家族と朝食
「はい、あーん」
目の前に差し出されたフォークと、フォークに刺さった一口サイズに切られたトマト。
我が家は昔から朝昼晩の食事は必ず家族全員でする決まりがあった。なんなら3時のおやつも皆一緒だ。
そして今は朝食中。
過去に戻ってあれやこれや考えていた時、部屋の扉がノックされ朝食に呼ばれた。
私を呼びに来た執事に思わず「あ、私の7番目の男さんおはよ〜」と声をかけてしまった。執事のチェイニーは目を丸くしていたけど、にこりと笑って私を食堂まで抱えて連れて来てくれた。
執事のチェイニーは養父の側近だが、ずっと私のお世話をしてくれていた。だから頼れるもう一人の父親の様な存在だった。まぁ、15歳になった私の7番目の男に立候補して来たけど。
おかしいよね。いつも『お嬢様は娘のような存在です〜』とかほざいていた人なのにね。
因みに、7番目というのは私の身体を奪った人の順番だ。
1番目が養父。2番目が義兄1。3番目が義兄2。4番目が養父の弟。5番目が我が国の皇帝陛下。6番目が皇太子。7番目が執事のチェイニー。8番目がーー…なんて考えていたら日が暮れる。もう全て忘れてしまおう。私は倫理観だか道徳心をしっかり持ち合わせているのだ。思い出すと辛い。
「どうした?食べないのか?」
私の2番目の男さん、基義兄1であるラディエスが私の目の前に突き出していたフォークを引っ込め、心配顔全開で私の頬を両手で包む。
「今日から、食事は自分で食べます」
「え?どうやって?ルゥナのカトラリーは一つもないぞ」
確かに私のカトラリーは一つも用意されていない。産まれてこの方自分の髪より重い物を持った事がない様な箱入り娘に育てられた私。
当然食事も家族の誰かにいつも食べさせてもらっていた。
歩く事も危ないからと禁止され、移動はいつも誰かに抱えられている。
そのせいで、15歳になった私は走って逃げ出す体力も筋力もなく、散々な目にあったのだ。
ぶっちゃけ反省はしてる。周りに甘えまくった自分にもかなりの非があると。
蝶よ花よと育てられ、調子には乗っていた。これだけ可愛いんだからぐーたら生活しても許されるって信じてた。
でも無償の愛なんて無かった。愛は有償だった。
「予備や使用人が使うカトラリーくらいありますよね?それを使わせてください」
「そうか、わかった。なら俺がルゥナのカトラリーになるから安心しろ。ほら、あーん」
私の男さん達は私の男さんになった時から頭のおかしな人達になった。でも、私の男さんになる前の今現在もなんかおかしいぞ。
つまり、何言ってんだコイツ。
「ラディエスお兄様ったら、おもしろ~い!ソランジェお兄様、私専用のカトラリーが欲しいです!買ってください!」
「いいよ。じゃあ今日から俺がルゥナ専用のカトラリーになるね」
「も〜!ソランジェお兄様まで、面白い事言うんだから〜」
あははうふふと口に手を当て笑ってみせる。やめてほしい。何が面白いんだって目で見てくるの。コイツら本気だ。怖過ぎる。