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『何かいいことでもあったみたいね』
『かなり、いいことなんだ』
『何なの?教えてほしいな』
『今は秘密だよ。良子さんにもそのうち教えるよ』
そんな折、片山が話し掛けてきた。
『啓太くん、剣山とアルファベット・・・そしてカトウサオリの正体、因果関係は調べさせてもらう』
『ありがとうございます』
『啓太くん、彼は頼りがいがあるのよ。きっと解決するわ』
『良子さんも本当にありがとう』
この日は信二も連れて四人の外食となった。
片山と信二は性格が共通している部分もあり、まるで初対面とは思えぬほど意気投合していた。
そんな二人を半ば呆れ顔で見ていた良子は、運ばれてきたデザートを一口頬張ってから啓太に視線を送った。
『唐突だけど私は以前に片山くんと付き合っていたのよ』
驚愕した啓太だったが、そっと聞いていた。
『結婚まで誓い合った仲だったけど・・・土壇場で彼の行動に対して納得いかなくて、どうしても許せなかったの』
良子は少し寂し気に話した。
『余計なことさえしなければ、とても良い人なんだけど』
少し気を落とす啓太に良子が言った。
『あっ、ごめんなさい。私、どうしてこんな話しを・・・』
『いや、いいんだよ。良子さん』
『啓太くんは不思議な子ね。君になら何でも話せそうなの』
『そうかなぁ、でも遠慮なく何でも話してくれたらいいよ』
『啓太くん、優しすぎるし、真面目だわ。もう少しいい加減でもいいと思うわよ』
真剣に話しをする啓太と良子をよそに、片山と信二は馬鹿騒ぎをしている。
『啓太くん、夢に出てくるカトウサオリのことだけど、何か進展はあったの?』