はミサイルの爆発する音と銃弾を打ち出す音で耳が痛い。

 まだ、距離があり分かってもらえないかもしれないが、言わないよりましだ。


「それは、本当かっ!!!!」

「本当ですっ!!!!」


 やはり、まだ気づいていなかったようだ。

 なんとかして信じてもらいたいが、説明している時間もない。

 どんどん敵は近づいてくるうえに、上を取られている。

 圧倒的に不利な状況だ。

 ここで先手を取られでもしたら、取り返しがつかない。


 一瞬躊躇するが、信じてくれたようだ。

 仲間と連絡を取り、迎撃に向かう。


「絶対にここを動くんじゃないぞ、いいな!」


 頷いて合図をするとやさしく頭をなでられる。

 表情は分からないが、伍長のピンと立っている猫耳が緊張している事をうかがわせている。

 俺は連絡を取り合った仲間と合流しながら、山を駆け上がっていくのを静かに見送った。


 …………ってそうじゃない!

 俺も何かしなければ、この先生きのこれない!


 急いでアイテムボックスの中身を確認する。

 何かいいアイテムがあればいいのだが、殆ど使いきってしまい補充もせずに転移してしまったのだ。

 あるのはボロボロの大人装備と武器だけで、まともな物は予備の採取用ナイフだけ。

 消耗品は皆無に等しい。


 だが、やるしかない。

 伍長の向かった先には敵が二十人はいる、対して味方は五人だ。

 応援に行かなければ全滅は免れない。


 採取用のナイフを装備して、身体強化と隠匿の魔法を掛ける。

 効果は無いよりはましな程度だ。

 鍛えていないこの体では、無理をすること自体できない。

 伍長たちに気を取られているうちに背後を取って気づかれないように殺す。

 これしかない。



 銃撃の音と手榴弾の爆発音が山に響く。

 どこもかしこも戦闘音でいっぱいだ。

 伍長の班は敵を抑え込む事には成功しているが、かなり劣勢だ。

 いいように撃ち込まれていて、今にも戦線が崩壊しそうだ。

 幸いなことに探査スキルに人数の減少は見られないが、敵も減っていない。

 

 敵に気づかれないように大きく迂回して背後をとる。

 ちょうど窪地を見つけたのでそこを拠点に周囲の地形を探る。

 敵も適当な窪地を利用して、簡易の塹壕代わりにしているようだ。

 五人ずつ四班に分かれて滅多打ちにしている。


 「くそっ……」


 周囲の騒音にかき消されるが、思わず悪態をついてしまう。

 離れていれば、一人ずつ始末しようと思っていたが、これでは無理だ。

 一人はやれても後が続かない。

 逡巡している間にも味方がどんどん不利になっていく。

 

 何かないかアイテムボックスを探ろうとすると、遠くの方で大きな爆発音が轟く。

 続いて聞き覚えのある音が急速に近づいてくるのを感じる。


「やばいっ」


 匍匐前進で地を這っていたが、立ち上がり全速力で窪地へと飛び込む。

 瞬間。

 強烈な衝撃波と熱風が頭上を通り過ぎ、周囲を焼き尽くす業火が襲ってくる。

 周囲の木々は燃え盛り、地面は焦土と化している。

 探査スキルの反応を見ると、見事に消えている。

 目視で見てみると、直撃を四発受けて骨も残らなかったようだ。


 正直かなりヤバかった。

 対ドラゴン戦用にもらった耐火性能の付いた指輪をしていなかったら、こっちまで消し飛んでいたところだ。

 自分の魔力だけでは到底防ぎきれない威力だ。

 気に入ったデザインで、付けたままにしていたが本当に助かった。

 対魔王戦で壊れなかったのも救いだ、奴は闇魔法しか使わなかったからな、感謝したいぐらいだ。



「…………俺なんもしてねえし」

 

 結局何もやる暇もなく終了した。

 自分に失望してしまう。

 一人でかってに焦って、一人で何とかしようとして、一人で自滅してしまった。

 若い時の悪い癖だ。

 一人で何でもできると勘違いして突っ走っていた時の。

 散々仲間に迷惑を掛けてきたのだ。

 今更ながら自分の性格を思い知らされる。

 仲間を信用できず一人で抱え込んでしまう癖を。 



 元いた場所に戻ると、敵の機甲戦闘機は破壊され、掃討作戦が行われていた。

 空からは航空戦闘機による対地攻撃があり、地上ではいつの間にか現れた味方の機甲戦闘機により蹂躙されていた。

 どうやら、輸送車に一台乗っており、敵が輸送車を執拗に攻撃していたのはこれが理由みたいだ。


 しばらく眺めていると、後ろから声を掛けられる。

 トルキス伍長達だ、ボロボロで負傷している人もいるが欠員は出ていない。

 すばらしいチームワークだと思う。

 四倍の戦力に対して勝利したのだ。


「動くなといっただろ。 まだ流れ弾が来るかもしれん。 伏せていろ」


 忠告通りに木の陰で地面に伏せる。

 伍長達は攻勢とはいえまだ戦闘が続いているので、周囲の警戒を行っている。

 合図を出し合って意思の疎通をしているのを見ると自己嫌悪に陥ってしまう。

 何やってんだろ俺……。

 仲間の事を思い出すと、ついこの間の事なのに涙がでてくる。




 戦闘が終了した。

 ただ、道は土砂で塞がったままなので、機甲戦闘機が取り除いて道が通れるようになるまでしばらく時間がかかりそうだ。

 無事だった輸送車の助手席に乗る。

荷台には負傷者が横たわり、手当を受けている。

 車列を盾に戦っていた部隊では死傷者がでていたため、もう一台の輸送車の荷台には死者が乗せられている。

 航空支援がなければ、蹂躙されているのはこちらだったはずだ。



 ユーリ少尉とトルキス伍長が近づいてくるのが窓から見える。

 左腕を吊っているが少尉も無事だったようだ。

 車から降りると、無事な方の手で顔を拭われる。

 涙の跡を拭いてくれたみたいだ。


「わるかったね、巻き込んでしまって。 アリスさんに申し訳ないよ。 伍長に任せていたから大丈夫だと思っていたけど」

「君のおかげで部隊は救われた、感謝する」


「報告は受けているよ、君が敵の接近を教えてくれたって。 最低限の被害だけで済んだのは君の功績だ。 僕からも感謝するよ」

「……でも俺はなにも」

「十分役に立ったさ。 こんな物騒な事は大人に任せておけばいいよ。 子供が心配する事じゃないんだから」


 二人の言葉が身にしみる。

 僅かでも役に立っていたとしたら、少し気が楽になる。

 この世界でも、かつてのように背中を預ける事ができる仲間が作れるだろうか。


戦闘シーンは難しいですね。

主人公に頑張ってもらう予定でしたが、それ以上に制空権が強かったです。

プロットも焦土にされてしまったので何とかしなければ。


よかったら、感想お待ちしてます。


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