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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第四章 聖女機関と聖女
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脱出

 異形が完全に沈黙したのを確認して、右の道を進んだ彼らは一息ついていた。


 そんなタイミングでけたたましい音が辺りに鳴り響く。よく避難の警報などによく使われるサイレン。


「なに?」


「あーしの勘では悪い予感がしますねぇ」


「奇遇だね。僕も嫌な予感しかしないよ」


 数秒鳴り響いた後に一瞬の沈黙。誤作動も期待できないほどの一瞬の静寂の後、


「この施設は爆発します。この施設は爆発します。既定の手段で脱出をしてください。残り2分で爆発します」


「僕ら、既定の手順なんて知らないよ?どうしようか…」


「まぁ、あーしが何とかしましょう。ただ、上手く脱出出来た後のことは頼みます。あーし多分、ぶっ倒れるんで」


 そう言って、彼女は今までに見たことがないくらい真剣な顔になる。


 やがて、作り出されたのは、自分たちを覆い囲うように作り出された結界である。


「あーしたちの結界は全く強度は高くないので動かないでくださいね」


 彼女が言うには転移用の結界を作っていたらしい。それもさっき見つけた子供たちなどを囲う結界とも連携させているとのこと。そのためにこの場所の結界のリソースは削ったと。


 この間に機関の人間が来ようものならば、結界は壊され、立て直す時間もなく、みんなまとめて地下でお陀仏。そんな結末を迎えてもおかしくはないが、幸いなことにその場面は訪れなかった。


「左の道には勇者たちのお仲間の方々がいたと思うのですが、そちらは大丈夫なのでしょうか?」


 ロイが思い出したかのようにレオナンドたちの行方を心配する。


「まぁ、大丈夫だと思うよ」


「ミーシャンもいるもんね。あんな魔法使えるんだもん。そりゃあ大丈夫だろうねぇ」


 随分とミーシャのことを買っているらしい聖女の顔は、その口調とは裏腹に額には汗が滲んでおり、本当に苦しそうであった。


「そんじゃ、いまから私の部屋まで転移するんで後はよろしくです」


 一瞬の浮遊感。それを感じたときには既に転移は完了していた。勇者も含め、そこには十数人が部屋に転移してきている。見ると、レオナンドたちもそこにはいた。


 同時に誰かが崩れ落ちる音も聞こえる。宣言していた通りに聖女がつんのめりに倒れた音だ。レオナンドが説明をするように求めてきているのも分かっていたが、まずはこの地下で起きる爆発から脱出しなければならない、と少し真面目に勇者が伝えると、レオナンドもすぐに対応する。


「よし、じゃあアイリスは下に行って、本部の連中の避難を促してくれ。俺たちは彼女たちを連れていく」


 顔色こそよくなってはいるが、相変わらず呆けた表情の囚われていた人達を運び出す。


 とはいえ、勇者にもレオナンドにもそんなことは出来ないので、大人しくミーシャを頼る。


「………しょうがない。手荒にはなるけど、どうにかする」


 ミーシャの転移魔法は基本的には陣から陣への転移となるため、事前の準備が必要になる。そのため、今回ちょうどいい転移先を持ち得ていない。


 そこでミーシャが取った手段は確かに乱暴なものであった。


「………上だけ注意してね」


 その言葉が合図のつもりだったのだろうか。天井が爆発する。爆発というよりかは下からの押しあげによって天井に穴が開いたというのが正しいだろうが、その破壊音と天井のがれきを見るのであれば、爆発といって差し支えないだろう。


「おいおい、先に言え」


 降り注ぐ瓦礫をその場にいる全員で回避する。押しあげたことで崩れ落ちるだけでなく、他の場所に飛び散ってくれたのも幸いし、ケガ一つせず済んだ。


「………あとはこれに乗って」


 魔法の絨毯である。以前もお世話になったその絨毯はやや大きくなり、数が増えたようだ。ちゃんと詰めれば、全員何とか入るだろう。


 急いで動かない彼女らを絨毯の上に運び入れる。


 一番スペースを取っていたのは眠っている聖女であったが今回の立役者であるため、多めに見るとしても、結構ギリギリ全員乗れた感じである。


 直後、地面の下から鈍い音がしたと思うと、建物自体も嫌な音がし始める。目に見えるほどの建物のヒビは大きくなっていき、傾き、崩れ始める。


「間一髪だね。後は他の人たちが巻き込まれていなければいいけど」


「まぁ、大丈夫だろう。一応最前線の拠点だ。腕の立つものも多いはずだ」


 そうして、降り立ったミクスの地だが聖女機関の騒動だけで終わることもなかった。

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