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小田急の夏。

作者: 荻野雅嗣

テニス部の練習が終わり、急いで家路に着く。

あたりはすっかり夕焼けに染まり、夜の帳が下りる。

イヤホンから、絢香の「おかえり」が流れてくる。

私のお気に入りの一曲だ。

「お母さん、ただいま。」

「夕飯の準備できてるわよ。カバンを置いて手を洗ったら降りていらっしゃい。千香の大好物、用意してるわよ。」

手を洗い食卓に着く。


部活動もいいけど、来年受験なんだから勉強のほうも頑張らないと。

志望校今から勉強しておかないと難しいんでしょ?

確か橋本高校だったっけ?

そう、今から気合い入れとかないと。

今日は、鉄火丼とせん切りキャベツ、わらじカツ、それにアジフライ、油揚げと小松菜の味噌汁だ。

ボリューム満点!!

中濃ソースをかけていただきます。


「今日、香織と喧嘩しちゃった。」


「あらっ、香織ちゃんいい子なのに。保育園の時からの友達でしょ。何かあったの?」


「香織のボーイフレンドのことで色々あって。お母さんには関係ないことだから。ご飯終わったら、先にお風呂入るね。」


「お父さん、今日も帰りが遅くなるんだって。」


「そういえばお父さん、コロナの時はヘッドセットをつけてリモートワークしてたよね?

あれって、会社の打ち合わせかな?」


「そうみたいね。」


「それに、お母さんの勤めているスーパーも大変だったんでしょう?」

「そうね。ソーシャルディスタンスとか3密を避けるとか色々細かいルールがあって、大変だった。

コロナが5類に引き下げられて、多少はマシになってきてるけど。」


「今度の日曜日、女子テニス部が県大会に出ることになって。

お母さん、応援に来てくれるよね?」


「私は仕事で無理だけど、美咲だったらいけるんじゃない?後でLINEすれば?」


「わかった。食べ終わったから先にお風呂入っちゃうからね。


ごちそうさま。


あと、2週間もすれば夏休みだ。

部活動の練習と山梨での強化合宿で全て終わりそう。

最近、家族旅行に出かけることもめっきり少なくなったな。

昔は富士急ハイランドとか河口湖周辺でオートキャンプをしたり熱海温泉にもよく言ってたんだけどな。

そういえば、小学校低学年の頃、相模原にあるおばあちゃんの家の畑でピーマンとかナス、トマトをよく収穫してたな。

あと確か小玉スイカも作ってた。

いとことよく種の飛ばしあいをよくして遊んでたな。

ある時、アオダイショウが出てみんなで大騒ぎ。

おじいちゃんがむんずと手で蛇をつかんで遠くに放り投げた。

あれには少し驚いたな。

ばあちゃんちで食べたピーマンと茄子の焼き浸し、あれは美味しかった。

おじいちゃんから聞いた話だけど、ひぃおじいちゃんは秦野で葉タバコの栽培してたみたい。

そして那須塩原出身のひぃおばあちゃんと結婚して、おばあちゃんが生まれた。

戦時中はここ海老名の周辺も危なくて、日光にある親戚の家に身を寄せていた。


終戦後、東京の武蔵小金井に一家で引っ越してきてお母さんが生まれた頃は鎌倉のほうに住んでたみたい。

そして、甲府出身の父さんと縁があって結婚。

そして小田急沿線の海老名で私が生まれた。

こうやって、脈々と生命って受け継がれていくんだな。

改めて私がいるのって、奇跡に近いんだな。


そういうことを思いながら湯船につかる。

身体を洗い、洗髪をして脱衣所に出る。

服を着てドライヤーで髪の毛を乾かす。

香奈に「千香の髪の毛ってほんとにツヤがあって綺麗だよね。うらやましい限りだよ。」

と褒められた。

ヘッドスパとかヘアケアの類は一切していない。

天然モノだ。

いつも行っている美容室の店員さんにも「コシのあるきれいな黒髪ですね。下手にいじらないほうがいいですよ。」と褒められたことがある。


これからも黒髪ガードで行こう。




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― 新着の感想 ―
[一言] 小田急沿線ではないのですが、私鉄沿線に住んでいたので、何だかとても懐かしい香りがする作品でした。 主人公の家族の話とか、友人の話とか、何気ない日常風景にほっとさせられます。 シンプルなタイト…
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