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第5話 今日は色々な出来事が発生している気が?

 二人は、夕暮れ時のアーケード街から出る。

 カラオケで一時間ほど過ごした後、自宅がある方へ向かって歩き出していた。


 思いっきり声を出した事で、河合真幸(かわい/まさき)が今まで抱えていた不安や悩などが少しだけ解消されていたのだ。

 胸の奥がすっきりした感じはするのだが、露出度高めな白石美蘭(しらいし/みら)と一緒に歩いていると、やはり、街中を歩いていても視線を感じる。


「真幸もこっちの道なの?」

「そうだけど。もしかして、美蘭も?」

「そうなんだよね。意外と近くだったり? だったらさ、同じ道なら私の家に寄って行く? まあ、私の家にはそんなに大したものはないんだけどさ」

「でも、大丈夫? 明日も学校だけど」

「大丈夫よ。真幸さえよければだけどね。どうする? うちに来る?」

「じゃあ……分かった。寄って行くよ」

「決まりね!」


 二人で道を歩いていると、その途中にスーパーがある。

 夜七時頃になると、お店の明かりも強くなっていて、その光に導かれるように二人の視線はスーパーへと向かっていたのだ。


「そう言えば、真幸って夕食とかどうするの? 決めてる感じ?」

「ハッキリとは決めてないけどさ。家にあるモノでも食べようと思ってだけど。美蘭の家に立ち寄るなら、スーパーで買って行こうかな」

「じゃ、そういうことで」


 二人はスーパーへ立ち寄って行く事にしたのである。




 入店時から美蘭が買い物かごを持ってくれて、スーパー特有なBGMを耳にしながら、真幸は彼女の隣を歩く。


「何がいい? 色々な総菜があるけど」

「それとかいいんじゃない?」


 半額シールが張られ始めた総菜コーナーに、彼女といる真幸はとある商品を指さす。


「ポテトサラダのやつ?」

「そう、それ」

「あとは唐揚げも買う?」


 美蘭は、ポテトサラダ近くに置かれてあった別商品も手にしていた。


「その方がいいね」

「それと、他には何がいいと思う?」

「そうだな……おにぎりとか?」


 総菜コーナーの近くに、スーパー限定価格に設定されたおにぎりコーナーがある。

 梅干し、おかか、ツナマヨ、鮭などがあり、閉店に近づいている時間帯な為か、半額シールが貼られていた。

 残り僅かで、少しでも入店時間が遅れていたら購入できなかったかもしれない。


「そうだな、俺は鮭派かな?」

「真幸は鮭派なんだね、私はツナマヨ派かな」

「意外と普通だね」

「他の人からも、そう言われるわ。ちなみに何個買って行く?」

「二個ずつとか?」

「んー、そうね。でも、余分に買って行った方がいいかも」

「なんで?」

「まあ、あの子も分もね」

「あの子の分?」

「いや、こっちの話よ」


 彼女は言葉を遮るように、特定のおにぎりを手にし、それを買い物かごに入れていた。


「あと、買うのは……」


 真幸が悩みながら、美羅と店内を移動していると、近くの曲がり角からひょっこりと姿を現す子がいた。


 真幸の視点からでも、ポニーテイルの髪型で何となく察しがついていたのだ。


「え、お兄ちゃん? なんでこんなところにいるの?」

「ちょっと用事があってな。それより、咲夜こそなんでここに?」


 真幸の目の前に現れたのは、やはりかといった感じに実妹の河合咲夜だった。

 妹は現在、中学二年生で真幸が通っている高校からは少し離れた中学に通っているのだ。


「私ね、今日の夕食の材料を集めてたところだよ。だって、今日は私の番でしょ。夕食作りの。というか、お兄ちゃんの隣にいる人は?」

「今日から付き合う事になった人で」

「え⁉ そうなの? 全然、彼女が出来そうな感じもなかったお兄ちゃんが? うそー、というか、お兄ちゃんって、そういう趣味があるんだね」


 妹は驚きの顔を見せる。

 それからジト目で、真幸の事を見つめていたのだ。


 多分、美蘭の制服の着こなし方が露出度高めだった為、妹からそういった視線を向けられたのだろう。


 真幸が気まずそうにしていると――


「すいません、咲夜さん。こういうのはどうですかね?」


 妹の咲夜の近くからもう一人の姿が見えた。


「え?」


 真幸は突然の事態に驚いていた。


「あ、紹介するね、この子はね。私と同じ中学校に通ってる一つ下の学年の子で、白石文香ちゃんっていうの」


 咲夜は、小柄でツーサイドアップのヘアスタイルの女の子についても淡々と説明してくれていた。

 ――が、真幸も、その子についてどこかで見覚えがあったのだ。


「あれ? どこかで」


 真幸は言葉を漏らす。

 思い出せそうで思い出せない状況に困惑しつつあった。


「はッ、あ、あの時はありがとうございましたッ」


 その子が頭を下げる。


 彼女の仕草や表情を見て、何となく薄っすらとだが思い出せる。

 今から一年ほど前、真幸が地元の公園で怪我をしていたところを助けた子だったと、脳裏に蘇ってきたからだ。


「偶然だね」

「はい」


 真幸の問いかけに、再び文香の方も恥じらいを持って頭を下げる。


「え! 美蘭お姉さんもなんでここに?」


 その子の姉というのが真幸の隣に佇んでいる美蘭だったらしい。


「なんか、意外な縁だね。ここにいる四人が何かしらの繋がりがあったなんてね」


 咲夜は、はにかんだ笑みを見せていた。


「何かの縁みたいですし、今日は今いる四人で夕食を食べませんか?」


 咲夜が提案し、それを承諾するように、美蘭が親指を立ててOKサインを出していた。


 それから四人で共に行動し、スーパーで夕食の買い物を続ける。


 店内を歩きながら話し合った結果、四人でカレーを作る事になり、今度は野菜コーナーへと向かって歩き出す事になったのだ。


 今日の夕食は少し騒がしくなりそうで、真幸は心の中で少し嬉しさを感じていた。


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