act.1 出会い
『全ての生命は海から生まれた』と聞いたことがある。
確かに海を眺めていると何故か安心する。
途切れることのない波。ほのかにする潮の香り。ずっと見ていても、飽きることがない。
一人で見ている海と、二人で見る海は何かが違う。何が違うか、言えないけど違和感がある。
そして、今は一人。この間まで二人だったのに…なんでこんなに寂しいんだろう。一人でいることには慣れていたハズなのに。君が…琉依が居ないことで、こんなに寂しいなんて初めて知ったよ。
琉依と会ったのは、ここ…海だった。俺がふと海を見たくなり、砂浜で寝ていた。すると、いきなり犬が俺の腹の上に乗ってきた。
「は?何…この犬!?」
「すいませーん。犬、捕まえててもらえませんかー?」
遠くから女の声がした。言われた通りに、腹の上にいる犬を抱きかかえる。小型?中型?まあ、大型じゃないから良かった…。
犬を抱きかかえ、女がいる方へと俺は歩き出す。女は走っているみたいだ。
「すみません。ありがとうございます。」
「別にいいけど…。危ないよ、離しちゃ。」
でも犬は嫌いじゃないし、むしろ好きな方だし。なんて言うか目がかわいんだよね。そして、犬の飼い主の女は首輪にリードをつける。それを確認した俺は、犬を砂浜に下ろした。
「じゃぁ、俺はこれで…」
すると、犬が俺の足に飛びついてきた。尾を目一杯振っている。
「俺はこれでサヨナラだよ。」
犬の頭を撫でて、帰ろうとしたとき…また足に…。
「本当にすみません。さっきのお礼とお詫びと、言っちゃなんですが、あのお店に行きません?」
女が指をさした場所は、海岸沿いにある小さな喫茶店だった。