その後
その後、人さらいたちが逃げた先に追っていくと、扉のあるところで数人の男が床に転がっていた。男たちもつかまっていた人たちもとりあえず国に対処を任せるとして、この大人数をどう運ぶかという問題に行き当たるが問題はなかった。
「………私たちが使っていた客室でいい?」
ミーシャの質問に軽く頷くと、杖で魔法陣を床に描き始める。
「これは?あぁ、簡単に説明してくれ」
さっきと同じようになってはたまらんと念押しをするとすねたように
「………むぅ。まぁいいや。簡単な話、部屋に同じものが書いてある。そこに転移できる。終わり」
やればできるじゃないか、という目線をしつつ、王子は完成した魔法陣に締め上げた罪人たちを放り込んでいく。と同時に
「歩ける人はこの魔法陣にお願いします」
と、さらわれた人たちを人あたりのいい笑顔で誘導していく勇者と僧侶。魔法使いは特になんにもしなかったので、レオナンドは少し文句でも言いたかったようだが戦果は挙げていることを分かっているからか視線だけにとどめたようだった。
全員を送り、勇者たちも入ると、確かに王城の一室だった。
「いつの間にこんなものをこしらえてたんだ。まぁ、勝手にうちの城に転移先を作っていたことには少し言いたいことはあるが…」
床には豪華な王室にはそぐわないような魔法陣が床に絨毯にびっしりと書き込まれており、線の部分がほのかに光っている。こんなものがあれば気づかれそうなものだが、発動しないと光らないらしい。
被害者と加害者が部屋から出ていき、勇者たちのみが部屋に残る。ふと時計を見ると城を出てからは3時間経っていた。勇者たちが出ていったのがばれてからは2時間である。
と同時に部屋の扉も開く。
「無事で何よりだが、勝手な行動は慎んでくれると助かるな」
この国の王の側近がそこにはいた。真面目そうな眼鏡をかけた青年とその男によく似た白髪の男。顔には皺も多くみられるが背筋が伸びていて、そうは見えないが今年で70を超えている宰相である。
「すみません。ベイン宰相」
「君たちが謝る必要はあまりないが、せめて何か一言でも伝えてくれ。仮にも今日は君たちを送り出すパレードもある」
少し勇者は言いたいことがありそうだったが自分が少し悪いことをしたという自覚もあるのかあまり強くは出ないようだ。
「とにかく時間もない。準備の方を急いでくれ」
話はそれだけだと言わんばかりに二人は部屋を出ていく。
「お城の人ってなんであんなに偉そうなの?言いたくないけど息子さん?の方が僕の方をにらむように見てきたんだけど」
「まぁ、そういうな。国には国のやり方がある。それに今回の情報もあの宰相が用意したものだ。さっきのも形式的なものに過ぎん」
「それが組織というものですからね。私も教会の時は……となんでもありません」
不満たらたらな勇者ではあったが、パレードの準備をするということといつまでも自分の部屋にいるのが嫌になったのであろうミーシャに押され、ひとまずは解散となった。