襲来
「た、大変だー」
最前線の本部が倒壊したのだ。それはそれは大変なこと極まりない。しかし、そのように駆け込んできた男が告げたのはまた違う危機であった。
「聖女様の結界が消えて、それをチャンスとみた魔族が襲ってきやがった」
聖女が倒れたことによって、結界が消えたらしい。一難去ってまた一難とはこのことである。
「それで規模と侵攻の具合は?」
「魔族との境界線上に作られた壁によってこちらが優位に進めていますが、敵の指揮官が四天王のババベルのため、いつこじ開けられてもおかしくない状況です」
「暴れん坊のババベルか。こんなところで待機していたとは意外というべきか、案の定というべきかというところだな」
ババベル。一番魔族の中でも有名な人物といえる。彼は、その二つ名の通り闘争を好み、彼の通った場所は例外なく破壊されつくす。
この本部は確かに戦いの最前線ではあるが、聖女の守りが堅いためにこちらからもあちらからも攻めることが出来ないという意味で戦闘が起きないのである。
だから、この場にババベルがいるのが少し珍しく思えた。どちらにせよ、対処しないといけないことに変わりはない。とにかく急いで壁のところに向かう。
壁に辿り着きそうといったところで、激しい音と共に壁にある門が壊された。
壊れた門は荒れた魔族たちの土地を映しており、その地面には魔獣や魔物も多く存在している。
「ふぃー、苦労させやがって。そちらさんの聖女さんも流石の俺様の攻撃には耐えきれなかったようだなぁ。フィラリアの話でも今日あたりが良いみたいなこと言ってはいたが、俺の力さえあれば、こんなもんよ」
胸を大きく張り歩いてくる猿のような姿をした人物がババベルである。その太い腕や胸に対して、あまり足は太くない。また威圧的な顔に巨大な牙が上からも下から生やしているせいで余計に恐ろしく見える。
「避難状況は?」
「非戦闘民は既に避難区域まで下がっています」
その他の状況を聞いたレオナンドは聞いていたよりも状況が悪化していると感じている。
「まずいな。どっかのタイミングで切り開く手段を探さないと崩壊するぞ。ひとまずババベルは俺たちが対応するにしてもだ…」
何となく連れてきてしまった聖女を見ながら、ため息をつく。こうしている間にも門の場所から魔物が次々と入り込んできている。
「こいつが倒れてなければな…。仕方ない。気は進まないが、アイリス、やってくれ」
レオナンドの思考をくみ取ったアイリスの強大な回復魔法が行使される。




