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『いや、まったくないんだ』
『これから啓太くんはどうするつもりなの?』
『残り5つの剣山を必ず探し出してみせるさ』
『かなり困難だわ。片山くんに来てもらったのは正解だったわ』
『良子さん、疲れが出たみたいだから、僕は帰っていいかな?』
『大丈夫?心配だわ。今すぐ家まで送るから』
『せっかくの食事なのにすみません』
『いいのよ、啓太くん。カトウサオリと剣山のことは、みんなで協力して必ず解決しようね』
二人は席を立った。
良子は盛り上がっていた片山と信二に事情を話した。
『片山くん、私、啓太くんを家まで送るから』
『俺たちも帰るとしよう』
『なら信二くんも送っていくわ』
こうして四人はレストランを後にした。
京子との約束のデートを控えた前日。
啓太はひとりで高台へと向かった。
ひょっとしたら何か分かるかもしれないという衝動に突き動かされた。
カトウサオリが気になっている。
明日、京子を連れてこの場所へ来ることが出来る楽しさ・・・カトウサオリを想うと絡み合う複雑な気持ちもあった。
夏休みも後半に差し掛かっていた。
いつもより響き渡る子どもたちの声。
ボール遊びをしたり、川で泳ぐ子どもたち。
そんな光景も今の啓太の目には映らなかった。
バザーも最終日。
花屋で汗を流す京子を思い浮かべながら、軽快に進む自転車は高台の麓へと到着する。
啓太は頂上目指して一気に走り出した。
心臓がばくばくしている。
啓太は倒れ込むように座り込み、景色を眺めた。