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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第四章 聖女機関と聖女
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聖女機関  右の道 後編

 三体の特徴を併せ持つだけでなく、その力、速さまでもが今までの数段上。二体の状態でもあそこまで吹き飛ばされたのだ。三体分となれば、どれほどの威力をもたらすのだろうか。


 勇者が立ち上がるのを待つように、じっとこちらを見ている異形。そしてその反対に立っていたのはロイである。要は死角。そして、ロイもそれを理解しており、隙を窺っていた。勇者もその意図を汲み取り異形へと距離を詰める。そのタイミングでロイもまた距離を詰める。


 勇者の攻撃はあっさりと異形の爪に阻まれる。そして、本命の一撃。ロイの後ろからの攻撃はというと、千切ったはずの尻尾によって、受け止められた。あの目だ。腕やら足に生えたあの目がロイの方を見つめていた。おおよそ半分ほどの目がロイに注がれている。


 気づいていないわけでも予想が立てられないわけでもなかった。ただ、その可能性に賭けただけ。とはいえ、視界は広い。動きも力も強者そのもの。となれば、確かめないよりはマシであろう。


「しっかし、どうしようかな」


 異形の攻撃の中で致死性のあるものだけを回避することで命に関わる傷こそしていないが、切り傷の数は優に十数か所は超え、赤い線がいくつも体に刻まれていた。


 たまに攻撃が通るが、こちらのは皮膚皮に傷を付けるのが精一杯である。


「あーしに考えがあるんで協力してもらっても?」


「ん、了解」


 そんな中、聖女には考えがあるという。結界を異形の攻撃に合わせて張ることで勇者のカバーをしてきたわけだが、そのカバーを止めてその考えを実行に移すことにしたわけで


「っと、危なーい」


 見るからに傷の量も増えた。そしてその深さも。


 実のところ、勇者の一番の特徴はその成長速度にある。この戦いでも彼は成長を続けている。だから、傷の量は確かに増えたが、聖女の援護が無くなって熾烈化した異形の攻撃のを考えるのであれば、その数、深さは大したことないといえよう。


「よっ、と」


 そんな掛け声を発しながら、思い切り異形の爪を巻き込むようにして、床に叩きつける。威力重視で必ず当たる攻撃となった一撃は床を粉砕し、一つのクレータ―を作成した。


 その穴を囲うように対峙した異形と勇者は数秒のあいだ、動くことをしなかった。異形が動かなかった理由は融合により知恵を中途半端に身に付けたことによる慎重さによるもの。勇者はその異形の感情に気づき、時間が稼げるならと動かなかった。


 そして、聖女の策は成功に終わる。


 まるで押し出されるようにして、異形はクレーターの中へと突き落とされる。


「ふひー、何とかなったですね」


 聖女の結界は目視することが出来ない。無色透明無味無臭。味は関係なくとも、彼女はそれだけの結界を作ることが出来る。その結界を異形を囲むように、クレーターを囲むように、設置を試みていたのであった。


 それから、結界で背中を押してあげる。


 それだけで異形はクレーターの中に落とされ、さらには結界で身動きも取ることが出来ない。簡易的なものであれば、いつでも用意できるがあの速さに攻撃力であれば、異形の突破できない硬さにするのは、時間がかかった。だから、勇者にお願いをしたのだ。


 後は結界を狭めていくだけの簡単なお仕事。異形も結界を破壊しようと攻撃を重ね、突破を試みるが、傷一つ付くことはない。


 徐々に身動きが取れなくなっていき、圧殺されていく姿はとても直視するには重たい光景ではあったが、聖女と勇者は目を離すことなく、最期を見届けた。それがどんな思いからなのかは当人たちしか知らない。

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