会心の一撃
「約束が違いますお父様」
昼食の時間になりリケルドに抱えられ食堂に行くと、上機嫌な養父が私用の靴を持って待っていた。
が、案の定養父自ら履かせてくれた靴は地に着く事なく、早々と私の足から飛び立っていった。『君が初めて履いた靴だから、大事にするね』とかほざいた養父の手によって、靴デビューは一分で終了した。
「靴はちゃんと買ってあげたよ?ほら、カトラリーも僕が選んで買ってきたんだ。触っちゃ駄目だよ?危ないからね」
触っちゃ駄目だと言うけれど、そもそも腕を持ち上げられない。
大神官によって身体を動かせないようにされた私は、いつも以上にされるがまま、今はソランジェの脚の上に座らされていた。
「こんなの酷いです!お父様、大神官様に身体を元に戻すよう言ってください!」
当然の様に私の後方に控えている大神官は、私が何を言おうと頑として聞き入れてくれなかった。
「カトラリーと靴、欲しかったんだよね?君のお願いは叶えてあげたんだから、今度は僕のお願いも聞いてくれる?」
頬杖を付き、思わず殴りたくなるような笑みを浮かべる養父に、右側の目尻がピクピクと痙攣する。
「お父様のお願い、ですか?」
「うん。君にはずっとそのままでいてほしいんだ」
「……………ずっと?」
寝言も遺言も、私に関係しない事を言ってほしい。今はただ、私の言う事だけ聞く肯定botになれば良いのに。
「そんなの嫌です!」
「そうだよねぇ、ごめんね。でもせめて、15歳になるまではそのままでいてくれない?」
まるで我儘を言う娘に譲歩してやってる感を出す養父に、怒りは最高潮に達した。
「お父様。お父様の想いが何故聖女様に伝わらなかったのか、教えて差し上げます。お父様は自己中で傲慢過ぎるのです。そんなクズみたいな人を、聖女様が愛すると思いますか?私が聖女様なら、口も聞きたくないし顔も見たくありませんね。まぁ、大神官様もお父様と同罪…否、この場に居る人達皆がお父様と同類…即ち、聖女様に嫌われているのです!!」
これぞ正に会心の一撃。
目を見開いて固まる養父達に、中指を立てられないのが残念だ。




