第九話
残酷な描写があります。
街道を力の限り走り抜ける。
幸い、まだ敵とは遭遇していない。
運が良いとは言えないが。
街の北側から黒煙が上がっているのが見える。
北の山脈を越えて攻めてきたようで、東西に延びているこの街道にはいない。
直接、基地と街を攻めてきている。
しかし、基地と街を繋ぐ唯一の道だ。
何時、攻めてきても不思議ではない。
走っていると、何かに引っかかる。
足元を見ると、艶を消したワイヤーが切れて宙を舞っている。
一瞬の事だが、駒送りに見える
地面がだんだんと盛り上がり、何かが飛び出してくる。
金属の礫だ。
咄嗟にアイテムボックスから鉄板を取り出し背後に隠れる。
衝撃が襲い、体を持って行かれそうになるが耐えることができた。
迷宮を掘っているときに見つけた鉱石を回収し作成した装備だ。
仲間が持っていた大盾を参考にしている。
俺が持ち運べるように軽くしておいたが、耐える事ができて助かった。
爆発音に誘われたのか、街の方から敵歩兵が近づいてくる。
手には突撃銃を持ち、重そうな鞄を背負っているが足取りは速い。
後ろを見れば、森の陰から機甲戦闘機が姿を現すところだ。
どうやら、基地から街への応援部隊か撤退部隊を叩くために居るようだ。
敵もまさか一人とは思っていなかったらしく、若干の動揺が見られる。
「構うな、撃ち殺せ!」
しかし、すぐに銃弾が飛んでくる。
一人だというのに全く容赦がない。
投降を呼びかけるつもりは一切ないようだ。
「やるか」
気合いを入れる。
銃弾が足元で跳弾しているが、気にせず盾を構えて森へ突っ込む。
さすがに、正面からぶつかるには歩が悪過ぎる。
機甲戦闘機の持つ巨大な突撃銃に打たれれば、盾が持つか分からない。
戦車の側面装甲なら撃ち抜けるものだ、試すわけにもいかない。
敵歩兵も森に入ってくる。
だが、この場所は俺のテリトリーだ。
敵の視線から消えると、地下のトンネルへ飛び込む。
この辺りもすでに、俺のダンジョンである。
地下から探査魔法を使い、人数を探る。
おそらく20人の歩兵と1機の機甲戦闘機で間違いない。
俺が消えた付近を捜索している。
残念ながらすでにそこには居ない。
俺はすでに、機甲戦闘機の真下だ。
トンネルを使い、敵部隊の背後へと回ったのだ。
後ろに誰もいない事を確認し、トンネルから飛び出る。
背後を取ったと言え、カメラは背部にも付いているのだ。
迅速に近づき、破壊する必要がある。
機体に手を当て、土魔法錬金術を発動させる。
装備を乗せた背嚢があるため、狙うのはその下だ。
燃料タンクを破壊し、行動不能にする。
漏れた燃料に火花が飛び散り引火するが、すでに俺はトンネルの中だ。
頭上での爆発が、振動として地中に伝わる。
「ばっ馬鹿な! いったい何処から攻撃を受けたっ!
「わかりませんっ! 近くに敵性勢力は見当たりません!」
「そんなはずがないだろ! 現に攻撃を受けている! しっかり調べろ!!」
「しかし上空にも地上にも見当たりません!」
「さっきの奴はどうした、何か持っていなかったのか!」
「報告では鉄板らしきものを持っていたと有りますが、現在見失っております!」
切羽詰まったように報告が飛び交い。
破壊された機甲戦闘機に、視線が集まる。
再び森の中へ戻った俺は、まだ油断している歩兵の首へシャベルを突き出す。
愛用のシャベルが血に染まるのは本意ではないが、この際仕方がない。
余りの勢いに首が飛び、鮮血が舞う。
他の敵には気が付かれていない。
死体をアイテムボックスへ突っ込めば、残るのは血の跡だけだ。
すかさず気配を消し、次の敵の背後へ近付き首を刎ねる。
続けて何人か始末する。
さすがに敵に見つかり銃撃を受けるが、すぐにトンネルへと避難する。
怒声が森を駆け抜ける。
「やつはどこいった!」
「また、見失いました!」
「くそっ、また一人いなくなってやがる」
「何としても見つけて、始末しろ!」
「いったい奴は何なんだ!」
「奴を絶対に、生きて還すな!」
もはや、この森は俺の狩り場だ。
久しぶりの戦闘に、興奮で血が沸騰しそうだ。
同じ人型を狩ることに忌避感は無い。
魔物や山賊相手に、散々やってきた事だ、今さらである。
仲間が居なくなっていることに気が付き、敵の警戒がどんどん上がる。
単独行動が無くなる。
しかし、すでに遅い。
お前らの仲間はほとんどが俺のアイテムボックスの中だ。
残った人数が装甲車に集まり、周囲を警戒している。
トンネルを掘り地下から敵の真中へ近付く。
穴から顔を出すが気付かれない。
こんな所から出てくるなど、だれも思っていないだろう。
視線は外側へと向けられている。
背後から近づき、一度に二人仕留める。
こちらに気付き銃を向けた一人にシャベルを投げつけ、もう一人にはつるはしをぶん投げる。
首が飛び、頭に穴が開く。
最後の一人には、盾を構え突進する。
銃弾が盾に当たり跳弾するが、こちらには影響が無い。
白兵戦は苦手なのか、近づいてくる相手に銃を乱射するだけだ。
「くるな! くるな! くるなぁあああっ!!!」
「これで……終わりだ!!!!」
盾を構えたままぶつかり、突撃銃を弾き飛ばす。
無防備になったところを盾で殴りつけ、周囲に誰も残っていない事を確認する。
戦闘終了だ。
装甲車と周りの死体、装備を回収する。
機甲戦闘機も爆破し穴があいているが、土をかぶせ鎮火し回収する。
何かに使えるかもしれない。
「だいぶ時間を取られてしまった」
街道を避けて、森の中を進めば良かったと後悔する。
間に合わず誰かがいないなんて事があれば後悔してもしきれない。
今更言っても遅いが。
街に向かうかも知れなかった戦力を減らせただけ良かったと思う事にする。
街にはトンネルは掘って無い。
同じ戦法は使用できないのだ。
倒せるときに倒せただけ十分だ。
体に身体強化の魔法をかけなおし、足に力を込める。
言いようのない不安に心が押しつぶされるが、先を急ぐ。
「みんな無事だといいんだが」
呟きが妙に響いた。
走り去った後には何もない。
ただ地面の焦げた跡と血の匂いが、ここで戦闘が合った事を物語っていた。
R15タグの本領発揮です。
ただ、思っていたのと違いますが。
逆モグラたたきは、予定ではなかったです。
たぶんマイクラのせいです。
採掘動画をニコニコで見てたので、影響されたのでしょう。