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以前、勤めていた会社の上司からだった。

『啓太くん、信二くん、ごめん』

『どうしたの?良子さん』

『急に大切な用事が出来ちゃった』

『そうなの・・・』

『ごめん。タクシー代置いておくわ。精算は済ませておくから』

『良子さん、分かったよ。あと使わせてばかり、こちらこそごめんなさい』


良子が去って半時間。

二人はタクシーをつかまえ、高台へと向かった。

二人が一緒に高台へ来たのは、二年前の夏祭り以来のことだった。

その頃は信二の方が高台について詳しかった。

二人は頂上を目指した。


『久しぶりだな、まったく変わってないな。いつもここだけは』

『ああ、本当にそうだな』

やがて二人は頂上に辿り着いた。


『最高の眺めだな。たまに来るのもいいもんだな』

『俺は毎日ってくらい来てるよ』

『お前、ここが好きだもんな。しかしよく飽きないよな』


啓太と信二は中央に座り込んだ。

下から吹き上げてくる強い風に二人の髪は逆だっていた。

二人は黙ったまま過ごした。

そうして二人は、それぞれの家へと帰っていった。

『信二、ありがとう。これからも頼むよ』

『気にするなって。じゃあな』


啓太は少しの間、アルバイト情報誌を見ながら音楽を聴いていた。

いつしか机の上にもたれるように寝入ってしまったのだった。

二時間くらい経過しただろうか。

啓太は昨夜と同じ夢を見た。

違ったのは昨夜より鮮明に女性の声で啓太に語りかけてきたことだった。


『お願い、返して。全部集めて返してほしいの。探して・・・お願い』

ぼんやりした意識のなか、啓太は言った。

『君は誰なの?何を探すの?返すの?』

『私はサオリ・・・・・カトウサオリ。剣山は私の宝物。だから返してほしいの。全部探して・・・お願い』

『返すって、どこに返せばいいの?』

『お願いね、約束だよ。すべて集めて返してね』

『う、うん、分かったよ。約束するよ。分かったから安心して』


啓太は次第に再び深い眠りに就いた。

夜明け。

眩しいほどの光りが啓太の頬を照らしていた。

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