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啓太は一日に何度もここに来ては寝転んで、空をぼんやり見ながら考え事をしていた。
時折、風に乗って聞こえてくる車のクラクションや話し声、鳥の囀り、川のせせらぎ。
いつしか啓太は高校時代に恋をした女性のことを思い出していた。
高台の中央に大の字に寝転んでは、ひとりの時間をのんびりと過ごした。
頂上の広さは直径20メートルほどで、中心には祠のようなものが建立されていて、その脇には小さいお地蔵さんが7体、並んでいる。
草むらのうえに寝転ぶ啓太。
大きな雲が空を覆い、今にも雨が降り出しそうだった。
啓太は起き上がり、麓まで一気に走り出した。
そして自転車に乗って家へと向かった。