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啓太はシャワーを浴びて、バターをたっぷりと塗った食パンを2枚、オーブントースターでじっくりと焼いた。
牛乳をコップに注ぎ、部屋で食事を始めた。
窓から射し込む光は、気持ちを最高の清々しさに変えていく。
京子とのデート当日。
啓太はこんな時のために以前から準備しておいた新調の服を、クローゼットから取り出して着替えた。
とはいえ白一色のTシャツにジーパンというラフな姿だった。
啓太は気持ち同様に軽快に自転車を走らせた。
グラウンドへ向かう途中にある自動販売機で、清涼飲料水を2本買った。
走り続けて数分、最後の急な下り坂を一気に、ブレーキをかけずにおりていった。
待ち合わせ時間より随分と早く到着した啓太は、自転車から降りて片隅の鉄棒の脇にある椅子に腰を降ろす。
京子を待つ啓太の表情は生き生きと輝いていた。
その様は太陽の光にも負けないほどだった。
グラウンドでは三日間、実施されていたバザーの賑わいの余韻が今も残っている。
京子を待ち続ける啓太は、グラウンドでサッカーをしている子どもたちをじっと見つめていた。
やがて激しいブレーキ音と共に京子がやって来た。
『ごめんなさい、啓太くん。待った?』
『おはよう、僕もつい先ほど来たばかりだよ』
啓太は京子のかわいい姿に心奪われた。
やや短めのスカートが印象的だった。
『何、じっと見てるのよ。恥ずかしいよ、啓太くん』
『ごめん。つい見とれちゃって・・・』
『高台ってここから遠いの?』
『自転車だから遠くはないよ。時間もかからないよ』
『そう。私とても楽しみにしていたの。だから晴れて良かった』
『ほんと、晴れて良かったよ。ジュースと双眼鏡を持ってきたから』
『ありがとう、早く行こうよ』
啓太は楽しくて仕方なかった。
こんなに楽しい思いは、小学校六年の時の運動会のリレーで一着になって以来だった。




