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『気持ちいい。素敵な場所。本当に景色が最高ね』
『そうだろ。最高だろ。そんなに喜んでくれてとても嬉しいよ。安心したよ』
『ううん、私こそありがとう。この場所、気にいっちゃった』
二人は中央の祠の前に座り込んだ。
そしてジュースを飲んで喉の乾きをいやした。
『啓太くんの家、屋根は見えるんだよね?』
『どれだか分かる?当ててごらん』
『こんなにたくさんの中からじゃ無理だよ』
『じゃ、ヒント!煙突が見えるよね、あの辺りだよ』
『え〜っとね、あの茶色の屋根かなぁ』
『おしいかな。その隣りの青い屋根さ』
『おしかった。少し悔しいかな』
『双眼鏡で見てごらん』
啓太と京子は恋人同士のように仲睦まじく幸せな時間を過ごした。
学生時代の恋の相手。
ただ見つめるしか出来なかった女性が隣りに居てくれる。
啓太の心は温かな痛みが溶けていくように満たされた。
『京子さん、花ばかり見ているけど好きなのかな?花屋でも働いているしさ』
『私の母が大好きだった。庭にはたくさんの花が咲いていたわ。私も一緒になって水をあげたり、手入れしたり・・・とても楽しかった』
好きだったって・・・京子さんのお母さんはどうしたのだろう。
そう思いながらも啓太は話しを続けた。
『ふ〜ん、そうなんだね。京子さんは優しいから花が好きだってこと納得だよ。また京子さんとはこの場所に来たいね』
『うん、そうだね。ところで啓太くん、あの7体のお地蔵さんは何なの?』
『僕もよく分からない。でも亡くなったばあちゃんの話しによると、何か大きな事件があって、その事件に関連しているらしいんだ』
『そうなの・・・』
『老人が花を供えているのを見た』
『その人なら何か知ってるかもしれないね』
『きっと知ってるはずだよ』
啓太は立ち上がり、手前のスロープの辺りまで来て大声で叫んだ。




