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『隆太さん、この人は?』
『ああ、以前からたまにバイトで来てもらっていた子だ』
『そうなんだ。まったく気づかなかったよ』
『来月から正社員になる』
『兼崎さん、社員に昇格なんですね。おめでとうございます』
『ありがとう。それと敬語じゃなくて構わないわよ。私もそうするから』
『はい、そうします』
啓太は少し照れ笑いを隠せずにいた。
京子が気になって花屋の方へと目をやった。
だが、あまりにも人波で溢れ、かろうじて見える程度だった。
『隆太さん、少しだけ時間をもらうよ。すぐに戻ってくるから』
そして人混みをかきわけ走っていった。
やがて京子の姿が見え、大声で叫ぶ。
『京子さん、おはよう』
『おはよう、啓太くん』
『あの〜京子さん、次の日曜日だけど予定あるの?』
『え・・・』
恥ずかしさを飲み込んで啓太は思い切って話しを切り出した。
『京子さんを連れていきたい場所があるんだ』
『私を連れていきたい場所』
『うん。京子さんに見せたいんだ』
京子は少しうつむいて沈黙を続けた。
『いや、駄目ならいいんだ。急でもあるしね』
意気消沈する表情、京子はそっと呟いた。
『大丈夫よ。連れていってほしいな。その場所へ』
『えっ、本当に』
『うん、本当よ』
『ありがとう、京子さん』
『どんな場所か気になるの』
『見たらきっと喜んでくれるさ』
『日曜日が楽しみだわ』
『じゃ、また連絡するから。今日も頑張ってね。俺も頑張るから』
『うん、お互いに頑張ろう』
啓太は上機嫌で花屋を後にした。




