act4. 犬の毛
「え、いや…何でもないっす。」
怪しいと思われちゃったかな…。初めて入ったし、瑠依のお誘いだし断る理由もなかった…。
お店の雰囲気は、マスターの人柄がでている内装だった。
「晃さん、遅くなってごめんなさい!」
「ゆっくりでも良かったのに。」
瑠依が店の奥から飛び出てきた。肩で息をしている。
「こら、お客さんなんだぞ!」
「マスター、別に気にしてないんで。」
「っていうか、晃さんはあたしの客なの!お父さんは黙っててよ!」
少し怒り気味に言う瑠依。可愛いな、こんなくだらない事で怒って。遅れただいたいの理由はわかるよ、その様子じゃ。
「菫と遊んでたっしょ?」
少し笑いながら聞いた。だって、マスターに必死に抵抗?してるし…、笑うよ。
「なんでわかるの?」
やっぱ、おもしろいわ瑠依って。自分の服に毛付いてあるの、気付いてないんだね。
「だって、服に菫の毛付いてるもん。」
「あ、ホントだ。取ってくる!」
また店の奥に戻った。笑いを堪えきれずに吹き出してしまった。
「マジ笑うし!面白すぎだから!」
マスターは俺を見て笑っていた。そして、話かけてきた。
「瑠依の友だちかい?」
友だちなんだろうか…知り合い?さっき知り合ったばかり。なんと言えばいいんだ?
「まぁ、そんなところです。」
「良かった…。」
良かったって何?少しその言葉が気にかかった。
「お待たせ。」
10分ぐらいで帰ってきた。俺はマスターに入れてもらったコーヒーに、砂糖を入れて混ぜながら答える。
「きちんと全部取った?」
そして、少しだけ口に含む。口の中には、コーヒーの苦みと砂糖の甘い味が広がる。美味しいコーヒーだ…。
「取ってきた…はず。」
「うん、取れてるよ。」
笑顔になる瑠依。喜怒哀楽がハッキリしているよね。分かりやすくて良いけど。
すると、俺の携帯が鳴る。電話の着信…彼女からだ。