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白球に願いを

作者: 塚矢

友人に頼まれて執筆。野球は詳しくないので至らない点がありますが、宜しくお願いします。

カーン


乾いた金属音と共に白球が飛んでゆく。

観客席からは大きなどよめき。


実況の声も、観客の声も、チームメイトの歓喜の声も、全てが無音になり俺の意識は白球だけに集中させる。




---頼む、入ってくれっっ!!



心の中でそう願う。いや、懇願といってもいい。俺は、この打席に自分の野球人生の全てを賭けた。

この状況では、賭けないというほうがおかしかっただろう。

俺は、無我夢中でバットを振りぬく。

当たったという感触が手を伝わりビリビリと体中に流れ込む。


スコアボードには、10-9 と数字が刻まれている。

これが最後の攻撃。

これが、入れば同点。入らなければ1点差。取られればそれで負け。




……折角ここまで来たんだ。一番天辺を掴み取ってやる!!!


打球は速度を落とし、フラフラと落ちてくる。


頼む、頼む! お願いだ!


なおも落ち続ける。



くそう!



目を瞑ってセカンドベースを蹴る。

塁にいた3人のランナーはもうホームに帰っている。


これが、入ればっっ!!



センターが追う。


打球が----…



ビッ


グラブを弾いた。それを見て俺は更に加速し、足の回転を早める。

センターが転んで倒れている間にカバーに入ったレフトがボールを取り、セカンドへ。




しかし、俺はホームへと向かう。




思い出せ。俺が今までやってきたことを。



あれは、1年生の頃。

俺たちは希望を胸に秘め、私立藤堂第一高校へと入学した。


ここは、野球が強いと言われているからであった。


野球部に入部届けを出す。

中学ではエースで4番として都大会ベスト4までいった。

その自信は今でも俺を支えている。



野球部へ入る。

そこには、今まで自分が見たのとは違った光景があった。



飛んできたボールをダイビングキャッチしてすぐに送球。1バウンドで正確にホームへ。



ドクンと心臓が高鳴る。



凄い。



その一言しか出てこなかった。

ここまで圧巻のプレイをされると自分がいままでやってきたことが馬鹿らしくなってきてしまう。



「新入生、自己紹介をしていけ」


監督が言った。


右から順に自己紹介をしていく。


自分の番だ。


「壬生中学からきたました。吉良恵一と言います。ポジションは投手です。宜しくお願いします! 」


「ほう、七色の変化球と言われている超中学級の吉良か。期待している。」


期待。自分が期待されている。それだけで恵一は天にも昇る気持ちだった。



そして、1年が過ぎ、また1年が過ぎた。大会では目だった成績をあげていなかった。


せいぜい県予選の3回戦止まり。




何故、何故なんだ?



俺は、自分のピッチングは悪くない。打たないチームメイトが悪いと思っていた。



でも、違った。



それに気づいたのは3年の春だった。



ピンチで連打を許してしまう、それが決勝点となってしまっていたのだ。


たった2点。されど2点。



これが、取れなかった。

チームは凡打の山。せいぜい1点どまり。



そして俺達が練習したのは、走塁だった。

毎日100本のダッシュ。


5kmのマラソン。

ベーラン50周。



それを夏の最後の大会まで1日もかかさず続けた。


その結果チーム全員が足腰を強化され、深いショートゴロでもサードがちょっとミスしただけでも内野安打になる足、打席ではしっかり踏ん張ることが出来、コンパクトな打撃が出来るようになり、県予選からもの凄い勢いで優勝して、甲子園へのキップを掴み取った。



甲子園でもその勢いは止まらず、決勝戦まで恵一は1失点。チームとしては準決勝までは全てコールドで勝ち上がった。



そして今、序盤から打ち込まれ窮地に立たされていた。


打線もなんとか粘ったが大会No1投手といわれる雑賀高校の三鷹を打ち崩すのは一苦労。

小刻みに点を取り、4点差。




絶対、絶対に優勝してやる、h-ムへと滑り込む、中継のセカンドからバックホーム。



クロスプレイ。




俺は審判の判断を待つ。




審判が手を上げた



「アウトォォォッッ!!! 」



甲子園が沸いた。実況の熱い放送が耳にやけに入ってくる。



「試合終了です!!! 10-9!! 夏の優勝高は、雑賀です!!!! 」


----終わった……




整列をする。




自然に、視界がぼやけ、頬を涙が伝う。



こうして、藤堂第一の3年の夏が終わりを告げた。


誤字脱字ご報告ください。

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